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2026.5.19
【取材レポート!】『銀河鉄道999 THE GALAXY EXPERIENCE あの旅は、まだ続いている。』999号に乗り銀河へ旅立つ。“観る”から“体験する”展覧会【角川武蔵野ミュージアム】
角川武蔵野ミュージアムで、企画展「銀河鉄道999 THE GALAXY EXPERIENCE あの旅は、まだ続いている。」が開催されています。会期は2026年10月26日(月)まで。会場は、同館1階のグランドギャラリーです。内覧会に参加してきましたので、そのレポートをお届けいたします。
目次
「今までの鑑賞するというところから、そこに存在するという感覚へ」。内覧会の冒頭、本展のプロデューサーを務める宮下俊さん(角川武蔵野ミュージアム ゼネラルプロデューサー)は、今回の展示に込めた思いをそう語りました。
本展は、1979年に公開された劇場版『銀河鉄道999』をもとに、その物語世界を映像、音響、空間演出によって拡張する体験型の展覧会です。映画をスクリーンの前で「観る」のではなく、来場者自身が銀河鉄道の乗客となり、鉄郎やメーテルとともに宇宙へ旅立つ。そんな没入感のある構成が大きな特徴です。
◆銀河鉄道999 THE GALAXY EXPERIENCE あの旅は、まだ続いている。
角川武蔵野ミュージアム1階 グランドギャラリー
開催期間:2026年4月25日(土)~10月26日(月)
映画の外側に広がる世界へ
宮下さんが語っていたのは、劇場版『銀河鉄道999』への深いリスペクトでした。1979年公開の劇場版は、当時大きな反響を呼び、アニメ映画の枠を超えて多くの人々の記憶に残る作品となりました。本展が目指したのは、その名作をそのまま再現することではありません。映画の外側に広がっていたかもしれない世界を、新たな映像体験として立ち上げることでした。
メーテルや鉄郎が見た空間や時間。彼らが抱えていた希望、孤独、淡い思い。それらを平面の映像としてではなく、立体的な空間の中に定着させる。今回の展示には、そんな制作側の強い意図が込められています。
永遠の命をめぐる問い
『銀河鉄道999』が描いてきたのは、単なる宇宙冒険ではありません。永遠の命は本当に幸福なのか。機械の身体を手に入れることは、人間であることを超えることなのか。それとも、人間らしさを失うことなのか。
鉄郎が旅のなかで出会う星々や人々は、彼に問いを投げかけ続けます。半世紀近く前に生まれた作品でありながら、そのテーマは、AIやテクノロジーによって身体や存在のあり方が揺らぐ現代にも、驚くほど鋭く響いてきます。
旅はホワイエから始まる
展覧会の体験は、会場に入る前から始まります。ホワイエには、銀河鉄道をイメージした客車が置かれ、来場者はその座席に腰掛けながら、物語の旅立ちへと導かれていきます。
第4会場(ホワイエ)のようす©松本零士/零時社・東映アニメーション
車窓に広がる銀河。地球へと向かう999号。そして、いま地球に帰還した列車に、私たちが再び乗り込むような導入。その先に待っているのは、出発駅「メガロポリス・ステーション」です。ここから来場者は、鉄郎とメーテルの旅をただ眺めるのではなく、自らも銀河へ向かう乗客として物語の中へ入っていきます。
“没入”を超え、そこに存在する感覚へ
移動した第一会場では、約1,000平方メートルの空間に、32台の最新4Kレーザープロジェクターを用いた映像が展開されます。壁面だけでなく、足元の床面までが作品の一部となり、来場者は光と音に包まれながら、まるで銀河の中に立っているような感覚を味わいます。
宮下さんは、従来のイマーシブ展示について、床面と壁面に2D映像を投影し、その映像に包まれる体験だったと説明しました。それに対して本展で目指したのは、四角い部屋であることを忘れてしまうほど、空間そのものの中に入り込む感覚。つまり、映像を「鑑賞する」のではなく、物語の世界に「存在する」体験です。
名場面が空間として立ち上がる
映像作品の上映時間は約30分。物語を順に追うというより、光、音、セリフ、音楽、そして空間の広がりの中を通り抜けていくような体験です。
劇場版『銀河鉄道999』を知っている人にとっては、記憶の中の名場面が新しい空間体験としてよみがえる時間になるでしょう。一方で、初めて『銀河鉄道999』に触れる人にとっても、壮大な宇宙を旅するデジタルアトラクションとして楽しめる構成になっています。
川井憲次さんの音楽が導く銀河の旅
音楽も、本展の没入感を支える重要な要素です。今回のために、作曲家・川井憲次さんが全編にわたり新たな楽曲を書き下ろしています。会場には立体サラウンドが導入され、音楽だけでなく、劇中のセリフや効果音も含めて、物語の気配が空間全体に広がります。
そして旅の最後を飾るのは、ゴダイゴの名曲「銀河鉄道999(THE GALAXY EXPRESS 999)」。世代を超えて親しまれてきたメロディが流れる瞬間、長い旅の終着点と、新たな出発が重なり合うような余韻が生まれます。
25メートルの線路に残る言葉
映像体験を終えたあとも、旅は続きます。来場者は、25メートルにわたる線路の上を歩きながら、物語を彩る言葉と出会います。
鉄郎やメーテル、そしてさまざまな登場人物たちのセリフは、ただの名言として並ぶのではなく、映像体験の余韻のなかで、記憶の断片のように現れては通り過ぎていきます。宇宙を旅した後だからこそ、その言葉はより深く胸に残るでしょう。
資料展示で見えてくる作品の思想
さらに第三会場では、劇場版の設定資料や制作の裏側に触れられる展示も用意されています。華やかな映像体験のあとに、原画や資料を通じて作品の骨格を見つめることで、『銀河鉄道999』という作品がいかに緻密に構築されてきたのかが見えてきます。
松本零士が描いた宇宙は、ロマンチックでありながら、同時に人間の生き方を問う厳しさを持っています。機械の身体、永遠の命、貧富の差、旅立ち、別れ。作品に込められた思想は、資料展示を通じてより立体的に浮かび上がります。
発車時刻を確認して楽しみたい
展覧会は、映像の上映開始時間が設定されており、10時10分から17時30分まで複数回実施されます。途中からの観覧も可能ですが、公式サイトでは最初からの視聴が推奨されています。作品世界にしっかり入り込むなら、発車時刻を確認してから訪れるのがおすすめです。
会場では、展覧会のために制作されたオリジナルパンフレットも販売されています。劇場版『銀河鉄道999』の紹介に加え、制作秘話や設定資料、展覧会制作スタッフによる見どころも収録。体験後に作品世界をさらに深掘りしたい人にとって、旅の記念となる一冊になりそうです。
あの旅は、いまも続いている
『銀河鉄道999 THE GALAXY EXPERIENCE あの旅は、まだ続いている。』は、名作アニメを最新の映像技術で再現するだけの展覧会ではありません。映画の記憶を空間へと広げ、来場者自身を物語の乗客に変えていく体験です。
宮下さんが語ったように、これは「イマーシブ」という言葉だけでは言い尽くせない、新しい映像体験なのかもしれません。鉄郎が見た宇宙、メーテルが導いた旅、そして松本零士が作品に込めた、人間の生き方をめぐる問い。そのすべてが、光と音に包まれた会場の中で、もう一度動き出します。
かつて999号に憧れた人も、これから初めて乗車する人も。角川武蔵野ミュージアムで待っているのは、過去の名作への回帰ではなく、いま始まる新しい銀河の旅です。
◆公式予告編動画
◆銀河鉄道999 THE GALAXY EXPERIENCE あの旅は、まだ続いている。
開催場所:角川武蔵野ミュージアム1階 グランドギャラリー
開催期間:2026年4月25日(土)~10月26日(月)
所在地:埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3
アクセス:JR武蔵野線「東所沢」駅から徒歩約10分
開館時間:10:00~18:00(最終入館は17:30まで)
休館日:火曜日、6月1日(月)~5日(金)
※5月5日(火・祝)、8月11日(火・祝)、9月22日(火・祝)は開館
料金:一般((大学生以上):2,700円、中高生:2,200円、小学生:1,500円、未就学児:無料
公式サイト:銀河鉄道999 THE GALAXY EXPERIENCE あの旅は、まだ続いている。
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東京美術館巡りというSNSアカウントの中の人をやっております。サラリーマンのかたわら、お休みの日には、美術館巡りにいそしんでおります。もともとミーハーなので、国内外の古典的なオールドマスターが好きでしたが、去年あたりから現代アートもたしなむようになり、今が割と雑食色が強いです。
東京美術館巡りというSNSアカウントの中の人をやっております。サラリーマンのかたわら、お休みの日には、美術館巡りにいそしんでおります。もともとミーハーなので、国内外の古典的なオールドマスターが好きでしたが、去年あたりから現代アートもたしなむようになり、今が割と雑食色が強いです。
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