STUDY
2021.9.13
キリスト教美術の基本主題「聖母子像」を一層楽しむための注目ポイントとは?
西洋美術を鑑賞する際に、避けては通れないのがキリスト教に関する主題です。
特に、イエス・キリストを腕に抱く聖母マリアを描いた「聖母子像」は、長いキリスト教の歴史の中でも最も多く描かれた主題のうちのひとつでもあります。そんな聖母子像を美術館やヨーロッパの教会で見つけても、なにがどう特別なのか、どのような点に注意して見たらいいのかわからないという方も多いと思います。
そういった方に向けて、芸術主題としての「聖母子像」を鑑賞する際に、おさえておきたい3つのポイントを紹介します。
聖母子像とは?
Raphael, Public domain, via Wikimedia Commons
聖母子像とは一般的に、聖母マリアが子ども(幼児)のイエスを抱っこしている構図を指します。大きく分けると、聖母マリアが立った状態でイエスを抱っこしているものと、聖母マリアが椅子に座った状態で、イエスを膝にのせて抱きかかえているものに分けることができます。いずれの場合も、イエスは幼児の姿で描かれることがほとんどです。
成長した33歳のイエスが磔刑を受け、息を引き取ったイエスの身体を抱き悲しみに暮れる聖母マリアを取り扱った題材もありますが、これは一般的に「ピエタ」という別の芸術主題として扱われます。
聖母子像で見る「小さな大人」
I, Sailko, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
聖母子像鑑賞でまず注目すべきポイントは、イエスの顔です。顔と言っても、表情を見るというよりは、聖母子像におけるイエスの顔を見ることで、時代ごとの「幼児(子ども)の概念」の違いを見ることができます。
ルネッサンス以前の聖母子像では、子どもは大人の顔をしたまま身体だけ小さく描かれることが多く、そのアンバランスさによって不気味な印象を受ける人もいるかもしれません。
中世ヨーロッパでは、「子ども」と「大人」を区別して考える習慣がなかったためか、絵画の中でも子どもが「小さな大人」として描かれていたことに由来します。
ルネッサンス以降の聖母子像
Raphael, Public domain, via Wikimedia Commons
一方、15世紀のイタリアで興った古典復興、ルネッサンス期には、人間味あふれるかわいらしい表情のイエスを描いた聖母子像が多く生まれます。ルネッサンスを代表する芸術家であるレオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロも聖母子を主題にした作品を多く残していますが、いずれもイエスは愛らしい幼児の姿で描かれています。
このように、「聖母子」という1つの主題の中で、その時代の「子ども」の認識の変換を見ることができます。美術館で聖母子像を見つけたときは、イエスの顔に注目してみてくださいね!
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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