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STUDY

2023.2.13

パリの穴場!2022年に新装開館した「国立中世美術館」の見どころリポート

パリにはルーブル美術館やオルセー美術館など、有名作品を多く所蔵する美術館が集まっています。なかでも「国立中世美術館」は、有名美術館がひしめくパリでは注目されづらく、ルーブル美術館やオルセー美術館のような認知度はありません。
しかし、国立中世美術館には長い中世を通じて制作された美術品の数々がよい保存状態で展示されており、他では見られないようなステンドグラスやタペストリーが間近で見られるパリの穴場スポットなのです!

Thesupermat, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

この記事では、ヨーロッパの大学院で美術史を専攻している筆者が、2022年10月にパリ国立中世美術館を訪れた際の見どころをリポートします。
(※記事中の写真は改装前のものも含まれます)

パリ国立中世美術館見どころ①:建造物

ctj71081, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

パリ国立中世美術館は、正式名称を「国立中世美術館-クリュニー浴場および館(Musée national du Moyen âge - Thermes et Hôtel de Cluny)」と言います。
もともとこの建物の歴史は古代ローマ時代の浴場にあり、現在でも美術館の敷地内に1~2世紀の浴場跡が残っています。13世紀には、パリに勢力を伸ばしたクリュニー修道会の館が浴場跡地に建設され、15世紀末の全面改築以降にも増改築を繰り返して現在に至りました。
美術館の内部には浴場時代の薄暗い地下道や、15世紀に建てられた後期ゴシック様式の礼拝堂などが含まれます。展示品の素晴らしさもさることながら、建造物にも歴史が感じられる魅力的な美術館です。

パリ国立中世美術館見どころ②:ステンドグラス

xiquinhosilva from Cacau, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

国立中世美術館の中には、ステンドグラスが展示されており、普段は見ることのできないディテールを感じられます。ステンドグラスは後期中世のゴシック建築の装飾において、非常に重要な役割を持っていました。
フランスやドイツなどのゴシック建築には当時のステンドグラスが残っている教会もありますが、一般的に天井の高い教会内ではすべてのデザインを肉眼で認識するのは不可能です。

Allie_Caulfield, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

しかし、国立中世美術館ではパリ市内・近郊の重要なステンドグラスが展示されているため、色彩やアウトラインをじっくりと観察できます。近くで観るとパーツごとの力強さが伝わり、中世の人のアートへの情熱が感じられます。

パリ国立中世美術館見どころ③:タペストリー

Laika ac from UK, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

国立中世美術館の最大の見どころは、「貴婦人と一角獣」のタペストリーといえるでしょう。貴婦人と一角獣のタペストリーは15世紀末にフランドルで制作されたもので、同じテーマを扱う6枚の作品群で構成されています。

Musée de Cluny, Public domain, via Wikimedia Commons

真っ赤な背景には千花模様と呼ばれる装飾が施され、作品背景には犬やウサギなどの小動物が含まれます。5枚の作品は「視覚」「聴覚」「味覚」「嗅覚」「触覚」を示し、残りの1枚には「我が唯一の望みに(À mon seul désir)」と書かれています。その言葉がなにを意味するのか、現在ではまだ定かになっていません。

まとめ

国立中世美術館には、ステンドグラスやタペストリーの他にも中世の彫刻や調度品など、さまざまなコレクションが展示されています。ルーブル美術館やオルセー美術館のように混雑していることもないので、比較的落ち着いて自分のペースで作品鑑賞ができる場所です。
中世美術に関心がある人も、これから学びたい人も、パリを訪れたらぜひ国立中世美術館に足を運んでくださいね。以上、パリの穴場・国立中世美術館の見どころリポートでした。

【写真6枚】パリの穴場!2022年に新装開館した「国立中世美術館」の見どころリポート を詳しく見る
はな

はな

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

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