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2026.8.14
【2026年8月のおすすめ展覧会5選】華麗なる王妃のスタイルから、東アジアのやきもの、琉球の民藝まで。この夏、東京と近郊で出会う美術と工芸。
夏休みシーズン、遠方への旅行もいいですが、今回はあえて東京と近郊で楽しめる展覧会をピックアップしました。初公開のマリー・アントワネットゆかりの品々から、日本屈指の土牛コレクション、東アジアのやきものをめぐる旅、沖縄の民藝、そして古典『方丈記』を建築の視点から読み解く展覧会まで、ジャンルも切り口も多彩なラインナップです。
注目の展覧会をチェックして、8月のお出かけの参考にしてみてください。
目次
王妃が生んだ「スタイル」、250年の時を超えて|横浜美術館
コートドレスのマリー・アントワネット フランソワ=ユベール・ドルーエ 1773年 油彩、カンヴァス 63.5 x 52 cm ヴィクトリア&アルバート博物館蔵 ©Victoria and Albert Museum, London
歴史上もっともファッショナブルな王妃とも称され、人々の注目を集めたマリー・アントワネット(1755〜1793年)。彼女がまとったドレスや宝飾は、18世紀から現代にいたるまで、ファッションやデザイン、映画にまで影響を与え続けてきました。その足跡をたどる大型展『マリー・アントワネット・スタイル』が、横浜美術館で開催されます。
見どころは大きく4つ。まず、ドレスやジュエリー、家具調度品、絵画など約200点により、18世紀後半の宮廷ファッションから2025年のオートクチュールまで、250年にわたるスタイルの展開を紹介します。多彩なドレスや装身具が一堂に会し、華やかな展示風景が広がる点も楽しみのひとつです。
そして「首飾り事件」に由来すると伝わるダイヤモンドなど、マリー・アントワネット旧蔵品やゆかりの品をはじめ、日本初公開となる品々が多数出展されることもポイント。さらに、V&A所蔵品に加え、国内で所蔵される優品約20点も展示に加わり、日本オリジナルの構成となっています。なお本展はロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)が企画した世界巡回展で、国際巡回の最初の開催地である横浜美術館が、日本で唯一の会場となります。
実はマリー・アントワネットは日本の美術や意匠にも並々ならぬ関心を寄せており、なかでも漆工品を好んで蒐集していたことで知られます。王妃と日本との知られざる縁もまた、多くの作品を通じて浮かび上がってくることでしょう。
ローブ・ア・ラ・フランセーズ フランス製 1760年代(1770年代に加工) 絹、光沢をつけた麻 ヴィクトリア&アルバート博物館蔵 ©Victoria and Albert Museum, London
『マリー・アントワネット・スタイル』 横浜美術館
開催期間:2026年8月1日(土)~11月23日(月・祝)
所在地:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
開館時間:10:00〜18:00(11月21日・22日は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日:木曜日(8月13日、9月24日、11月19日は開館)
観覧料:一般2,500円、大学生1,600円、中学・高校生1,000円、小学生以下無料。
特設サイト:『マリー・アントワネット・スタイル』
山﨑種二と奥村土牛、50年の親交が生んだ日本屈指のコレクション|山種美術館
奥村土牛 《海》 1981(昭和56)年 紙本・彩色 山種美術館
日本初の日本画専門美術館として1966年に開館し、本年60周年を迎える山種美術館。これを記念する特別展第2弾として、同館とゆかりの深い日本画家・奥村土牛(1889〜1990年)の画業をたどる『奥村土牛―名作でたどる100年のあゆみ―』が開かれます。
同館創立者の山﨑種二は、土牛がまだ画業の初期にあった頃から50年以上にわたって深い親交を結びました。その縁もあって、山種美術館が所蔵する土牛作品は全135点。質・量ともに日本最高レベルの土牛コレクションとして知られています。
本展では、その所蔵品の中から厳選した優品約60点を公開。瀬戸内海の渦潮を描いた《鳴門》、京都・醍醐寺のしだれ桜に「極美」を感じて手がけた《醍醐》などが一堂に会します。また土牛は生涯にわたって院展で活躍した画家でもあり、その関連作品全35点(秋の院展32点、春の院展2点、同人展1点)が全点展示されます。初期から最晩年まで、画業の全貌をたどることができる、絶好の機会といえるでしょう。
一方で、土牛が温かいまなざしを向けた兎や花などの作品も並び、誰もが心なごむひとときを味わえるのも魅力です。さらに、土牛から山﨑種二へ宛てた絵入り書簡や、かつて館内で開かれた茶会での記念品の原画といった資料もあわせて紹介され、二人の親交の深さを物語ります。
※文中の作品はすべて山種美術館蔵
奥村土牛 《兎》 1936(昭和11)年 絹本・彩色 山種美術館
【開館60周年記念特別展2】『奥村土牛 ―名作でたどる100年のあゆみ―』 山種美術館
開催期間:2026年8月8日(土)~10月4日(日)
所在地:東京都渋谷区広尾3-12-36
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は16:30まで
休館日:月曜日[9/21(月・祝)、9/22(火・祝)、9/23(水・祝)は開館、9/24(木)は休館]
入館料:一般1,500円、[夏の学割]大学生・高校生500円、中学生以下無料。
公式サイト:山種美術館
やきもので巡る東アジア、名品100件の旅|根津美術館
重要文化財《五彩宝相華文瓶》 景徳鎮窯 中国・明時代 16世紀 根津美術館蔵
やきものは、食器や貯蔵具として人々の生活に寄り添いながら、実用を超えた美へと展開してきました。そうした歴史を東アジアという広い視野からたどる展覧会『やきもの名品紀行-中国・日本・朝鮮半島-』が、東京・南青山の根津美術館で開催されます。2,300件を超える同館所蔵品から、名品約100件を選りすぐった内容です。
1万年以上の歴史を誇る中国は、唐三彩や青磁、白磁、青花といった革新的な技法を生み出し、世界のやきもの文化をリードしてきました。赤と緑の絵の具に金彩で牡丹文を加えた《五彩宝相華文瓶》は、堂々とした下膨れの姿が珍しい一点です。
日本のやきものは、中国・朝鮮半島の技術を土台に17世紀以降飛躍的な発展を遂げ、素朴な土師器から華やかな磁器まで多様な様式が育まれました。琳派の画家・尾形光琳の弟の乾山による《銹絵染付金彩絵替土器皿》は、鉄・呉須・金で四季の自然を描いた、京都の土器皿です。
朝鮮半島のやきものには、清らかさと実用性を尊ぶ感性が反映されています。優雅な高麗青磁や力強い粉青、質朴な白磁などがあるなかで注目は『粉青象嵌牡丹文厨子』。仏像や経典を納める厨子という珍しい形の作例です。海を越え、時を越えたやきもの探訪の旅を通じて、それぞれの土地の風土が育んだ文化に触れてみてはいかがでしょうか。
重要文化財《銹絵染付金彩絵替土器皿》 京都 尾形乾山作 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵
企画展『やきもの名品紀行-中国・日本・朝鮮半島-』 根津美術館
開催期間:2026年8月15日(土)~10月12日(月・祝)
所在地:東京都港区南青山6-5-1
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日。ただし9月21日(月・祝)、10月12日(月・祝)は開館、9月24日(木)休館
入館料:一般1,400円、学生(大学生以上)600円 ※オンライン日時指定予約
美術館サイト:根津美術館
沖縄の風土が育んだ手仕事、柳宗悦のまなざしをたどる|日本橋髙島屋S.C.
木綿苧麻白地雲青海波菊牡丹文様紅型衣裳 19世紀 123.3×121.0cm
2019年の火災で焼失した首里城正殿の再建が予定される本年。それと時を同じくして、柳宗悦らが「民藝」の理念を確立してからちょうど100年という節目を迎えます。この記念すべき年に、日本橋髙島屋S.C.にて、『柳宗悦が出会った沖縄の美 琉球の民藝』が開かれます。
「民藝運動」を推進した宗教哲学者・柳宗悦は、同級生であった琉球王家尚家第21代当主・尚昌侯との縁をきっかけに沖縄の工芸に魅了され、1938年から4度にわたり現地を訪れて調査と蒐集を行いました。彼が出会ったのは、独自の風土から生まれた色彩豊かな染織や、力強くも大らかな陶器などの手仕事。柳はその美しさを「宝の山」と称賛し、生涯を通して讃え続けたといいます。
本展では、日本民藝館が所蔵する琉球民藝コレクションを中心に、暮らしと芸能に根ざした道具の数々を紹介。さらに、柳とともに沖縄を旅した芹沢銈介、河井寬次郎、濱田庄司ら民藝運動の作家たちが、沖縄から学び制作した作品もあわせて展示されます。生活の道具と表現文化が一体となって育まれた、琉球の風物の豊かさに触れられる内容です。
また、髙島屋は1934年の「現代日本民藝展覧會」をはじめ、民藝運動の初期から彼らの芸術論に賛同し、数々の「民藝展」を企画・開催してきた歴史を持ちます。会期中には、その伝統を受け継ぐかたちで、全国各地の作り手による品々が集う展示・即売「民藝展」も催事会場にて開催。鑑賞するだけでなく、民藝の品々を実際に手に取り、購入できるのは、デパートならではの企画といえるでしょう。
※【大阪会場】大阪髙島屋 7階グランドホール 会期:2026年9月9日(水)〜9月21日(月・祝)
『柳宗悦が出会った沖縄の美 琉球の民藝』 日本橋髙島屋S.C. 本館 8階ホール
開催期間:2026年8月26日(水)~9月6日(日)
所在地:東京都中央区日本橋2-4-1
開館時間:10:30〜19:00(19:30閉場)※最終日は17:30まで(18:00閉場)
会期中無休
入場料:一般1,200円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料
ホームページ:『柳宗悦が出会った沖縄の美 琉球の民藝』
『方丈記』が現代建築に? 鴨長明の小さな庵から「生き方」を問い直す|21_21 DESIGN SIGHT
古典の随筆が、建築の展覧会になる。そう聞くと、意外に感じる方も多いかもしれません。13世紀初頭に鴨長明が記した『方丈記』は、移ろい続ける世の無常を前にした人間の生き方を綴った作品。文学作品でありながら「真の建築書」とも形容されてきたこの書物には、小さな建築「方丈庵」が記されています。
21_21 DESIGN SIGHTで開催される企画展『方丈記に学ぶ –生きるを編み直す小さな建築–』は、この方丈庵を起点に、現代の暮らしを見つめ直すものです。展覧会ディレクターを務めるのは、建築家の塚本由晴。近年頻発する災害により、安心安全や管理・監視が強まり、暮らしがより堅固な構造へと更新され続ける一方、食やエネルギーを人任せにしきった生活様式のもろさも指摘されています。塚本は、そうした暮らしを自分たちの手で編み直すきっかけとして、本展を位置づけました。
見どころは大きく2つ。まず、建築家やデザイナーなど多彩な参加者が、一丈四方(約9㎡)というスケールを手がかりに構想する、現代版「方丈庵」の数々です。江頭慎、大室佑介+川長組、小渕祐介+中村純、2m26、山口晃による5組の庵が立ち並び、実際に体験できるものから鑑賞を通じて味わうものまで、さまざまな表現が展開します。また、田部井美奈、正田智樹+竹中工務店+veigによる庵や、須田悦弘による作品も会場内の思いがけない場所にひっそりと佇みます。
そしてもうひとつが、鴨長明の庵そのものをたどる展示です。『方丈記』の記述をもとに庵を再現するとともに、時代を超えて読み継がれてきた軌跡や、「方丈」という空間に託されてきた思想に光を当てます。800年前の小さな庵をめぐる旅は、思いのほか今の暮らしと地続きであることに気づかせてくれそうです。
2m26「niwatorigoya」(2022年) 撮影:Yuki Okada
企画展『方丈記に学ぶ –生きるを編み直す小さな建築–』 21_21 DESIGN SIGHT
開催期間:2026年8月28日(金)〜2027年1月11日(月・祝)
所在地:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
開館時間:10:00〜19:00(入場は18:30まで)
休館日:火曜日(9月22日、11月3日は開館)、11月21日〜23日、年末年始(12月27日〜1月3日)
入場料:一般1,700円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
美術館サイト:21_21 DESIGN SIGHT
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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