INTERVIEW
2026.6.16
【大阪中之島美術館】フェルメール《真珠の耳飾りの少女》が大阪へ。“最後の来日”になるかもしれない名画
駐日オランダ王国大使館で行われた記者発表会に参加しました。発表されたのは、ヨハネス・フェルメールの名画《真珠の耳飾りの少女》の再来日です。会場が大使館公邸だったこともあり、この作品は単なる“有名絵画”としてではなく、日本とオランダの長い交流を象徴する存在として語られていました。
目次
駐日オランダ王国大使館公邸で発表された“奇跡の再来日”
展覧会名は「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日」。会場は大阪中之島美術館です。会期は2026年8月21日(金)から9月27日(日)までで、会期中無休、全日程日時指定制で開催されます。《真珠の耳飾りの少女》が日本で公開されるのは14年ぶり。今回の来日は、オランダ・ハーグにあるマウリッツハイス美術館の改修工事による臨時休館に伴って実現しました。
マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague
真珠よりも印象的な「彼女のまなざし」
記者発表会で印象的だったのは、駐⽇オランダ王国⼤使館 ヒルス ベスホー・プルッフ大使の言葉です。大使は、この絵で最も大切なのは何かと問いかけたうえで、真珠ではなく「彼女のまなざし」ではないかと語りました。少女は、何か遠くのものに驚いているように見えます。フェルメールがこの絵を描いた17世紀には、すでにオランダと日本の交流が始まっていたことに触れながら、大使は「彼女はもしかすると日本を見つめていたのではないか」と、詩的に想像を広げていました。
その言葉を聞くと、《真珠の耳飾りの少女》は少し違って見えてきます。青いターバン、大きな真珠、半ば開いた唇。そして、こちらを振り返るまなざし。そこには一枚の名画を超えて、400年以上続く日蘭交流の時間まで重なっているように感じられます。
“オランダのモナ・リザ”と呼ばれる理由
《真珠の耳飾りの少女》は、「オランダのモナ・リザ」とも称されるフェルメールの代表作です。暗い背景に浮かび上がる少女の顔、異国風の青いターバン、耳元に輝く大きな真珠が、見る者を一瞬で引き込みます。本作は特定の人物の肖像ではなく、性格やタイプを表す「トローニー」と呼ばれるジャンルに属する作品です。理想化された表情と異国風の装いが、時代を超えた神秘性をまとっています。
本展の日本側監修者である宮下規久朗教授も、記者発表会でこの作品の魅力を「一瞬の表情」にあると解説しました。《モナ・リザ》が永遠を見つめるような普遍性を感じさせるのに対し、《真珠の耳飾りの少女》は、ふと振り向いた瞬間をとらえたような生々しさがあります。半開きの唇、瞳や真珠に置かれた小さなハイライト。それらが、見る人を引き込む大きな要素になっているといいます。
ヨハネス・フェルメール《真珠の耳飾りの少女》1665年頃 油彩、カンヴァス 44.5×39.0 cm マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague
《青いターバンの少女》から《真珠の耳飾りの少女》へ
宮下教授の解説で興味深かったのは、作品名の変化についての話です。1984年に初めて日本で紹介された際、この作品は《青いターバンの少女》と呼ばれていました。その後、トレイシー・シュヴァリエの小説『真珠の耳飾りの少女』、さらにスカーレット・ヨハンソン主演の映画によって、現在のタイトルが広く定着していきました。
タイトルが変わることで、私たちの視線もまた変わります。青いターバンを見るのか、真珠を見るのか、それとも少女の表情を見るのか。名画の受け止められ方そのものが、時代とともに変化してきたことも、この作品の面白さです。
フェルメールの出発点を示す初期作品も来日
本展では、《真珠の耳飾りの少女》に加え、フェルメール最初期の貴重な作品《ディアナとニンフたち》も出品されます。現在私たちが思い浮かべるフェルメールといえば、静かな室内に差し込む光、手紙を読む女性、楽器を奏でる人物などが印象的です。
しかし、画家になった当初のフェルメールは、聖書や古典神話に基づく歴史画を描いていました。《ディアナとニンフたち》は、風俗画で名声を確立する以前のフェルメールを知るうえで重要な一作となります。
ヨハネス・フェルメール《ディアナとニンフたち》1653-1654年頃 油彩、カンヴァス 97.8×104.6 cm マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague
さらに、マウリッツハイス美術館所蔵の12作品を通して、17世紀オランダ絵画の豊かな世界も紹介されます。フェルメール作品2点に加え、レンブラント・ファン・レイン《笑う男》、ヤン・ステーン《老いが歌えば若きが笛吹く》など10点を展示。
歴史画、肖像画、トローニー、風俗画、教会内景画、風景画、静物画といったジャンルをめぐりながら、フェルメールだけではないオランダ絵画の奥行きに触れられる構成です。
レンブラント・ファン・レイン《笑う男》1629-1630年頃 油彩、金箔で覆った銅 15.3 x 12.2 cm マウリッツハイス美術館 © Mauritshuis, The Hague
大型映像でフェルメールの“光”を体験
展示では、大型スクリーンによる映像体験も見どころの一つです。全長20メートルにもおよぶ映像で、フェルメールの生涯と作品に描かれたモチーフをたどり、世界各地に点在するフェルメール作品を実際の比率に基づいて紹介します。
さらに、通常では見ることのできない拡大投影によって、《真珠の耳飾りの少女》の魅力に迫ります。実物を見る前に、フェルメールの“光”の世界へ入り込むような体験ができそうです。
チケットは全日程日時指定制
チケットは全日程日時指定制です。観覧料は一般3,000円、高大生1,500円、小中生500円、未就学児は無料。当日券は、前日までの販売状況に応じて空きがある場合のみ、大阪中之島美術館館内券売機で販売されます。人気展になることが予想されるため、来場を考えている人は、早めに販売スケジュールを確認しておきたいところです。
区分料金
一般:3,000円
高大生:1,500円
小中生:500円
未就学児:無料
通常券のほか、夜間に特別鑑賞できる「tabiwaスペシャルツアー」、マウリッツハイス美術館館長講演会セット券、親子向けのみどころレクチャーセット券なども用意されています。チケットぴあ先行抽選では、通常券や各種セット券を抽選販売。tabiwa先行販売、一般販売は来場期間ごとに順次行われます。
その他のチケット
チケットぴあ先行抽選(通常券、館長講演会セット券、親子向けレクチャーセット券):
6月1日(月)12:00〜6月7日(日)23:59
tabiwa先行販売全会期の通常券を先行販売:
6月15日(月)12:00〜 ※売り切れ次第終了
第1期一般販売(8月21日(金)〜8月31日(月)来場分):
7月15日(水)12:00〜 ※売り切れ次第終了
第2期一般販売(9月1日(火)〜9月13日(日)来場分):
8月5日(水)12:00〜 ※売り切れ次第終了
第3期一般販売(9月14日(月)〜9月27日(日)来場分):
8月26日(水)12:00〜 ※売り切れ次第終了
詳しくは公式サイトのチケット販売のページをご覧ください。
【チケット】フェルメール《真珠の耳飾りの少女》
ミッフィーや『葬送のフリーレン』とのコラボも
また、本展ではコラボレーション企画も充実しています。フェルメールと同じオランダ生まれの絵本の主人公「ミッフィー」がアンバサダーに決定し、《真珠の耳飾りの少女》の姿になったオリジナルぬいぐるみやマスコットも登場します。
さらに、山田鐘人さん原作、アベツカサさん作画の漫画『葬送のフリーレン』とのコラボレーションも決定。アベツカサさんが本展のためだけに、《真珠の耳飾りの少女》とフリーレンが重なりあう特別なイラストを描き下ろしました。
『葬送のフリーレン』描き下ろしイラスト ©山田鐘人・アベツカサ/小学館
大阪で向き合う、忘れがたいまなざし
マウリッツハイス美術館のマルティネ・ゴッセリンク館長は、この「少女」の旅を、日本の人々に作品を届けられる「おそらく最後となるであろう特別な機会」と語っています。だからこそ、今回の展覧会はただの名画来日ではありません。400年近い時を超えてこちらを見つめる少女と、いま大阪で向き合うことができるかもしれない、特別な機会なのです。
彼女は何を見ているのでしょうか。なぜ振り返ったのでしょうか。その答えは、絵の中にはっきりとは描かれていません。ヒルス ベスホー・プルッフ大使が語ったように、そのまなざしの先に遠い国への想像を重ねてもよいでしょう。宮下教授が指摘したように、唇や瞳の光から一瞬のドラマを読み取ってもよいでしょう。
見る人それぞれが物語を投影できるからこそ、《真珠の耳飾りの少女》は何度でも私たちを引き寄せます。大阪での再会は、フェルメールという画家の魅力をあらためて感じる、忘れがたい時間になるはずです。
開催概要
フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日
大阪中之島美術館 5階展示室
開催期間:2026年8月21日(金)~ 2026年9月27日(日)
所在地:〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-1
アクセス:
京阪 中之島線 渡辺橋駅(2番出口)より南西へ徒歩約5分
Osaka Metro 四つ橋線 肥後橋駅(4番出口)より西へ徒歩約10分
JR 大阪環状線 福島駅/東西線 新福島駅(2番出口)より南へ徒歩約10分
阪神 福島駅より南へ徒歩約10分
阪急 大阪梅田駅より南西へ徒歩約20分
開館時間:午前9時30分~午後5時 (入場は午後4時30分まで)
※8月28日、9月4日、9月11日、9月18日~9月27日は午後8時まで(入場は午後7時30分まで)
休館日:会期中無休
料金:
一般 3,000円、高大生 1,500円、小中生 500円、未就学児 無料
公式サイト:フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展
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東京美術館巡りというSNSアカウントの中の人をやっております。サラリーマンのかたわら、お休みの日には、美術館巡りにいそしんでおります。もともとミーハーなので、国内外の古典的なオールドマスターが好きでしたが、去年あたりから現代アートもたしなむようになり、今が割と雑食色が強いです。
東京美術館巡りというSNSアカウントの中の人をやっております。サラリーマンのかたわら、お休みの日には、美術館巡りにいそしんでおります。もともとミーハーなので、国内外の古典的なオールドマスターが好きでしたが、去年あたりから現代アートもたしなむようになり、今が割と雑食色が強いです。
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