STUDY
2026.8.7
名画の猫たちで思わず笑顔に。かわいい、りりしい、おちゃめ!
猫は昔から多くの画家たちを魅了してきました。ふわふわの子猫、凛とした佇まい、思わず笑ってしまうユニークな姿まで、その描かれ方は実にさまざまです。
今回は見ているだけで癒やされる作品から「こんなところにも猫が!」と驚く一枚まで、名画の猫たちをご紹介します。お気に入りの一匹を探す気分で、アートの世界をのぞいてみましょう。
目次
見ているだけで癒やされる。愛らしい子猫たち
子猫の無邪気なしぐさは、時代を超えて人の心を和ませてきました。まずは思わず「かわいい」と声が漏れてしまうような、子猫たちが登場する作品をご紹介します。
カール・ライヒェルト 「遊び盛りの子猫たち」
『遊び盛りの子猫たち』(カール・ライヒェルト), Public domain, via Wikimedia Commons.
オーストリアの画家カール・ライヒェルトは、犬や猫をはじめとする動物を数多く描いたことで知られています。
中でも「遊び盛りの子猫たち」は、白黒模様の三匹の子猫がデスクの上で元気いっぱいに遊ぶ姿が描かれた、思わず笑顔になってしまう作品です。同じ毛色でよく似た顔をしていることから、三匹はおそらく兄弟でしょう。
子猫たちの澄んだ青い瞳や、ふんわりとした毛並みは細部まで丁寧に描かれており、今にもこちらへ駆け寄ってきそうなほど生き生きとした存在感があります。
一方、デスクの上にはトランプやサイコロ、ボールがあちこちに散らばり、遊びに夢中になった子猫たちが大騒ぎした様子が目に浮かびます。
ヘンリエッタ・ロナー=クニップ「宝石好き」
『宝石好き』(ヘンリエッタ・ロナー=クニップ), Public domain, via Wikimedia Commons.
オランダ生まれの画家、ヘンリエッタ・ロナー=クニップは、犬や猫を題材にした作品を数多く残した女性画家です。『宝石好き』でも母猫と五匹の子猫の微笑ましい時間が丁寧に描かれています。
本作の主役は白黒や茶色、キジ柄など、それぞれ異なる毛色の子猫たち。箱の中の一匹は、箱の外にいる黒い子猫とネックレスを挟んでじゃれ合い、夢中になって遊ぶ様子が伝わってきます。
また母猫の手前では、仰向けになった子猫がバングルをおもちゃ代わりにしており、子猫らしい無邪気な姿です。そんな子猫たちを、母猫は少し離れた場所から静かに見守っています。いたずらを止めるでもなく、優しく見守る姿からは、親子ならではの穏やかな空気が感じられます。
人と猫が紡ぐ、穏やかなひととき
猫はときに人の暮らしに寄り添い、何気ない日常をより豊かなものにしてくれます。続いては、猫と人との優しい関係が伝わる名画をご紹介します。
アルベール・アンカー 「猫と遊ぶ少女」
『猫と遊ぶ少女』(アルベール・アンカー), Public domain, via Wikimedia Commons.
スイスの画家アルベール・アンカーは、19世紀のスイスの村で暮らす人々や子どもたちの日常を温かく描いた「スイスの国民画家」でもあります。静物画に優れた才能を発揮したアンカーですが『猫と遊ぶ少女』でも、何気ない日常を美しく、そして温かく描いています。
本作の主役は椅子に腰掛けて裁縫をする少女と、その膝の上にいる三毛猫です。少女が手にする糸に興味を引かれたのか、猫は夢中になってじゃれつき、裁縫どころではなさそうな様子。猫と暮らしたことがある人なら「こういうこと、あるある」と思わず共感してしまうのではないでしょうか。
特に目を引くのは、こちらへ向けられたピンクの肉球です。前足を伸ばして糸をつかもうとする姿は愛らしく、見ているだけで笑顔になります。
ピエール=オーギュスト・ルノワール 「猫を抱く女」
『猫を抱く女』(ルノワール), Public domain, via Wikimedia Commons.
印象派を代表するフランスの画家ピエール=オーギュスト・ルノワールは、温かな空気感のある作風で見る人を穏やかにさせる絵を多く残しました。『猫を抱く女』でも、その持ち味が存分に生かされています。
柔らかな光に包まれた女性は、ほんのりと頬を赤らめながら、腕の中の猫へ視線を向けています。一方で、抱えられた猫は観念したように身を預けつつも、まだ少し体をこわばらせているようにも見え、その微妙な緊張感が猫らしさを感じさせます。
女性の腕に包まれる猫は逃げるでもなく受け入れるでもない絶妙な距離感が描かれているのも印象的です。
和の世界で暮らす猫たち
西洋画に登場することが多い猫ですが、日本画でも猫が主役になることは珍しくありません。和の世界の猫たちはどこか静かで、凛とした佇まいを見せてくれます。
高橋松亭 「白猫」
『白猫』(高橋松亭), Public domain, via Wikimedia Commons.
高橋松亭は明治から昭和にかけて活躍し、衰退しつつあった浮世絵を近代的な芸術として蘇らせた画家です。繊細な線と柔らかな色づかいで、日本の暮らしや自然を多く描きました。
『白猫』では、丸く身を縮めるようにして横たわる一匹の白猫が描かれています。頭には茶色の模様が入り、白い体とのコントラストが印象的です。首元には赤地に白い斑点の入った風呂敷のような布が結ばれており、どこか品のある佇まいとなっていす。
小さく引き締まった瞳は、まさに猫らしい鋭さを残しつつ、何気なくどこか遠くを見つめているようでもあります。静かな空気の中で「視線を感じたと思ったらそこにいた」といった出来事を描いたような、ミステリアスさが魅力の一枚です。
小原古邨 「金魚鉢に猫」
『金魚鉢に猫』(小原古邨), Public domain, via Wikimedia Commons.
小原古邨は明治から昭和にかけて活躍した日本画家で、鳥や動物の姿を繊細な感性で描いたことで知られています。『金魚鉢に猫』で描かれているのは、金魚鉢の中を泳ぐ美しい金魚をじっと見つめる白黒の猫の姿です。
首元には小さな鈴が描かれていることから、おそらくこの猫は飼い猫で、自宅の金魚鉢を前にしているのでしょう。飼い主がほんの少し目を離した隙を狙っているのか、それともただ興味を持って様子をうかがっているだけなのか、物語の想像が広がります。
前傾姿勢で金魚に近づく姿は真剣そのものですが、どこかいたずらっ子のような雰囲気も漂い、猫の狩猟本能を感じられる作品です。
あれ?こんなところにも猫!
名画をじっくり眺めていると、主役とは別の場所に、ふと猫の姿が紛れ込んでいることがあります。奥で気ままに佇んでいたり、隅で何気なく存在していたりと、その登場の仕方はさまざまです。
ピエール・ボナール「欄干の猫」
『欄干の猫』または『手すりの上の猫』(ピエール・ボナール), Public domain, via Wikimedia Commons.
ピエール・ボナールは、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの画家です。日常の一瞬や情景を独特の感覚で切り取る表現方法が特徴で、何気ない場面にも物語性を感じさせます。
『欄干の猫』では屋敷のバルコニー、あるいは庭先のような場所が描かれています。欄干の上には二匹の猫が器用に乗っており、まるでバランスを楽しんでいるかのようです。その表情までははっきりと描かれておらず、猫たちの気まぐれな日常だけが伝わってきます。
猫たちのそばには花の生けられた花瓶も置かれており、少しでもぶつかれば倒れてしまいそうですが、不思議と全体の雰囲気は落ち着いています。そのすぐ手前にはアフリカ系の女性が描かれていますが、猫たちの動きに気を取られる様子もなく、描かれた光景は日常の一部なのかもしれません。
イーヴリン・ド・モーガン 「恋の秘薬」
『恋の秘薬』(イーヴリン・ド・モーガン), Public domain, via Wikimedia Commons.
イーヴリン・ド・モーガンは、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したイギリスの女性画家で、神話や寓話を題材にした幻想的な世界観で知られています。
『恋の秘薬』では豪華な家具や書物、道具に囲まれた光あふれる書斎の中で、一人の女性が小瓶からゴブレットへ液体を注いでいます。まさにタイトルにある「恋の秘薬」を調合している最中のようです。その姿からは学者のような知性と、魔女のような神秘性の両方が感じられます。
そんな彼女の足元には、一匹の黒猫が寄り添うように座り、黄色い瞳でこちらをじっと見つめています。まるで彼女を守る相棒のようで、猫も不思議な力を持っているのかもしれません。謎に満ちた空間の中で、見た者の好奇心を湧かせる作品です。
遊び心あふれる猫の世界
猫はそのままでも可愛らしく魅力的ですが、ときには人間のような振る舞いや姿で描かれることもあります。最後は、猫のユーモラスな一面を楽しめる作品をご紹介します。
アーサー・ヘイヤー 「てんとう虫と猫」
『てんとう虫と猫』, Public domain, via Wikimedia Commons.
アーサー・ヘイヤーはドイツに生まれ、ハンガリーを拠点に活動した画家です。数多くの猫を描いたことから「猫の画家」とも呼ばれ、ふんわりとした毛並みや、猫ならではの繊細な表情を写実的に表現しました。作品には、優雅な毛並みを持つターキッシュアンゴラと思われる猫がたびたび登場します。
『てんとう虫と猫』に描かれているのも、長く美しい白い毛に包まれた一匹の猫です。目の前に現れた小さなてんとう虫が気になるのか、前足をそっと伸ばし、不思議そうに見つめています。その姿からは「これは何だろう?」と考えているような好奇心が伝わってきます。
見慣れないものを前に、思わず手を伸ばしてしまう姿は、幼い人間の子どものようです。猫の無邪気な行動が愛らしく、ヘイヤーが猫を愛していたこともうかがえます。小さなてんとう虫と一匹の猫の出会いが描かれた、心温まる作品です。
ルイス・ウェイン 「メガネをかけて仕事中の猫」
ルイス・ウェインは、擬人化した猫の作品で有名なイギリスの画家・イラストレーターです。まるで人間のような猫を主役としたユーモラスな作品は、多くの人々に愛されてきました。
『メガネをかけて仕事中の猫』に登場するのは、タイトルの通り眼鏡をかけた毛足の長い猫。ペンを手に机へ向かい、仕事に取りかかろうとしているような姿が描かれています。ふと横へ視線を向ける表情は「今日はどんなご依頼ですか?」「今、やっています」とでも喋り出しそうです。
人間のようなポーズでありながら、ふわりとした毛並みや猫らしい顔立ちはそのまま残されているため、不思議な可愛らしさが生まれています。「もし猫が本当に仕事をしていたら?」という空想を絵にしたような作品です。
【まとめ】猫をきっかけに、名画の世界をのぞいてみよう
猫は主役として描かれるだけでなく、脇役としても登場することも多く、思いがけない場所で猫と出会える名画が数多くあります。画家ごとに「かわいい」「気高い」「おちゃめ」など描き方が異なるため、その違いに注目しながら鑑賞するのも面白いでしょう。
ぜひお気に入りの一匹を探しながら、アートの世界を楽しんでみてください。
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アートの美しさや面白さを身近な視点で伝えます。お気に入りの絵画はミレーの『オフィーリア』。フリーランスのライターとして幅広いジャンルで執筆経験あり。趣味は観劇と洋画/海外ドラマ鑑賞。ヴァイオリンを習っています。
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