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2025.8.28
現地レポート!10月7日オープン『チームラボ バイオヴォルテックス 京都』をひと足早く体験
2025年10月7日(火)、チームラボの新たな常設ミュージアム『チームラボ バイオヴォルテックス 京都』がオープンします。
目次
チームラボ《Massless Amorphous Sculpture》
延べ面積は約10,000平方メートル。東京・豊洲や麻布台のミュージアムを上回る国内最大の規模で、チームラボの世界に没入できます。
チームラボ《呼応するランプの森:One Stroke - Fire》
正式なオープンに先駆け、8月5日(火)、メディア向けにミュージアム内部の一部が公開されました。日本未発表の作品をはじめ、ひと足早く体験してきたので、実際に触れて肌で感じたことを写真とともにお伝えしていきます。
「環境現象」を体験する《Massless Amorphous Sculpture》と《Morphing Continuum》
チームラボ《Massless Amorphous Sculpture》
はじめに注目したいのが、日本未発表作品のひとつ《Massless Amorphous Sculpture》です。直訳すると、「質量がなく明確な形も持たない彫刻」と言えるでしょうか。
作品空間には大量の石鹸の泡が雲海のように満ち、泡の海から彫刻が生まれ、中空を漂います。空間を自在に移動する彫刻は、そこにいる人間にお構いなく動き、人を包んで泡まみれにすることも。(レインコートを借りて良かったです)
チームラボ《Massless Amorphous Sculpture》
ぶつかっても痛くないですし、害は無いと思います。石鹸のぬるっとした感触を手に馴染ませながら、彫刻が「人間を避けることなく自分の道を進む」ことに感じ入っておりました。
チームラボ《Massless Amorphous Sculpture》
そこにあったのは、人間にとっては未知の環境で、作品がのびのびと生きている…という逆転の関係。普段、私たちは人間が人間向けに作ってきた社会で生きていますが、本作は「人間のルールが通用しない、別の生命体が主導する世界」の体験そのものです。
《Morphing Continuum》でも同じことを感じました。本作は、無数の銀色の球体が浮遊し、まとまって彫刻を作ったり、バラバラになったりする作品。見えない力に導かれるかのように、個別の球体が集まって形を形成します。
本作の面白いところは、彫刻になるのを邪魔しようとしてもできないこと。人が球を蹴散らしたり、球が集まっている場所に身体を入れたりしても、空間の秩序にしたがう球体はお構いなく動き続け、彫刻を形成します。
ここでも「人間のルールが通用しない、別の生命体が作った世界」を感じました。「空間の意思」すら感じます。現代の日常生活や通常のアート鑑賞では体験できない、価値観の転換がありました。
チームラボの世界に没入する《呼応するランプの森》
チームラボ《呼応するランプの森:One Stroke - Fire》
フォトジェニックさもあって人気の《呼応するランプの森》も、京都に登場。吊り下げられた無数のランプは人が近づくと光り、それに近いランプも光って…と、光の一筆書きが生まれる作品です。
チームラボ《呼応するランプの森:One Stroke - Fire》
無限に続くかのような光の世界が表現するのは、「連続性」という美しさ。普段、私たちがモノを認識するときは、モノを世界から切り離し、それを単体として見つめます。アート鑑賞においては、「視点をある位置に固定した図」を絵画として、世界とも自分とも切り離して鑑賞している、と言えるでしょうか。
チームラボ《呼応するランプの森:One Stroke - Fire》
他方、チームラボが興味を向けるのは、「連続したまま美しさを味わう」こと。《呼応するランプの森》などの作品と鑑賞者の間には区切りがなく、どちらの世界もつながっています。鑑賞者は自由に動き回れるので、視点も固定されません。
チームラボ《呼応するランプの森:One Stroke - Fire》
わざわざ切り離さずとも、連続している状態のときから世界は美しい…と、作品を通じて問いかけているようです。
世界の見方が変わる《鳥道》《The Eternal Universe of Words》
数十万匹の鳥が群れを成して飛ぶ様子を作品化した《鳥道》、空間に書が描かれる《The Eternal Universe of Words》も公開されました。写真ではプロジェクションマッピングのように見えるかもしれませんが、それとは一線を画す作品です。
チームラボ《The Eternal Universe of Words》
「壁に映像を投影する」を超えて、「鳥や書が空間の前後にも飛び交う」という感覚でした。じっと座って鑑賞していたのですが、自分が回転したり浮かんだりしているような錯覚すら覚えます。私も鳥になって空を飛んだら、こんな風に景色が見えるのかも…? と感じる体験でした。
隣接するエリアでは、現段階では《Untitled》とされているお花の作品が公開されました。繰り返す生と死をテーマにした作品で、植物は芽を出して花を咲かせ、やがて倒れます。
一般的な3Dの手法で映像を作ると、鑑賞者と作品の間にレンズを挟み、境界を引いてしまうことになるそう。チームラボ独自の「超主観空間」というコンセプトのもと、ここでも連続性を保っています。襖絵など古典的な日本美術から影響を受けているとのこと。
人が触れると植物は輝き、散っていきます。人と自然の関係を想起させるインタラクティブな作品なので、自由に触れてみていただければと思います。
チームラボの新たな挑戦はどこへ向かうのか?
チームラボ《呼応するランプの森:One Stroke - Fire》
今回メディア向けに先行公開されたのは、以上の7作品。これだけでも1日かけてゆっくり体験したいくらいの充実っぷりでしたが、まだまだ全体の1割程度だそう。完成後にはどんな体験が待っているのでしょうか?
チームラボ《Massless Amorphous Sculpture》
以下は私の考えですが、これまでのチームラボには、フォトジェニックさやインスタ映えの観点で表面的に消費されている側面があると感じてきました。特に国内では、表現者・表現者集団として評価を築いていくのが難しいのではないかと。
『チームラボ バイオヴォルテックス 京都』は、そうした課題を打破するための挑戦でもあるように見えます。《Massless Amorphous Sculpture》や《Morphing Continuum》の体験中、すました顔で写真を撮ることは難しいと思いますので…。鑑賞者の美しい佇まいを演出する空間の提供ではなく、作品が主導する空間を突きつけ、日常の視点を揺さぶっているように感じました。
今回私が体験したのは、チームラボ バイオヴォルテックスのほんの一部。その挑戦的な試みはどのように発展していくのか? 10月7日のオープンが楽しみです。
ミュージアム情報
◆チームラボ バイオヴォルテックス 京都
開館日:2025年10月7日(火) - 常設
※休館日は公式サイトにてご確認ください。
開館時間
9:00 - 21:00 (最終入館は19:30)
※開館時間が変更になる場合あり。公式サイトにてご確認ください。
公式サイト:チームラボ バイオヴォルテックス 京都
※公式サイトにてチケット販売中
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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