STUDY
2022.12.8
一度は行きたい!『ローマの休日』のロケ地「トレビの泉」の歴史と美術
不朽の名作『ローマの休日』では、宮殿を抜け出してアン王女が新聞記者のジョーと一緒にローマの街を散策する中で「トレビの泉」が登場します。
Orlando Paride, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
外の世界をあまり知らないアン王女は、トレビの泉の前にしばらく佇んで巨大な芸術作品に見惚れています。
この記事ではローマの大学院で美術史を専攻している筆者が、トレビの泉の歴史と美術について解説します!
『ローマの休日』にも登場!「トレビの泉」
Sakena from Copenhagen, Denmark, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
トレビの泉は、数えきれないほどの観光スポットのあるローマの中でも特に人気の高い場所で、昼夜を問わずたくさんの観光客が集まっています。
トレビの泉にはコインを投げ入れると願いが叶うという伝説がありますが、コインは投げる枚数によって叶う願いの種類が異なるので注意が必要です。
1枚投げるとまたローマに帰ってくることができ、2枚投げると大切な人とずっと一緒にいることができ、3枚投げると「縁切り」ができると言われています。
「トレビの泉」の歴史:噴水とローマの密接な関係
Alessio Nastro Siniscalchi, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons
「トレビ」の語源は定かではありませんが、トリーヴィオ(Trivio=三叉の道)ではないかと一般的には言われています。
古代ローマ帝国では都市での生活を豊かにするためのインフラが発達しており、中でも用水路の整備は重要な事業の1つでした。
その後異民族の侵入や首都の移転などをきっかけに、中世を通してローマは徐々に古代の高水準インフラを失っていきます。
中世末期から「永遠の都ローマ」の姿を取り戻すべく、実質的に都市の統治権を持っていた教皇が様々な都市開発を行い、トレビの泉建設もそのうちの1つでした。
教皇クレメンス12世は18世紀にローマの建築家ニコラ・サルヴィに建築を依頼し、現在の形のような人口の「泉」が完成しました。
ローマにとって飲用水を潤沢に確保していることは整備されたインフラの象徴でもあり、都市の権威を取り戻すための重要な意味を持っていました。
建設当時にはここに流れる水は飲むことのできる水で、遠くの街からやってきた巡礼者などがトレビの泉でのどの渇きをいやしたと言われます(現在は警察の管理により泉に過剰に近づくことは禁止されています)。
一説によると、「ローマのトレビの泉で水を飲むと願いが叶う」という言い伝えが、いつの間にか現在のようなコインを投げる瞬間にすり替わってしまったのではないかとも言われます。
「トレビの泉」の美術:神話とベルニーニ
© Vyacheslav Argenberg / http://www.vascoplanet.com/, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
「トレビの泉」の彫刻作品は、神話がモチーフとなっています。
中央に最も大きく配置されているのは、海の神ネプチューン(ポセイドン)です。
ネプチューンは海の神であるため「水」との親和性が高く、ヨーロッパの噴水に非常によく用いられるモチーフです。
ネプチューンの左には豊穣の女神ケレス(デメーテル)、右には健康の神サルース(ヒュギエイア)が配置されています。
「水」「豊穣」「健康」という3つの要素の神を大きく設置していることからも、トレビの泉が水道事業の一部として重要性を持っていたことがわかりますね。
実はトレビの泉は、ローマを代表する巨匠・彫刻家ベルニーニの設計の影響を多大に受けています。
1629年に親交の深かったウルバヌス8世がベルニーニにトレビの泉の再建を依頼していましたが、教皇が亡くなったことによりこのプロジェクトは実行されずに終わりました。
トレビの泉が一体になっているポーリ宮殿の最上部には、教皇の紋章である「2つの鍵」が置かれています。
都市ローマにとって、長らく教皇は単なる宗教的指導者であるだけなく、政治的な権限を兼ね備えた「統治者」でもありました。
トレビの泉は、教皇がローマの都市開発として手掛けたたくさんの例の1つなのです。
まとめ
『ローマの休日』では、アン王女がトレビの泉の前でその荘厳な姿に感激する様子が描かれています。
実際、高く入り組んだ建物が並ぶエリアの真ん中にあるトレビの泉は、たどり着いた瞬間思わず息をのむほど存在感のあるスポットです。
政治的にも美術的にも密接に関連しているトレビの泉は、複雑なローマの政治的・美術的な歴史を知るのに最適な作品かもしれません。
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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