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STUDY

2025.12.25

【可愛い縄文土偶も】国宝火焔型土器と5体の土偶を解説

縄文時代の国宝に指定されている火焔型土器と5体の土偶は、縄文人の想像力と卓越した技術が詰まった逸品です。今回はそれらの見どころをご紹介します。

合掌土偶合掌土偶

炎の器「火焔型土器」

ー 縄文時代中期(約5000年前) 新潟県十日町市笹山遺跡出土

火焔型土器(国宝指定番号1)「火焔型土器」国宝指定番号1, Public domain, via Wikimedia Commons.

縄文土器と聞くと、この「火焔型土器」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。 燃え上がる炎を連想させるダイナミックな装飾は、多くの人を驚かせ、縄文時代のイメージをつくりあげてきました。

火焔型土器は縄文時代中期に、新潟県の信濃川流域とその周辺で作られた極めて地域性の高い土器です。

火焔型土器の基本的な造形

その造形は一見無作為に見えますが、実は規則性のある形で構成されています。

・4つの突起
最大の特徴である口縁部の4つの突起は、鶏のトサカに似ていることから「鶏頭冠(けいとうかん)突起」と呼ばれます。さらにそれぞれに、尻尾のような形の小さな突起が付けられています。

・フリル状の装飾
上記の4つの突起を繋ぐように、ギザギザした「鋸歯状(きょしじょう)突起」と呼ばれる装飾が施されます。

・円を描く装飾
その下の土器の頸部には、生き物の眼のような円を描く突起が付いています。その周りは「S字」や「渦巻き」など様々な文様で埋められ、その種類や組み込み方は個々に異なります。

・下部を飾る文様
土器は下にいくほど細くなる円錐台で、縦に線が施されています。そこには「渦巻」などの文様が巧みに組み込まれています。

基本を踏まえながら変化する造形

火焔型土器(国宝指定番号14)「火焔型土器」 国宝指定番号14, Public domain, via Wikimedia Commons.

国宝指定は正式には「火焔型土器を中心とする深鉢形土器57点」をさします。それらの土器は基本の形に則しながらもそれぞれに個性を持っています。

例えば「鶏頭冠突起」の代わりに短冊状の王冠の様な突起がついたり、ギザギザの「鋸歯状突起」の代わりに緩やかな曲線が施されたりと、全体のフォルムを変えることなく部分的に変化が加えられています。

土器は実用品?それとも祭祀用?

実際に使っていたとは思えないような装飾が付いていますが、土器の内部に煮炊きによって付着したとみられる炭化物(おこげ)が残っている例があり、日常的な調理器具として使われていたと考えられています。

日常使いの土器に極端とも言える装飾を施したことには、祭祀的・呪術的な強い意味が込められていたのかもしれません。

一方であまりにも使い勝手が悪そうなことから、何か特別な日、例えば祭祀の日に煮炊きをする専用の土器であったのではないか、という見方もあります。

デザインに込められたものは?

一説には、信濃川流域という限定的な地域で作られていることから、土器下部に刻まれた縦の線は川の流れを表わし、火への信仰や天地への祈りが込められているとも言われています。

いずれにしても、見る人の創造力をかき立てる強烈な個性を放つ土器ではないでしょうか。

展示:十日町市博物館

個性的な国宝土偶①:母なる土偶「縄文のビーナス」

ー 縄文時代中期(約5000年前)長野県茅野市棚畑遺跡出土

縄文のビーナス「縄文のビーナス」筆者撮影

土器の他に「土偶」も出土しています。同じ縄文時代の土偶であってもデザインは幅広く、見ていてなんとなくほっこりするものばかりです。
今回紹介する5体の国宝土偶はそれぞれに個性的で、その地域のその時々の縄文文化を象徴するものとされています。

1つ目は、「縄文のビーナス」。

高さ27㎝。ハート形の顔、切れ長のつり上がった目、尖った鼻、ぽかんと開けた小さな口は、この時代の長野・山梨県周辺の土偶に共通する特徴です。

土地造成に伴い発掘された集落跡の中央にある穴から、横たわった状態で発見されました。

「縄文のビーナス」の注目ポイント

妊婦を思わせる女性らしいフォルムが特徴です。やや下がり気味に突出した腹、腰回りは左右対称の弧線で描かれ、弓なりの背中から大きな臀部へと続きます。明らかに妊娠している女性の姿を表わしているようです。

大きな下腹部を支える足はどっしりと太く、なぜか右足の方が左足よりも若干短くなっています。
何かを被っているような大きな頭は、帽子または髪型と考えられています。その頭頂部は平たく、渦巻き模様が施され、側頭部周辺には幾何学文様が加えられています。また材料の土には雲母が混ぜられ、随所が金色に輝き、全身は光沢が出るほどよく磨かれています。
ふくよかな女性の温かみを感じさせる造形には、妊娠や出産の無事がこめられていると言われています。

展示:茅野市尖石縄文考古館

個性的な国宝土偶②:研ぎ澄まされた造形美「縄文の女神」

ー 縄文時代中期(約5000年前)山形県舟形町西ノ前遺跡出土

「縄文の女神」, Public domain, via Wikimedia Commons.

高さ45㎝。現存する立像土偶としては最大の大きさで、凛とした堂々した佇まいを感じさせます。女性の姿を究極までデフォルメした造形は、現代の美的感覚にも通じる完成された美しさです。

道路工事の調査で、竪穴住居跡や土器等と共に5つに割れた状態で発見されました。

「縄文の女神」の注目ポイント

エッジの効いた上半身にくびれたウエスト、五角形の文様がある下腹部が印象的です。腰回りにかけては幾何学文様の表現があり、出尻と呼ばれる臀部から続く安定感のある角柱状の足は下へいくほど広がっています。その前後には太い横線が均等に施され、全身の安定感を視覚的にも高めているようです。
一方でカッパ形と言われる頭の後頭部は大きく凹み、顔の表現は一切なく、謎めいた雰囲気を醸し出しています。また素材には石英(水晶を代表とする鉱物)が含まれ、全身は丁寧に磨きあげられ艶やかな地肌を保っています。

一切の妥協を許さない計算されつくされた造形は、土偶造形の到達点を示しているとも言われています。

展示:山形県立博物館

個性的な国宝土偶③:素顔を隠す「仮面の女神」

ー 縄文時代後期(約4000年前)長野県茅野市中ッ原遺跡出土

仮面の女神「仮面の女神」筆者撮影

高さ34㎝、重量感に溢れた土偶は仮面を装着した姿です。標高約950mにある遺跡の集団墓地の穴から、体の右側を上にした状態で発見されました。

「仮面の女神」の注目ポイント

逆三角形の顔面は仮面で、後頭部には仮面を付けているバンドのような表現があります。仮面は大きなV字でその表情を作り上げています。

左右に広げた手の先には渦巻き文様があり、そこから刻まれた線は胸のたすきを掛けたような文様へと繋がり、さらには腹の中心の円へと、一連に繋がるように描かれています。



一方、不釣り合いなほど太い足には文様はなく、よく磨かれたことで強調され、威厳のある雰囲気に拍車をかけているようです。

縄文時代には土で作られた仮面「土面」が作られました。「土面」には小さな穴が開いており、そこに紐を通し顔につけたと考えられています。人は仮面を被る事で、日常の世界から特別な世界へ突入するとも言われています。この土偶には、そうした縄文人の精神文化が映し出されているのかもしれません。

展示:茅野市尖石縄文考古館

個性的な国宝土偶④:じゃがいも畑から発見された「中空土偶」

ー 約4000年前 縄文時代後期 北海道函館市著保内野(ちょぼないの)遺跡出土

中空土偶「中空土偶」 出典:北海道デジタルミュージアム

高さ41.5cm。愛称は茅空(カックウ)。 逆三角形のプロポーションの中空土偶は、その名の通り内部が中空(空洞)になっていて、現存する中空土偶の中で最大の大きさを誇ります。

じゃがいも畑で農作業中の女性によって、頭部の一部と両腕が失われた状態で発見されました。

「中空土偶」の注目ポイント

逆三角形のすらりとしたプロポーションで、球形の頭をやや上に向けて直立しています。顔面のパーツは細い粘土紐を貼り付けて表現し、顎には髭のような表現があり、一部には黒漆が見られます。

頭頂部には小さな突起があり、2つの大きな穴が開いています。この頭部とそっくりなものが東京で発見されており、この造形は海を超え本州に伝わったと考えられています。

上半身は三角・楕円・雲形などの文様がバランスよく施され、全身は丁寧に磨かれ鈍い光を放っています。また両足は管のようなもので繋がれていて、体全体の空洞と繋がっています。それらは非常に薄く作られており、最も薄い部分では2mmほどしかありません。粘土の使用量を抑え、乾燥や焼成時の破損を防ぐ工夫が存分に凝らされていると考えられています。

神秘的な造形は当時の最高峰の製作技術によって可能になったと言えるようです。

展示:函館市縄文文化交流センター

個性的な国宝土偶⑤:祈り、それともお産?「合掌土偶」

ー 縄文時代後期(約4000年前)青森県八戸市風張1遺跡出土

合掌土偶「合掌土偶」, Public domain, via Wikimedia Commons.

高さ19.8㎝。祈りを捧げているような姿から「合掌土偶」と呼ばれるようになりました。竪穴住居跡の片隅から、左足を欠き、横たわった状態で発見されました。左足は同じ住居内の2.5m離れた場所から見つかりました。

「合掌土偶」の注目ポイント

このように何らかのしぐさを表わしている土偶は「ポーズ土偶」と総称され、腰を折り曲げたり胡坐をかくようなもの、この土偶のように立膝で座る姿勢のものが、東北地方で複数出土しています。

土偶には4つの部位に割れていた痕があり、その部分は当時接着剤として使われていたアスファルトで修復されていました。祭祀などで故意に壊された後に改めて接合されたとみられ、「蘇り」などを意味しているのではないかと考えられています。

円板状の顔はやや顎を前に出したように付き、頭部は結った髪か被り物を表わしているようです。

胴体は扁平な作りで、胸には小さな乳房、下腹部には正中線が描かれ、股間には女性器が表現されています。当時の出産の姿を表しているとも言われています。

展示:八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館

最後に

火焔型土器の力強いデザインと5体の土偶が持つ静かなる祈りの造形は、縄文時代の人々の願いが込められた宝物です。単なる「古代の遺物」としてではなく、現代にも通じる縄文の造形美に是非触れてみてください。

◆写真一覧

「火焔型土器」国宝指定番号1 出典:Wikimedia Commons
「火焔型土器」 国宝指定番号14 出典:Wikimedia Commons
「縄文のビーナス」筆者撮影
「縄文の女神」 出典:Wikimedia Commons
「仮面の女神」筆者撮影
「中空土偶」 出典:北海道デジタルミュージアム
「合掌土偶」 出典:Wikimedia Commons

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のんてり

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縄文ライター。10数年前に偶然出会った縄文土器の美しさに魅了され、以来全国の博物館や遺跡を廻っています。堅苦しく思われがちな縄文時代の土器や土偶、装飾品などを、ちょっと斜めから、アートの1つとして楽しんでいただけるように紹介していきます。

縄文ライター。10数年前に偶然出会った縄文土器の美しさに魅了され、以来全国の博物館や遺跡を廻っています。堅苦しく思われがちな縄文時代の土器や土偶、装飾品などを、ちょっと斜めから、アートの1つとして楽しんでいただけるように紹介していきます。

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