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STUDY

2025.3.26

Sarah Sze(サラ・ジー)物質性の儚さや時間の流れをマルチメディア作品で表現

今回はGagocian Galleryに取り扱いもある、Sarah Szeをご紹介します。

Sarah Sze(サラ・ジー)は、彫刻、インスタレーション、映像、絵画、ドローイングなど多岐にわたるメディアを用い、物質性の儚さや時間の流れをテーマにした作品を制作するアーティストです。彼女の作品は、物理的な世界とデジタル世界の要素を融合させ、ミクロとマクロの視点を行き来しながら、視覚的・空間的にダイナミックな体験を生み出しています。

Sarah Sze(サラ・ジー)とは?マルチメディアアーティスト

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(Gagocianのサイトより)
サラ・ジーは、物理的な世界とデジタルの世界の両方からオブジェクトやイメージを収集し、それらを複雑なマルチメディア作品へと組み上げる。彼女の作品は、顕微鏡レベルの観察から無限の広がりを持つ巨視的な視点へとスケールを変化させる。

卓越したブリコルール(寄せ集めの名手)であるジーは、多様なメディアを軽やかに横断する。彼女のダイナミックで生成的な作品群は、彫刻、絵画、ドローイング、版画、映像、インスタレーションを含み、常に物質の不安定な本質を扱い、エントロピーや時間性と向き合っている。

ボストン生まれのジーは、1991年にイェール大学で学士号を取得し、1997年にニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツで修士号を取得した。在学中の彼女は、ニューヨークのMoMA PS1で建物の壁に穴を開け、彫刻的なポータルを作り出し、建築そのものを根本的に変容させるエコシステムを構築することで、彫刻の概念そのものに挑戦した。

翌年、シカゴ現代美術館で開催された彼女の初の個展では、《Many a Slip》(1999)を発表。複数の部屋にまたがる没入型インスタレーションで、日常的なオブジェクトを複雑に組み合わせた構造の中に、ちらつく映像を点在させた。

この作品は、彼女にとって最初の映像作品への挑戦であり、それ以降、映像はインスタレーションにおける主要なメディアとなった。ロシア構成主義の「キオスク」という概念を重要な着想源として、後のインスタレーションでは、画像や情報を交換するための可動式ステーションとしての役割を持たせた。

ジーの作品は、1999年の第48回ヴェネツィア・ビエンナーレやカーネギー・インターナショナル、2000年のホイットニー・ビエンナーレ、2002年のサンパウロ・ビエンナーレなどに出展され、2003年にはマッカーサー・フェローを受賞している。

Pictures at an Exhibition:サラ・ジーの没入型インスタレーション

Sarah Szeは、「私の作品の境界は決して額装されない。それはドアの外へ、通りへと広がっていく。私は人々に、自分が作品の目撃者であることを思い出させたい。」と語るように、空間を超えて広がるダイナミックな作品を特徴とするアーティストである。

2024年6月25日、Gagosian(ガゴシアン)にて、Szeの新作絵画と没入型インスタレーションを展示する展覧会「Pictures at an Exhibition」が開催される。本展は、2020年に同ギャラリーで開催された彼女の初個展およびFondation Cartier pour l’art contemporainでの個展Night into Dayに続き、パリでの2回目の大規模な展覧会となる。

本展の中心となるのは、2023年のタイ・ビエンナーレ(チェンライ)で初公開された没入型ビデオ・インスタレーション「Pictures at an Exhibition」である。作品はギャラリーの1階全体を占拠し、中心から放射状に広がる多数の紙のスクリーンが、映像、画像、光によって絶えず変化する空間を生み出している。それはまるで巨大な万華鏡のように、スクリーンの隙間から光が漏れ、ギャラリーの床や壁、さらには鑑賞者の身体にも映像の断片がちらつく仕掛けになっている。

この展示では、Szeの特徴的な「拡張する作品」というコンセプトがより顕著に表れており、鑑賞者は作品の一部となりながら、光と映像の流れに身を委ねることになる。

Metronome:サラ・ジーのイタリア初個展

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2024年2月11日までトリノのOGRで開催されていた「Sarah Sze | Metronome」は、ジーにとってイタリアでの初個展となった。展示会場は、かつてポルタ・ヌオーヴァ駅とポルタ・スーザ駅の間にあった列車修理場を活用した空間で、そこで彼女は絶え間なく流れるデータの動きを表現したインスタレーションを発表した。

本作は、静的なものとされがちな彫刻の概念に挑戦し、現代社会の象徴ともいえる「情報の氾濫」を可視化している。50年間使用されていなかった空間での作品は、現代と過去の情報の在り方・行き来に思いを寄せるのに一役買っている。

「Twice Twilight」:サラ・ジー「Timekeeper」シリーズの最新作

アーティストとして、私は長年にわたって、素材を通じて周囲の世界に意味を見出そうとする努力、欲望、そして絶え間ない渇望について考えます。そして、その儚い追求の中にある驚きと、同時に潜む虚しさを見つけようとしています。
--Sarah Sze

特別に制作された《Twice Twilight》と《Tracing Fallen Sky》は、2015年に始まったサラ・ジーの「Timekeeper」シリーズの最新作であり、イメージの連なりを通じて、仮想世界と物質世界がますます交錯していく様子を探求する作品です。その彫刻構造は、古代から宇宙のマッピングや地球の自転の追跡に用いられてきたプラネタリウムや振り子の仕組みに着想を得ています。

ジーは長年にわたり、時間や空間を測定し、自然界を説明しようとする科学的モデルに関心を寄せてきました。

彼女の作品では、太陽の壮大な軌道から、マッチを擦る一瞬の動作まで、スケールの変化を大胆に取り入れながら、私たちが時間と空間を捉え、モデル化しようとする不断の試みが持つ神秘性と複雑さを浮かび上がらせます。こうした概念の本質を掘り下げることで、ジーは、人間が理解を超えたものに迫ろうとする試みの中に潜む驚異と、その果てにある虚しさをも明らかにしていきます。

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Masaki Hagino

Masaki Hagino

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Contemporary Artist / 現代美術家。 Diploma(MA) at Burg Giebichenstein University of Arts Halle(2019、ドイツ)現在は日本とドイツを中心に世界中で活動を行う。

Contemporary Artist / 現代美術家。 Diploma(MA) at Burg Giebichenstein University of Arts Halle(2019、ドイツ)現在は日本とドイツを中心に世界中で活動を行う。

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