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2025.6.8
アジア初!イタリア写真界の巨匠「ルイジ・ギッリ 終わらない風景」東京都写真美術館で開催
東京都写真美術館の総合開館30周年を飾る特別展として、イタリア現代写真界の巨匠ルイジ・ギッリ(1943-1992)のアジア初の美術館個展が開催されます。「ルイジ・ギッリ 終わらない風景」と題された本展は、2025年7月3日(木)から9月28日(日)まで開催され、写真愛好家や現代アート愛好者にとって見逃せない機会となります。
目次
ルイジ・ギッリ《ボローニャ、1989-90》〈ジョルジョ・モランディのアトリエ〉より 1989-90年 東京都写真美術館蔵 ©Heirs of Luigi Ghirri
ヴィム・ヴェンダースが絶賛した「最後の、真のイメージの開拓者」
ルイジ・ギッリ《カプリ、1981》〈イタリアの風景〉より 1981年 ©Heirs of Luigi Ghirri
ルイジ・ギッリは、測量技師としてのキャリアを積んだ後、30歳でコンセプチュアル・アーティストたちとの出会いをきっかけに写真家として本格的な活動を始めました。写真家として過ごした時間はわずか20年ほどでしたが、その作品は世界的な映画監督ヴィム・ヴェンダースに「最後の、真のイメージの開拓者だった」と言わしめるほどの影響力を持ちます。
ギッリにとって写真は、現実世界の単なる複製ではありませんでした。フレーミングされた「見られた」視覚的断片によって風景を作り出し、通り過ぎる風景の中に現実とイメージの関係性を見出すための手段だったのです。彼が探求し続けたのは、「在」と「不在」、外的世界と内的世界についての深い思索でした。
130点の作品で辿る、20年間の写真的思索の軌跡
ルイジ・ギッリ《ザルツブルク、1977》 〈F11、1/125、自然光〉より 1977年 ©Heirs of Luigi Ghirri
ルイジ・ギッリ《レッジョ・エミリア、1985》 〈F11、1/125、自然光〉より 1985年 ©Heirs of Luigi Ghirri
本展では、初期の代表作〈コダクローム〉や〈静物〉シリーズから晩年の作品まで、約130点を通じてギッリの多角的な思索をたどります。展示作品には、イタリア北部の故郷レッジョ・エミリアをはじめとする欧州の風景、アーティストのスタジオ、自宅の室内、美術品、看板やポスター、窓や鏡に映る風景など、多様な視覚的断片が含まれます。
特に注目されるのが、画家ジョルジョ・モランディ(1890-1964)や建築家アルド・ロッシ(1931-1997)のアトリエを撮影したシリーズです。これらの作品からは、ギッリが単なる記録写真を超えて、空間そのものが持つ詩的な質感を捉えようと試みた姿勢が読み取れます。
妻パオラとの共同制作活動にも光を当てる
本展のもうひとつの見どころは、ギッリの活動を語る上で欠かせない存在である妻パオラ・ギッリ(1954-2011)の作品や資料も同時に展示することです。グラフィック・デザイナーとして活動していたパオラは、1970年代のイタリアで写真文化の普及を専門とする出版社がほとんどなかった時代に、ルイジとともに「プント・エ・ヴィルゴラ(Punto e Virgola)」という出版社を立ち上げました。
パオラがデザインした書籍や彼女自身の作品を通じて、ルイジ・ギッリの創作活動におけるパートナーシップの重要性を理解できる構成となっています。これは単なる個人作家展を超えて、1970年代イタリア写真文化の一側面を浮き彫りにする貴重な機会でもあります。
日本初公開のドキュメンタリー映画とトークイベントも
展覧会期間中には、ギッリの活動をまとめたドキュメンタリー映画『Infinito』(イタリア語で「無限」の意)が日本語字幕付きで日本初公開されます。2022年に制作された同作品は、ギッリが撮影する様子の映像や、遺族やプリンターなど生前交流の深かった関係者のインタビューを含む貴重な記録映像です。
8月24日(日)には京都大学名誉教授の岡田温司氏を、9月12日(金)には森岡書店代表の森岡督行氏をゲストに迎えたアフタートークも開催されます。また、7月5日(土)にはルイジ・ギッリ財団代表のアデーレ・ギッリ氏らによるトークイベントも予定されており、多角的にギッリの世界に触れることができます。
ルイジ・ギッリ プロフィール
ルイジ・ギッリ《モデナ、1970》〈初期作品〉より 1970年 ©Heirs of Luigi Ghirri
イタリアのレッジョ・エミリア県スカンディアーノ生まれ(1943-1992)。1970年代より本格的に写真制作に取り組む。色彩、空間、光に対する類まれな美的感覚と、ありふれたものをユーモラスに視覚化する才能によって、主にカラー写真による実験的な写真表現を探求した。制作活動のみならず、写真専門の出版社「プント・エ・ヴィルゴラ(Punto e Virgola)」を仲間たちと立ち上げ、さらにフェッラーラ大学で写真理論に関する講義を行うなど、多岐にわたる活動を展開した。
展覧会詳細
◆ 総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ 終わらない風景
【会期】2025年7月3日(木)~9月28日(日)
【会場】 東京都写真美術館 2階展示室(東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
【主催】公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館
【後援】 駐日イタリア大使館
【開館時間】10:00-18:00(木・金曜日は20:00まで、8/14-9/26の木・金曜日は21:00まで)
※入館は閉館30分前まで
【休館日】毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館、翌平日は休館)
【観覧料】
一般800円(640円)、学生640円(510円)、高校生・65歳以上400円(320円)
※( )は有料入場者20名以上の団体、当館映画鑑賞券提示者、各種カード等会員割引料金
※中学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者(2名まで)は無料
※8/14-9/26の木・金曜日17:00-21:00はサマーナイトミュージアム割引あり
【お問い合わせ】 03-3280-0099
【公式ウェブサイト】https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-5073.html
◆主なイベント
【トークイベント】7月5日(土)14:00~17:00
【ドキュメンタリー映画上映+アフタートーク】8月24日(日)、9月12日(金)
【担当学芸員によるギャラリートーク】7月11日(金)、8月1日(金)、9月5日(金)各14:00~
※各イベントの詳細・参加方法については公式ウェブサイトをご確認ください。
【PR TIMES】
総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ 終わらない風景
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000807.000038211.html

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