STUDY
2022.3.23
【ヴァチカン市国】ラファエロ『アテネの学堂』鑑賞を楽しむポイント3つ
ラファエロの代表作ともいうべき作品『アテネの学堂』は、ヴァチカン市国内部にあるヴァチカン宮殿の壁に描かれたフレスコ画です。
Raphael, Public domain, via Wikimedia Commons
今回の記事では、現地ローマの大学院で美術史を専攻している筆者が『アテネの学堂』を楽しむためのポイントを3つに絞って紹介します!
『アテネの学堂』を楽しむ方法①:実在する人物の顔
Raphael, Public domain, via Wikimedia Commons
『アテネの学堂』はラファエロが1508年から1509年にかけて、教皇ジュリアス2世から依頼を受けて制作した一連の壁画作品の1つです。
ヴァチカン宮殿内の部屋『ラファエロの間(Stanze di Raffaello)』と呼ばれる4つの部屋のうち、『署名の間 (Stanza della Segnatura)」にあるフレスコ画です。
ヴァチカン宮殿内の壁画の中でも最も知名度の高い作品の1つで、ヴァチカン美術館のチケットにも印刷されています。
作品のテーマは、『古代アテネの哲学者』です。
ラファエロが活躍したルネッサンス美術の根本は、中世的・キリスト教的な美術観に「古代的要素」を盛り込むことでした。
つまり、この作品は技術面だけでなくテーマとしてもルネッサンス盛期の作品の特徴を表していることになります。
描かれている人物は、プラトン、ソクラテスなど偉大な古代ギリシャの哲学者たちですが、実は彼らの顔は同時代の偉大な芸術家を投影しています。
例えば、作品の中心にいる白ひげを生やしたピンクのマントの男性は、哲学者プラトンですが、レオナルド・ダ・ヴィンチをモデルにして描いたと言われています。
その男性の足元に四角い机を出して考え事をしている男性は、哲学者ヘラクレイトスであり、モデルはミケランジェロとされています。
描かれている人物像のモデルを特定することは容易ではなく、今も議論が続いています。
しかし、ラファエロが同時代の芸術家への敬意をこめて作品に盛り込んだと思うと、遠い古代ギリシャのテーマもなんだか身近に感じられますね。
『アテネの学堂』を楽しむ方法②:遠近法と建造物
Raphael, Public domain, via Wikimedia Commons
『アテネの学堂』はルネッサンス盛期の作品です。
ルネッサンス芸術における最大の発明である「遠近法」は、これまでの平面的でリアリティに欠ける中世美術を劇的に変化させるものでした。
ラファエロの作品においても、全体構造の中に建造物を含めることで豊かな奥行きを表現しています。
偉大な古代ギリシャの哲学者が集う場所としてふさわしい白亜の神殿として、調和のとれた荘厳な雰囲気を絵画に加えていますね。
ラファエロは作品を手掛けるにあたり、同じ大きさの下書きをおこなって構図を決めたと言われています。
彼の短い人生の晩年においては、ラファエロは自分自身でも建築家としてローマ市内の実際の建造物の設計を担っていました。
しかし、この作品を手掛けた時点では建築家としての経験はなく、描かれた建築は理想化された美しさを追求した構造となっています。
『アテネの学堂』を楽しむ方法③:ラファエロ自画像
Raphael, Public domain, via Wikimedia Commons
『アテネの学堂』の中には、著名な同時代の芸術家の肖像画に紛れ、ラファエロ自身の自画像も含まれています。
フレスコ画向かって右下、黒い服と黒い帽子を身に着け、こちらをひょこっと覗いているのが彼です。
ラファエロはこの他にもいくつか自画像を残していますが、他の作品と同じように優しく柔和な雰囲気を感じ取ることができます。
たくさんの人が描かれているので見つけるのは大変かもしれませんが、他の登場人物とは異なり、ラファエロの自画像は鑑賞者の方を見つめています。
作品を直接見る機会があれば、ラファエロがどこにいるか探してみてくださいね。
ルネッサンスの最高傑作『アテネの学堂』
ラファエロが残した数々の名作の中でも特に有名な『アテネの学堂』は、古代文化に対する憧れと、同世代の芸術家たちへの彼の敬意が表現された作品でもあります。
背景の空の美しさと建築物のコントラストは、この『学堂』の知的で高尚な雰囲気を伝えてくれます。
ぜひ、登場人物ひとりひとりの表情や動きにも注目してみてください。
以上、ラファエロ『アテネの学堂』を楽しむためのポイント3つでした。
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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