STUDY
2022.4.27
ミケランジェロの建築作品?ルネッサンスの巨匠が手掛けた建築物を紹介!
ルネッサンスの巨匠ミケランジェロは、本業の彫刻家としての活躍だけでなく、多くの絵画作品を手掛けたことは有名な話です。
システィーナ礼拝堂をはじめとするルネッサンスの代表的な絵画を残したミケランジェロですが、生涯「彫刻家」としてのアイデンティティを貫き通したと言われています。
Gary Ullah from UK, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons
しかし、実はミケランジェロは画家としてだけでなく、建築家としての側面も持っていたことはあまり知られていません。
この記事では、ミケランジェロがデザインや設計を手掛けた建築作品を紹介します。
サン・ピエトロ大聖堂
Ludmiła Pilecka, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons
ヴァチカン市国にあるカトリックの総本山サン・ピエトロ大聖堂は、実はミケランジェロの設計図に基づいて建てられた建築物です。
サン・ピエトロ大聖堂の再建が計画されていたとき、同時代の名だたる建築家や芸術家が設計案を出していたそうです。
その中には、ラファエロやジュリアーノ・ダ・サンガッロも含まれていました。
計画の途中でパトロンである教皇が変わったことや、様々な当時の建設技術など様々な事情から計画は何度も変更されました。
最終的にローマ・ルネッサンスを支えた計画の途中で死去した建築家ブラマンテの設計図を基に、ミケランジェロが大聖堂の設計を手掛けることに。
ブラマンテは生前、ミケランジェロとライバル関係にあり決して仲はよくありませんでした。
しかし、オリジナルの設計図を見たミケランジェロは、ブラマンテの古代建築への深い研究に対する賞賛の言葉を残したそうです。
サン・ピエトロ大聖堂の最大の特徴であるクーポラ(※編集部注:ドーム形の屋根部分のこと)は、42mにものぼり、ローマの街の至るところから見つけることができます。
ロレンツォ・メディチ図書館
Miguel Hermoso Cuesta, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
フィレンツェにあるロレンツォ・メディチ図書館も、ミケランジェロが設計した建築作品の1つです。
ルネッサンス期には、古代ギリシア・ローマで用いられていた建築様式を再び用いる動きが加速しました。
しかし、同じルネッサンス期を生きた芸術家たちの間でも、古代の建築様式に対するアプローチは少しずつ違いがありました。
ミケランジェロが残したロレンツォ・メディチ図書館は、ミケランジェロの古代建築の「応用」を見ることのできる良い例です。
巨大な柱を大体に設置し、古代の要素を取り入れつつも前例のない革新的な構造をしており、ミケランジェロのあくなき美への探求心を感じることができます。
カンピドリオ広場
Cezar Suceveanu, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
ローマのカンピドリオ広場も、実はミケランジェロが設計した建造物です。
古代ローマの時代から政治の中心として重要な役割を担っていた広場の再建は、当時のローマの都市開発にとって重要な意味を持っていました。
しかし中世以降の改築の影響もあり、再建前のカンピドリオ広場はまとまりのない雑然とした場所になってしまいました。
そこでミケランジェロは、広場と建物を調和させ、古代のように権威のある空間を作ることを目指します。
結果、正面奥にある市庁舎を中心に、両隣にシンメトリーの宮殿建築(現在はカピトリーニ美術館)を造り、広場の床の楕円模様で統一感のある広場を構想しました。
ミケランジェロは広場の建築よりも前に亡くなってしまいましたが、その後彼の設計図を引き継いだ構成の建築家がカンピドリオ広場を完成されました。
天才の残した建築は必見!
ミケランジェロと言えばシスティーナ礼拝堂やピエタなどの作品が注目されますが、実はフィレンツェやローマにはたくさんの建築作品が残されています。
この時代には、芸術家は1つのジャンルに縛られることなくマルチに活躍することもありましたが、それでも彼の多才さは驚くべきものです。
絵画や彫刻だけでなく、ぜひ建築作品にも注目してみてくださいね。
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イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
イタリア・ローマ在住美術ライター。2024年にローマ第二大学で美術史の修士を取得し、2026年からは2つめの修士・文化遺産法学に挑戦。専攻は中世キリスト教美術。イタリアの前はスペインに住んでいました。趣味は旅行で、訪れた国は45カ国以上。世界中の行く先々で美術館や宗教建築を巡っています。
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