STUDY
2022.9.28
【ゴッホと日本】天才画家が魅了されたジャポニスムって?
フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ、通称ゴッホは印象派を代表するオランダ人画家です。
率直な表現と大胆な色遣いで知られるゴッホは、実は日本ととてもゆかりの深い画家でした。
ジャポニスムの影響を受けたゴッホの作品, Public domain, via Wikimedia Commons
この記事では、天才画家ゴッホが魅了された「ジャポニスム(日本趣味)」について、ローマの大学院で美術史を専攻している筆者が解説していきます。
19世紀に流行したジャポニスムとは?
クロード・モネ『ラ・ジャポネーズ (La Japonaise)』, Public domain, via Wikimedia Commons
19世紀に開催された万国博覧会では、それまで西洋の画家たちが見たこともなかったような東アジアの芸術作品が展示されました。
なかでも目を芸術家たちの目を引いたのが、浮世絵などを中心とした日本美術でした。
ゴッホやクロード・モネなどの印象派の画家たちは、色彩感覚や水の表現など、力強い日本芸術を作品の中に取り入れ、このムーブメントはのちに「ジャポニスム」と名付けられました。
ジャポニスムは、作品に日本風のタッチ(色合いや描写など)を取り入れるだけでなく、日本の芸術作品そのものを作中に描くまでに発展します。
ゴッホとジャポニスムの関係は?
ゴッホ『花魁(溪斎英泉による)』, Public domain, via Wikimedia Commons
ゴッホは特にジャポニスムの影響を強く受けた芸術家の1人です。
いくつかの作品の中で浮世絵を模倣したり、背景全体に浮世絵を配置した肖像画なども残したりしています。
浮世絵の特徴として、当時の西洋画家に注目されたのは、はっきりと描かれた輪郭線と、立体感のない直接的な構図でした。
西洋絵画ではルネッサンス以降、輪郭線を明確に描くことはせず見る人が写実性を感じられるようなニュアンスを大切にしたタッチが主流であり、立体感を追求し奥行きがあるように見せる絵画技法が重要視されていました。
これらを無視した浮世絵のパワフルな直接的な表現が、ゴッホの目には新鮮にうつったのかもしれません。
ゴッホが影響を受けた作品例3つ
渓斎英泉『雲龍打掛の花魁』を掲載した「パリ・イリュストレ」誌1886年5月号, Public domain, via Wikimedia Commons
ゴッホが強く影響を受けた作品の1つに、歌川広重の『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』が挙げられます。
西洋では水を平面画において実線として表現する伝統はなく、広重が実線で雨を作中に描き足している点に西洋の画家たちは驚いたと言われます。
ゴッホは、この作品を自分の手で模写するほど気に入り、その他にも広重の作品をいくつか模写していました。
参考:歌川広重『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』, Public domain, via Wikimedia Commons
参考:ゴッホによる歌川広重の『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』の模写(『ジャポネズリー:雨の橋』), Public domain, via Wikimedia Commons
『ジャポネズリー:梅の開花』という作品も、ゴッホが1887年に広重の作品を真似して描いたものです。
ゴッホ『ジャポネズリー:梅の開花』, Public domain, via Wikimedia Commons
同じ年に作成した『タンギー爺さん』では、肖像の背景すべてが日本の浮世絵となっています。
参考:ゴッホ『タンギー爺さん』, Public domain, via Wikimedia Commons)
この作品は、ジャポニスムを象徴する作品の1つとしてしばしば例に挙げられるものでもあります。
まとめ
私たちが見慣れた浮世絵がゴッホの作品の背景に描かれているのは、なんとも不思議な光景ですね。
ゴッホ以外にも、クロード・モネやドガなど、19世紀の西洋画家の中には浮世絵の構図や色遣いに影響を受けた人がたくさん存在します。
19世紀の印象派の作品を鑑賞する際には、そんなジャポニスムの背景に思いを馳せるのも楽しいかもしれません。
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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