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2024.1.11

デューラーの版画『メランコリア』ってどんな絵?特徴と見どころを解説

『メランコリア』はドイツ・ルネッサンスの画家デューラーが1514年に制作した版画です。「メランコリア(メランコリー)」は「憂鬱」の意味があり、主人公である擬人化された憂鬱を取り巻くように複雑なシンボルが散りばめられています。

作品にはさまざまな要素が含まれているため、決定的な解釈はわかっていません。この記事では、謎多きデューラーの『メランコリア』をより深く理解できるよう、特徴や見どころをわかりやすく解説します!

デューラー『メランコリア』の歴史

デューラー『メランコリア』, Public domain, via Wikimedia Commons

『メランコリア』は、24㎝×18.8㎝の版画(エングレービング)です。正式には『メランコリアI』と題されています。版画(エングレービング)とは、銅などでできた鉄板に彫刻刀でデザインを彫り、できた溝にインクを刷り込んで紙に印刷する技法で、『メランコリア』 は版画(エングレービング)のなかでももっとも有名なものの1つです。

『メランコリア』 の主人公にあたる人物は女性で、「憂鬱」の擬人化と考えられます。女性は疲れたような、落ち込んだような複雑な表情です。女性の周りには、さまざまな道具が配置されています。ハンマーや砂時計など種類はさまざまですが、工芸品や大工用具が多いようです。

デューラーは相次ぐ友人や家族の死により、作中に表現されるような憂鬱な悲しみを感じてしたのかもしれません。また、デューラーの著作によると、彼にとっての憂鬱は「努力のしすぎ」によって呼び起こされると言及されています。

多くの美術史家が研究し、比較的たくさんの文献があるにもかかわらず、デューラーが作品に込めた意図や解釈は明確になっていません。さまざまな道具が描かれていることから、精神的で知的な寓意が込められた作品であること考えられることが一般的です。

デューラー『メランコリア』の特徴:寓意的な表現?

デューラー『メランコリア』, Public domain, via Wikimedia Commons

『メランコリア』に描かれる道具には、それぞれ象徴的な意味があると考えられます。『メランコリア』を制作するためにデューラーが残したデッサンとメモのなかには、「鍵は権力を、財布は富を意味する」と記されています。

砂時計は伝統的に「時間の有限性」を象徴し、「死を想え(=現世には時間に限りがあることを忘れるな)」と解釈できる道具です。秤は一般的に「神の前での平等性」や「最後の審判」を暗示します。このように道具ごとの象徴性の解釈ができるほかに、全体としては錬金術や数秘術に関するシンボルが散見されます。

なかでも注目すべきは、女性の右後ろの4×4のマジック・スクエアと呼ばれる正方形です。伝統的なマジック・スクエアのルールに従い、正方形のなかにある列、行、ななめ線のすべての4つの数字を足すと、合計が34になるよう計算されています。下段中央の2つのマスは15と14であり、制作年の1514を示しているのでしょうか。

作品の右側中央にある不思議な物体(変則的に切られた石?)も、数学的な寓意が込められていると考えられることがあります。物体の表面をよく見ると、顔のようなものが見えるため、デューラーの自画像、もしくは髑髏ではないかと言われます。

『メランコリア』はディテールを見れば見るほど謎が増える、複雑さが特徴です。作品の全体像だけでなく、詳細に目を向けると新しい発見があるかもしれません。

デューラー『メランコリア』の見どころ:異なる材質表現

デューラー『メランコリア』, Public domain, via Wikimedia Commons

『メランコリア』の見どころは、版画で見事に表現された異なる材質表現です。作中には動物、木材、石、鉄など、さまざまな材質が配置されていますが、いずれもパッと見て質感が伝わるような豊かな材質表現があります。

版画(エングレービング)は、鉄板に彫刻刀でデザインを削る手法であり、細やかなディテールを表現するのは簡単ではありません。鉄の板を削るのには力が必要なうえ、力を入れすぎると鉄が割れてしまうこともあるためです。デューラーは難しいエングレービングの制約がありながらも、細かい線と点を駆使してバラエティに富んだ質感を生み出しています。

デューラー『メランコリア』, Public domain, via Wikimedia Commons

たとえば左下に位置する犬には、毛並みの流れが感じられるでしょう。女性がまとうドレスの布の質感は、犬の毛並みとは大きく異なりなめらかさがあります。背後のはしごでは、木材の筋張った様子が伝わり、秤の受け皿は鉄製品特有の光沢が知覚できます。

細部をよく観察すると、すべてが線と点の陰影のみで表現されているとは到底思えない緻密な計算を感じられます。デューラーの『メランコリア』を鑑賞する際は、デューラーが作品に込めた謎の寓意や、質感を的確に示すテクニックに注目してくださいね。以上、デューラー『メランコリア』の特徴と見どころ解説でした!

【写真4枚】デューラーの版画『メランコリア』ってどんな絵?特徴と見どころを解説 を詳しく見る

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はな

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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

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