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2026.9.2

【東京都現代美術館】没後初の大規模回顧展『多田美波―光、凛と ゆれる』が開催。都市に息づいてきた「光の造形」に迫る

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2026年8月29日(土)より、東京都現代美術館にて『多田美波―光、凛と ゆれる』が開催中。
抽象彫刻家・造形作家として戦後日本において活躍した多田美波(Tada Minami、1924~2014年)の、没後初となる大規模回顧展です。

《Mirage》1989年 多田美波研究所蔵 撮影:多田美波研究所《Mirage》1989年 多田美波研究所蔵 撮影:多田美波研究所

美術館の枠を越えて生活空間に溶け込んできた仕事を、あらためて俯瞰する

多田美波研究所での制作風景 1978 撮影:成瀬友康多田美波研究所での制作風景 1978 撮影:成瀬友康 (株)世界文化社提供

多田美波は、生涯でおよそ200点の彫刻作品に加え、500点にも及ぶ建築関連の仕事を手がけてきました。その活動の場は美術館の中にとどまらず、公園や駅、市庁舎、ホテル、劇場といった都市のさまざまな場所に作品を残し、長年にわたって人々の生活空間を形づくってきました。

空に向かって伸びるステンレスの彫刻、自然の景観に馴染むガラスやアクリルの造形、そして色とりどりの光を内包する「光壁」など、その表現は素材もスケールも幅広いのが特徴です。

高度経済成長期に普及した工業素材や加工技術をいち早く表現に取り入れ、光の反射や透過、屈折、揺らぎといった有機的な要素を無機質な表面に取り込むことで、周囲の環境や鑑賞者の動きに呼応して表情を変える造形を生み出してきました。

《座標》2009年 多田美波研究所蔵 撮影:末正真礼生《座標》2009年 多田美波研究所蔵 撮影:末正真礼生

量塊性や安定性を重んじる具象彫刻の規範から離れ、光そのものを造形の中心に据えて空間に働きかけたその実践は、彫刻、プロダクトデザイン、インテリア、建築を横断する独自の立ち位置を築いています。

本展では、多田美波研究所の全面協力のもと、初期の絵画から各時代の彫刻、作家自身が「光造形」と呼んだ照明作品およそ70点に加え、建築造形のパーツや写真、スケッチなどのアーカイブ資料を加えた構成で、約70年にわたる仕事をあらためて見渡します。

多田美波とはどんな作家?

《周波数37306505》1965年 「MOTコレクション Eye to Eye—見ること」(2024)展示風景 Photo: Masaru Yanagiba《周波数37306505》1965年 「MOTコレクション Eye to Eye—見ること」(2024)展示風景 Photo: Masaru Yanagiba

多田美波は1924年、台湾・高雄に生まれ、朝鮮で育ちました。高校在学中に朝鮮美術展覧会に出品して入賞し、1944年には女子美術専門学校(現・女子美術大学)西洋画科を卒業。1956年の第41回二科展、1957年の第9回読売アンデパンダン展に油彩画を出品するなど、画家としてキャリアをスタートさせます。

光造形 1968年 皇居・新宮殿、東京 撮影:野堀成美光造形 1968年 皇居・新宮殿、東京 撮影:野堀成美

1957年、東京・炭労会館のためにレリーフ『炭鉱』を制作。以後、彫刻家・造形作家としての活動を本格化させると、1962年には多田美波研究所を設立します。

半円球のアクリルにアルミニウムを蒸着メッキし鏡面のように仕上げた《周波数37306505》(1965、東京都現代美術館)やステンレスの屋外彫刻『キアロスクーロ』(1979、東京国立近代美術館蔵)といった代表作を手がける一方、建築空間における仕事も数多く残しています。

皇居・新宮殿の光造形(1968)、約7,600個ものガラスブロックから成る帝国ホテル 東京の光壁『黎明』(1970)、紫雲をイメージしたリーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクションの照明『瑞雲』(1973)などが代表例です。

1965年には第8回日本国際美術展優秀賞、1979年には第1回ヘンリー・ムーア大賞を受賞するなど高い評価を受け、1988年に紫綬褒章、1994年には勲四等宝冠章を受章しました。

『多田美波―光、凛と ゆれる』 の主な3つの見どころ

光壁《黎明》1970年 帝国ホテル 東京 撮影:作本邦治光壁《黎明》1970年 帝国ホテル 東京 撮影:作本邦治

1. 美術館の展示室全体を使った、没後初の大規模回顧展

彫刻やレリーフにとどまらず、緞帳、シャンデリア、ビルのファサード、照明器具まで、美術・建築・デザインの領域を自在に行き来しながら活動した多田美波の全仕事を総覧します。

立体表現への移行を予兆させる絵画作品や初期のブロンズ彫刻、アクリルやステンレスによって周囲の環境を映し込む代表作、プリズムのような鮮やかさを放つ陶板の彫刻まで、素材と光と空間の関係性を軸に多田の造形世界に迫ります。

2. 現存しない作品や、建築と一体化した照明作品を再制作・再構成

光造形《瑞雲》1973年 リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション 撮影:作本邦治光造形《瑞雲》1973年 リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション 撮影:作本邦治

大きな見どころのひとつが、多田美波研究所の協力による作品の再制作・再構成です。洗面台などに使われるボールチェーンを素材にしたシャンデリア『チェーンデリア』(1963)は、松屋サロン(銀座)に設置され、後に多田が皇居・新宮殿の光造形を委託されるきっかけとなった記念碑的な作品ですが、今は残っていません。

これを本展のために原寸大で復元します。またリーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクションの光造形『瑞雲』(1973)の一部も、制作当時と同じクリスタルガラスのパーツ約3,000個を用いて再構成されます。

3. 図録とトークイベントで、美術史における位置づけを多角的に読み解く

多田美波は同時代の前衛美術グループに属することなく、彫刻、建築、デザインの領域を横断しながら独自に活動を続けてきました。そのため、その仕事の全貌を美術史のなかで体系的に捉える機会はこれまで多くはありません。

本展では公式図録の刊行に加え、研究者や専門家によるトークイベントにより、近年評価が高まりつつある多田美波の創美術史的な意義を、多角的な視点から読み解きます。

まとめ

《瑞光》2013年 オリーブベイホテル、長崎 撮影:多田美波研究所《瑞光》2013年 オリーブベイホテル、長崎 撮影:多田美波研究所

『多田美波―光、凛と ゆれる』は、ひとりの作家が70年近くにわたって追い求めた「光の造形」を、美術館という空間全体を使って辿る大規模な展覧会です。会場となるのは、外光の差し込むアトリウムを含む約1,500平米の地下展示室と、隣接する屋外展示エリア。

美術館の広い空間と屋外という異なる環境をまたぎながら、多田が生涯を通じて探究した「光」と「空間」の関係をたっぷりと体感できる展示になります。

また本来は建築と一体化し、切り離すことのできない存在だった光の造形を、美術館という場で間近に体感できるのも、本展ならではの貴重な機会と言えるでしょう。

多田美波という名前を意識することのないまま、ホテルのロビーや公共施設のなかで、実はその光の造形にすでに出会っていた、という方も少なくないはず。彫刻や絵画としての作品はもちろん、そうした生活空間に息づいてきた仕事の数々にも光が当てられることで、多田美波の作家としての輪郭がより立体的に浮かび上がってきそうです。

展覧会情報

『多田美波―光、凛と ゆれる』 東京都現代美術館 企画展示室 B2F
開催期間:2026年8月29日(土)~12月6日(日)
所在地:東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
開館時間:10:00~18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
 ※11月の毎金曜日は20:00まで開館
休館日:月曜日(9月21日、10月12日、11月23日は開館)、9月24日、10月13日、11月24日
観覧料:一般1,600 円、大学生・専門学校生・65歳以上1,100 円、中高生640円、小学生以下無料。
 ※10月10日(土)~12日(月・祝)は中高生・専門学校生・大学生は無料です。(チケットカウンターで学生証を提示)

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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。

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