STUDY
2022.6.8
【ローマ】無料で見られるカラヴァッジョ3選!場所と作品を解説
カラヴァッジョは、イタリアを代表する芸術家であり、ローマでもたくさんの重要な作品を残しました。
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ『聖マタイの召命』 , Public domain, via Wikimedia Commons
「カラヴァッジョ作品を見たいけど、いろんな美術館に足を運ぶのはお金がかかって大変…」という人もいるのではないでしょうか。
実は、カラヴァッジョの作品はローマ市内の無料開放されている教会でも見ることができるのです。
この記事では、ローマの大学院で美術史を勉強している筆者が、カラヴァッジョ作品を無料で見られる場所を3つ紹介します。
サンタ・マリア・デル・ポポロ聖堂
Annibale Carracci and Caravaggio, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
サンタ・マリア・デル・ポポロ(Santa Maria del Popolo)は、ポポロ広場にある歴史ある教会です。
この教会内の通称「カラヴァッジョの礼拝堂」と呼ばれる場所に、カラヴァッジョが1602年頃に手掛けた作品が今も残されています。
礼拝堂の正式な名前は「チェラージ礼拝堂」で、3枚の祭壇画のうち左右の2枚がカラヴァッジョの作品です。
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ『聖パウロの改宗』, Public domain, via Wikimedia Commons
向かって右の作品は、『聖パウロの改宗』で、異教徒としてキリスト教徒を弾圧していたパウロが天からのイエスの声を聞き回心するシーンが描かれています。
当時、主題の主人公であるはずの聖パウロを作品の下部に配置し、馬の後姿を大きく描く構図は画期的でした。
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ『聖ペトロの磔刑』, Public domain, via Wikimedia Commons
向かって左は『聖ペトロの磔刑』で、師イエスと同じ死に方はできないという謙虚さから、逆さ磔刑を所望したペトロの姿を描いています。
この作品でも、十字架を担ぎ上げようとしている男性は、お尻と汚れた足を観覧者の方に向けています。
キリスト教会の伝統では、祭壇などに飾る作品に身体の汚れた部分を描くことは稀でした。
カラヴァッジョの写実的な表現への挑戦心」を感じることのできる作品です。
サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会
I, Sailko, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
サン・ルイージ・デイ・フランチェージ教会内のコンタレッリ礼拝堂には、3つの重要なカラヴァッジョの作品があります。
左から、『聖マタイの召命』『聖マタイと天使』『聖マタイの殉教』です。
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ『聖マタイの召命』 , Public domain, via Wikimedia Commons
『聖マタイの召命』は、イエスが聖マタイを使徒に加えるために税収所に足を運び、マタイを指さして声をかけます。
この作品には「聖マタイはどの人物か?」という議論があり、ヨーロッパの美術史家の中でも意見が分かれています。
イエスを見て指を指している左から二番目の人物は「自分を指している」のか「隣で顔を伏せている少年を指しているのか」、結論はまだ出ていません。
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ『聖マタイと天使』, Public domain, via Wikimedia Commons
真ん中の『聖マタイと天使』は、突然現れた天使がマタイに旧約聖書の重要な預言者の名前を伝えるシーンです。
マタイは驚きながらも、天使の声を聞き逃さないように急いでメモを取っています。
実は第一版の作品がありましたが、構図が不適切という理由から却下されてしまいました。
この第二版には、伝統的な構図を踏襲しながら、カラヴァッジョらしいドラマチックで幻想的な雰囲気があります。
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ『聖マタイの殉教』, Public domain, via Wikimedia Commons
右側の『聖マタイの殉教』は、聖マタイが神聖な場所での儀式の途中で殺害されたという聖書の記録に則って描かれています。
作品の一番奥、遠くから劇的なシーンを見守っているのは、カラヴァッジョ本人の自画像です。
サンタンジェロ教会
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ『ロレートの聖母』, Public domain, via Wikimedia Commons
最後に紹介するのは、サンタンジェロ教会のカヴァッレッティ礼拝堂です。
この礼拝堂の中央の祭壇画はカラヴァッジョの『ロレートの聖母』という作品で、訪れた巡礼者夫婦に聖母マリアと幼子イエスが挨拶をするシーンです。
この作品は、聖母マリアがあまりに人間的な容姿をしていることや、訪問者と同様に素足で描かれていることから、公開当初は議論の的となりました。
聖母子であることを示すような天使や後光などの特別な要素はほとんどなく、親しみやすい親子の姿を、当時は「不敬」ととらえるひとも多かったようです。
カラヴァッジョは、あまりに挑戦的な構図のためにたびたび作品の依頼を取り消されたり、却下されたりすることがありました。
この作品は、運よく現在でも礼拝堂に飾られているため、サンタンジェロ教会に足を運べば誰でも作品を見ることができます。
カラヴァッジョが楽しめるローマの教会
カラヴァッジョはローマでもたくさんの作品を残し、そのうちのいくつかはボルゲーゼ美術館やバルベリーニ美術館に所蔵されています。
ローマは、美術館に足を運べない人でも気軽にカラヴァッジョ作品に触れられる街です。
ローマを訪れることがあれば、ぜひ巨匠の作品の迫力を肌で感じてみてくださいね。
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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