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2024.6.11
西洋建築に重要な「柱頭」とは?美術様式を紐解くヒントを簡単に解説
「柱頭(ちゅうとう)」という言葉を聞いたことがありますか?西洋美術や西洋建築に関する本を開けば、必ずといっていいほど登場するこの言葉は、日常生活のなかではあまり馴染みがありません。
実は「柱頭」は西洋建築において、美術様式に基づいて選ばれただけではなく、政治的・宗教的な意図でも重要な要素です。この記事では、美術の観点から柱頭を理解するための3つのポイントを簡単に解説します!
目次
柱頭は「柱が梁(はり)と接続する部分」
Ionic order Public domain, via Wikimedia Commons.
「柱頭」は基本的に柱の一部であり、柱の一番上の位置で梁(はり)と接続しています。梁は屋根や天上を支える一般的に水平な構造をしており、柱の上に載ることで上部が覆われた空間を作ります。
柱頭が西洋美術において重要な理由は、美術的な装飾です。実質的には柱としての役割自体は、装飾がなくても問題ありません。しかし、とくに古代ギリシャ以降の時代からは柱頭装飾は建造物のもっとも重要な象徴の一部として重視されてきました。
ポイント①:柱頭の3つの基本様式
Classical orders from the EncyclopediePublic domain, via Wikimedia Commons.
柱頭には、「ドーリア式」「イオニア式」「コリント式」の3つの基本様式があります。いずれも古代ギリシャで誕生し、数千年間、現在に至るまで根強い人気を誇ってきました。
ドーリア式柱頭
「ドーリア式」は、紀元前11世紀~6世紀に徐々に古代ギリシャで浸透した様式です。もっともシンプルな装飾で、必要最低限の要素のみで構成されています。「荘厳」という言葉で形容され、強固な権威を強調したい際に選ばれてきました。
興味深いことに「ドーリア式」は「男性性」と関連して理解されてきた伝統があり、神話の男性の神に捧げられた神殿やキリスト教世界では男性聖人の教会によく用いられます。
イオニア式柱頭
「イオニア式」柱頭は、左右にうずまくような丸い装飾が施されている点が特徴です。紀元前6世紀半ばから紀元前5世紀にかけて誕生し、古代ギリシャ全土へ広く流布しました。
イオニア式のうずまき部分は、長い歴史のなかでさまざまなバリエーションが試された部位です。初期では平面的なうずまきが一般的でしたが、徐々に前方に突出するものや、さらにはうずまきからチェーンのようなもの垂れ下がるものも誕生しました。
コリント式柱頭
「コリント式」は、3つの基本様式のなかでもっとも“凝った”装飾が施されている柱頭です。アルカンサスの葉が伸びる形が基本的なデザインで、落ち着いた印象のドーリア式やイオニア式に比べると華やかさがあります。
ほかの2つの様式と同様に古代ギリシャで誕生したコリント式ですが、実は古代ギリシャではあまり用いられた例がありません。一方、古代ギリシャ文化を強く継承した古代ローマでは、コリント式が頻繁に採用されました。ドーリア式が男性性を象徴するのに対し、コリント式は女性性を象徴することがあります。
ポイント②:摩訶不思議な中世ロマネスクの柱頭
Revilla de Santullán Church of San Cipriano 004 Romanesque portal capitals Public domain, via Wikimedia Commons.
古代ギリシャから生まれた3つの重要な柱頭様式は、古代ローマを通じて長い間維持されてきました。しかし、西洋中世の時代に入ると、派生形…というにはあまりにも不思議な柱頭が誕生します。
とくに11世紀から12世紀に広まったロマネスク美術の柱頭は、なんともいえない可笑しさ、かわいらしさがあります。筆者が美術史の道に進もうと思ったきっかけは、まさにこれらの中世柱頭装飾でした。
キリスト教に関するシリアスなテーマを扱っているにもかかわらず、デフォルメされた人体や生き物の表現、そして空間をくまなく埋めようとする貪欲な構図は、見れば見るほど興味を惹かれる面白さがあります。
もちろんこれを作った芸術家、そして依頼主たちはふざけていたわけではありません(たぶん)。精神世界を重視する中世のキリスト教美術においては、リアルさを追求する写実表現よりも力強くメッセージを伝える象徴的な表現が採用されたのかもしれません。
ポイント③:3種類の柱頭を階層に分けて使うケースも
Roman ColosseumPublic domain, via Wikimedia Commons.
基本的には1つの建造物に1つの種類の柱頭が並列して使用されますが、複数が意図的に組み合わされることもあります。(一般的には古代ギリシャの3つの代表的な様式からの組み合わせ)
代表的な例では、コロッセオが挙げられます。コロッセオは、外から見ると1階、2階、3階でそれぞれ異なる柱頭様式を採用しています。1階はドーリア式、2階イオニア式、3階はコリント式です。
複数の様式が用いられることで建築物がより豪華に権威的に見える仕組みです。実はヨーロッパの街ではこれを応用した建造物はあちこちにあり、とくにローマではそのへんの普通の建物でも1階、2階、3階で柱頭様式が異なることもあります。
建造物全体から見るとほんの一部分にすぎないため、見逃してしまうことも多いでしょう。ぜひ西洋建築を鑑賞する際は、柱頭にも注目してみてくださいね!以上、西洋建築に重要な柱頭のポイント解説でした!
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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