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2023.10.13
アートを通して東京の魅力を再発見!国際芸術祭『東京ビエンナーレ2023』が開催中。
東京のまちを舞台に2年に1度開催する国際芸術祭の『東京ビエンナーレ』。その第2回となる『東京ビエンナーレ2023』の秋会期が、9月23日にスタートしました。
目次
今回のテーマは「リンケージ つながりをつくる」。東京都心北東エリア(千代田区、中央区、文京区、台東区の4区にまたがるエリア)の歴史的建築物や公共空間、また遊休化した建物などにてさまざまな展示やプログラムが行われています。4つの有料会場を中心に見どころをご紹介します!
まずは東叡山 寛永寺。日比野克彦の『ALL TOGETHER NOW』が見逃せない!
まず『東京ビエンナーレ2023』で最も北に位置する谷中・鶯谷・上野・御徒町エリアの展示から見ていきましょう。
このエリアのメイン会場のひとつが、2025年に創建400年を迎える東叡山 寛永寺です。まず西村雄輔は常憲院霊廟勅額門前に『ECHO works - 回向柱』を展示。回向柱とは長野・善光寺の前立本尊御開帳の際に本堂の正面に立てられる角塔婆で、これに触れると前立本尊とつながり、ご利益があるといわれています。
そして西村は「東京ビエンナーレ2023 はじまり展」(2022年)において、これに着想した作品《ECHO works》を寛永寺で展示しましたが、今回再び同寺にて回転する丸い回向柱を作りました。制作には寛永寺の地周辺の土が使われています。
通常、非公開の渋沢家霊堂前庭における日比野克彦の『ALL TOGETHER NOW』も見逃せません。日比野は「東京ビエンナーレ2023 はじまり展」にて、徳川家の菩提寺である寛永寺の庭に15人の将軍が一人ずつ段ボール箱として庭に宅配されて集まり、のちにその箱自体が人格を持ちながら庭に佇んで、過去の時間と現在をつなぐリンケージ観を表現しました。
今年は変容した段ボール箱を庭へ再び出現させながら、VR空間でも同時に存在させ、現実空間と虚像空間をつないでいます。VRのゴーグルを通すとダンボールが驚きの変容を見せるので、ぜひ体験してください。
大きな顔の看板がトレードマーク。中村政人の『私たちは、顔のYシャツ』とは?
都心では数少なくなった古い個人商店の跡地などでもいくつか展示が行われています。神田・湯島エリアへと移動しましょう。
小川町交差点近くにある「顔のYシャツ」とは、1920年の創業で、大きな顔の看板がトレードマークのオーダーワイシャツ専門店です。関東大震災で罹災するもの店舗を再興し、長く同じ場所にて営業していましたが、2020年に惜しまれつつ閉店しました。特徴的な看板は、初代店主の梶永松氏の青年時代の似顔絵を意匠に用いています。
この「顔のYシャツ」の価値を保存するため、中村政人は『私たちは、顔のYシャツ』と題し、この「顔」を多様なメディア(絵画、写真、映像など)で作品化。古い建物内部の至る所に「顔」が展開しています。
「あなたは、空を飛びたいと思った事がありますか?」などと、来場者に問いかけるようなメッセージを発信し、「顔のYシャツ」をひとりの人格として象徴化するインスタレーションを展開しています。
床は軋むほど建物は老朽化していますが、この場所の記憶を受け継ぐ「顔」の存在は神田小川町の一つのシンボル。あなたも「顔」に会いに神田小川町へと出かけてみませんか?
100年分の「服の図書館」で古着をレンタルしよう。【海老原商店】
神田須田町にあり、関東大震災後の復興期に建てられた看板建築・海老原商店も会場のひとつです。ここでは西尾美也ほかが『パブローブ 100年分の服』を展開。パブローブとは、パブリックとワードローブを組み合わせた造語ですが、いわば服の図書館のような、誰もが利用できる公共のワードローブを作り出すプロジェクトを行っています。
2023年は関東大震災から100年の節目に当たります。よってプロジェクトでは、震災から現在に至る100年の間に着られた服を地域の人々などから募集。1階から2階には、それぞれ服にまつわるエピソードの付された数多くの古着が展示されています。
一連の古着の中には大震災より前の花嫁衣装で、3代にわたって着てこられたという振袖や、1940年代の当時の国民服といった、長い歴史を物語る貴重なものも少なくありません。
『パブローブ 100年分の服』で面白いのは、単に100年分の古着の展示に留まらないことです。というのも「服の図書館」とあるように、陳列された服(一部を除く)の試着ができる上、会員証を発行することで服を借りて帰ることもできるのです。
50年前や100年前の服をレンタルし、そのまま街へ繰り出すのも楽しいかもしれません。さまざまな思い出の詰まった古着と海老原商店にて巡り会ってください。
国内外のアーティストによる多彩な作品を展示。【エトワール海渡リビング館】
「エトワール海渡リビング館」東京都千代田区東神田1-15-15
東日本橋・馬喰町エリアにあるエトワール海渡リビング館も『東京ビエンナーレ2023』のメイン会場のひとつです。
ここでは畠山直哉や佐藤直樹、中島伽耶子といった国内のアーティストをはじめ、海外作家公募プロジェクトとしてマルコ・バロッティやヒルダー・エリサ・ヨンシュドッティルなど海外アーティストによる多彩な展示が行われています。
そのうち畠山直哉は、東日本大震災における津波で実家が失われたことを境に撮りはじめた、故郷の陸前高田の写真のコンタクトプリントを展示。コンタクトプリントには畠山がシャッターを切ったカットがそのままの順番で写っていて、津波で大きく被害を受け、やがて復興していく陸前高田の光景を畠山がどのように撮影していったのかをたどることができます。
佐藤直樹『その後の「そこで生えている。」2014-2023』
佐藤直樹による植物の大型木炭画シリーズの展示も圧巻といえるでしょう。佐藤は2014年よりさまざまな場所を彷徨いながら、各地で出会った自然のモチーフを木炭にて描き続けていて、10年目を目前とした今年、ついに300メートル近くの幅に達するに至りました。
それを会場では一挙に公開。さまざまなスケールによって描かれた無数の植物のモチーフが、あたかもジャングルのように広がる光景を目にすることができます。
このほか、木造和船のミニチュアを日本橋川に一万艘浮かべるプロジェクト「天馬船プロジェクト2023/日本橋川」や、分別という行為から人とゴミとの関係を問う「超分別ゴミ箱2023プロジェクト」なども見どころです。
アーティストによる映像やインスタレーション、それに各種プロジェクトの成果展示など、1階から7階まで続くエトワール海渡リビング館の展示はかなりボリュームがあります。時間に余裕を持ってお出かけください。
無料展示も充実!水道橋・神保町エリアから大丸有エリアまで。
東京ドームシティアートプロジェクト|遠藤麻衣『アトラクティヴリーアイドリング』
ここまでは4つの有料会場の展示についてご紹介してきましたが、『東京ビエンナーレ2023』ではチケット不要の無料展示も充実している点も見逃せません。
まずノーガホテル 上野 東京(谷中・鶯谷・上野・御徒町エリア)では、家に眠っている古い装身具をコンテンポラリー・アクセサリーに作り替える「ジュエリーと街 ラーニング」を展開し、新たな輝きを放つ斬新なアクセサリーの数々を楽しむことができます。
JR秋葉原~御徒町駅間高架下(神田・湯島エリア)のスペースを使った中村政人の『ネオメタボリズム/ガラス』もユニークではないでしょうか。
中村はサーキュラーエコノミー(原料→生産→消費→リサイクルのプロセス)に新たなアクションを起こすべく、解体現場で打ち捨てられたガラスを新たに加工。新たな息吹を得た約2000個ものガラスによるインスタレーションを展開しています。
東京のための処方|シャーロット・デ・コック『HYPERNOVA』
大丸有エリアにおいても、竹やロープなど自然素材や、街で拾い集めた素材を用いた市民参加型のアートプロジェクト「スローアートコレクティブ」が実施されているほか、シャーロット・デ・コックが大手町ファーストスクエアの南側に描いた巨大壁画の展示などが行われています。
秋会期は11月5日まで。この間、成果展示だけでなく、多様なプロジェクトも日々展開し、ますます盛り上がりを見せていきます。『東京ビエンナーレ2023』にて東京の街を巡りながら、アートを通して意外な表情を見せるディープな東京を探してみてください。
展示会情報
『東京の地場に発する国際芸術祭 東京ビエンナーレ2023』
会期:秋会期 2023年9月23日(土)〜11月5日(日)※成果展示:完成した作品をめぐり東京都心を街歩き
会場:東京都心北東エリア(千代田区、中央区、文京区、台東区の4区にまたがるエリア) の歴史的建築物、公共空間、学校、店舗屋上、遊休化した建物等
入場:一部の会場およびプログラムは有料。
チケット情報 ※すべて高校生以下は無料。
① エトワール海渡リビング館:一般2500円、学生1500円。
② 寛永寺:一般1500円、学生900円。
③ 海老原商店:一般500円、学生300円。
④ 顔のYシャツ:一般500円、学生300円。
【ガイドブック特別版】:一般5000円、学生2500円。
・全特別鑑賞会場に会期中何度でも入場可能なパスポート付
・有料イベントやグッズの割引クーポン付(500円分×3枚)
【ガイドブック通常版】:一般2500円、学生1500円。
・以下の特別鑑賞会場の入場チケット付(利用時に選択)
A. ①エトワール海渡リビング館
B. ②寛永寺、③海老原商店、④顔のYシャツ
・有料イベントやグッズの割引クーポン付(500円分×2枚)
東京の地場に発する国際芸術祭 東京ビエンナーレ2023
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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