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2026.8.26
「密やかな美」とは?小村雪岱の繊細な世界を埼玉県立近代美術館で味わう
「密やかな美」とは、いったいどのような美しさなのでしょうか。
埼玉県立近代美術館では、2026年7月11日(土)~9月23日(水・祝)まで、企画展「密やかな美 小村雪岱のすべて」を開催しています。
大正から昭和初期にかけて、日本画をはじめ書籍の装幀や挿絵、舞台美術、映画の美術考証など幅広い分野で活躍した小村雪岱。
この記事では、実際に会場を訪れ、繊細な作品の数々を鑑賞した筆者が、印象に残った作品や展示の様子とともに展覧会の魅力を紹介します。
目次
小村雪岱《蝶》1925 年|絹本着色|川越市立美術館|後期展示
「密やかな美 小村雪岱のすべて」
埼玉県立近代美術館で開催されている「密やかな美 小村雪岱のすべて」は、小村雪岱の約25年間にわたる創作活動を、8章に分けて紹介する大規模な展覧会です。
小村雪岱『日本橋』1914 年|泉鏡花記念館、さいたま文学館、牙鳥文庫、(有)田中屋
雪岱が生涯敬愛した小説家・泉鏡花の『日本橋』をはじめ、邦枝完二の小説「おせん」、「お傳地獄」の挿絵下図や原画など、雪岱を代表する作品を多数展示。また、近年になって所在が明らかになった新聞連載小説「山海評判記」や「江戸役者」の挿絵原画も見ることができます。
さらに泉鏡花にまつわる資料や、鏑木清方、里見弴らの作品、雪岱の日本画制作に影響を与えた松岡映丘や鈴木春信、初代歌川国貞の作品なども紹介されています。
会場では、雪岱が手がけた日本画だけでなく、装幀や挿絵、舞台美術など幅広い仕事に触れられるのも見どころの一つ。約700点の作品・資料が前期・後期に分けて展示されるため、一度の鑑賞では見きれないほどの充実した内容となっています。
今回は前期展示(7月11日~8月16日)の会場を実際に訪れました。
小村雪岱とは?日本画家だけではない多彩な魅力
小村雪岱(こむら・せったい、1887~1940)は、大正から昭和初期にかけて活躍した日本画家です。しかし、その活動は日本画だけにとどまりません。
書籍の装幀や挿絵、舞台装置、映画の美術考証など、さまざまな分野で才能を発揮しました。特に小説家・泉鏡花を敬愛し、鏡花の著書『日本橋』の装幀を手がけたほか、邦枝完二の小説「おせん」などの挿絵でも知られています。
雪岱の作品を実際に見てみると、繊細な線や洗練された構図など、日本画家としての技術だけでは語りきれない魅力が感じられます。さまざまなジャンルで独自の美を追求したことこそ、雪岱の大きな特徴といえるでしょう。
埼玉県立近代美術館へ!北浦和駅から徒歩3分
「密やかな美 小村雪岱のすべて」が開催されている埼玉県立近代美術館は、JR京浜東北線・北浦和駅西口から徒歩約3分。北浦和公園の中に位置しているため、駅から向かう際には公園の緑を楽しみながら歩くことができます。
駅前はそれなりににぎわっていましたが、北浦和公園に入ると、緑に囲まれた穏やかな空気に包まれます。公園を少し歩くと、美術館が見えてきました。
館内は明るく開放的な雰囲気ですが、企画展の展示室に入ると一転して少し薄暗く、作品と向き合うための静かな空間が広がっています。夏の暑い日に訪れたこともあり、冷房の効いた展示室は涼しく、日常とは少し離れた特別な場所に来たような感覚もありました。
この日は夏休み期間中だったものの、平日ということもあってか、展示室は混み合っておらず、比較的ゆっくりと作品を鑑賞できました。来館者は年配の方が多く、落ち着いた空間のなかで、自分のペースで展示を楽しめます。
駅からのアクセスがよく、公園の散策も楽しめるため、展覧会とあわせてゆっくり過ごしたい人にもおすすめの美術館です。
「密やかな美」の意味を感じる展示
今回の企画展は大きな作品が並ぶ華やかな展覧会とは少し異なり、繊細な線や色彩で描かれた作品を、静かな空間のなかでじっくりと鑑賞できます。
実際に作品を目の前にすると、「密やかな美」という言葉が少しずつ腑に落ちていきました。小さな絵の中に細かな表現が凝縮されており、近づいてじっくり見ることで気づく魅力があります。
かわいらしい菅原道真に驚き!『菅公幼少』
小村雪岱《菅公幼少》1904年|紙本着色|清水三年坂美術館|前期展示
菅原道真といえば、学問の神様として知られる一方、怨霊のイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。
そんな道真の幼少期を描いた『菅公幼少』は、雪岱の優しいタッチも相まって、どこか愛らしい印象。よく知られた人物の意外な一面に出会える作品です。
身長よりも大きい作品も『唐津くんち』
小村雪岱《唐津くんち》1907年頃|紙本着色|川越市立美術館|前期展示
小ぶりな作品が多い印象の展示のなかで、ひときわ目を引いたのが『唐津くんち』です。実際に目の前にすると、その大きさはなんと筆者の身長よりも大きいほど。
繊細な作品が並ぶ会場で存在感を放ち、雪岱が手がけた作品のスケールの幅広さを感じさせてくれました。
鮮やかな色彩が目を引く『をとめ』
小村雪岱『をとめ』第 1 号 1916 年 1 月|真田幸治氏
1916年に発表された『をとめ』は、7人の女性が描かれています。会場で目にするとまず印象に残ったのが、赤や緑など鮮やかな色使い。
繊細で落ち着いた印象の作品が多いなかで、華やかな色彩が目を引きました。女性たちの姿と合わせて、絵の美しさをじっくり味わいたくなる作品です。
繊細な描写に目を奪われる『「稽古扇」舞台装置原画』
小村雪岱《「稽古扇」舞台装置原画》1934 年|紙本着色|弥生美術館|前期展示
シンプルな描画の作品が多いなか『「稽古扇」舞台装置原画』は細部まで繊密に描き込まれており、思わずじっくり見入ってしまいました。日本画だけではない、雪岱の幅広い仕事ぶりが伝わる作品です。
これぞ密やかな美『星祭り』
タイトルを見たとき「星なんて描かれていないのに何故、星祭り?」と気になった『星祭り』。特に星空が描かれているわけでもなく、着物姿の女性が桶に張られた水を眺めているだけです。
しかし絵を間近で見てみると、女性が覗き込んでいる桶の水面に星が描かれています。江戸時代の七夕には水面に空の星を映して楽しむ風習があったとのこと。
小村雪岱《星祭り》|絹本着色|金子國義事務所 金子修氏|前期展示
派手に目を引くというより、細部に目を向けることで魅力が見えてくる作品。まさに「密やかな美」を感じました。
8月18日から後期展示へ!メインビジュアルの『蝶』も公開
今回筆者が訪れたのは前期展示の期間。8月18日(火)からは後期展示が始まり、展示作品の一部が入れ替わります。
小村雪岱《蝶》1925 年|絹本着色|川越市立美術館|後期展示
なかでも気になったのが、今回の企画展のメインビジュアルにもなっている『蝶』です。白や黄色の蝶たちを見つめる女性の姿が描かれた作品で、静かな表情や佇まいから、まさに「密やかな美しさ」が感じられます。
実物を目の前にしたら、画面越しでは分からない繊細な表現をどのように感じるのだろうと、想像が膨らみました。
前期と後期で展示作品が入れ替わるため、これから訪れる人は後期ならではの作品にも注目してみてはいかがでしょうか。
【まとめ】静かに作品と向き合える「密やかな美」
埼玉県立近代美術館で開催中の「密やかな美 小村雪岱のすべて」は小村雪岱の日本画だけでなく、挿絵や舞台美術、雪岱がデザインした煙草入れやコンパクトケースなどが鑑賞できる展覧会です。
繊細でこじんまりとした作品を静かな空間でじっくり鑑賞でき、「密やかな美」というタイトルの意味を感じることができました。
前期・後期で展示作品も入れ替わるため、これから訪れる人は後期ならではの作品にも注目してみてはいかがでしょうか。
展覧会情報
【開催概要】
展覧会名
密やかな美 小村雪岱のすべて
・会場
埼玉県立近代美術館
〒330-0061 埼玉県さいたま市浦和区常盤9丁目30−1
・会期
2026年7月11日(土)-9月23日(水・祝)
前期|7月11日(土)-8月16日(日)
後期|8月18日(火)-9月23日(水・祝)
・休館日
月曜日
※7月20日、9月21日は開館
・開館時間
10:00-17:30
※展示室への入場は17:00まで
・観覧料
一般 1,400円(1,120円) 大高生 1,120円(900円)
※( )内は20名以上の団体料金
※中学生以下は無料
※障害者手帳等をご提示の方(付き添いの方1名を含む)は無料
※リピーター割引:本展の「一般」又は「大高生」の観覧券を購入すると、半券提示で本展会期中2回目以降の観覧料が2割引になります。なお半券の他人への譲渡は認めておりません。その他の割引との併用はできません。
※企画展観覧券(ぐるっとパスを除く)をお持ちの方は、あわせてMOMASコレクション(1階展示室)もご覧いただけます。
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アートの美しさや面白さを身近な視点で伝えます。お気に入りの絵画はミレーの『オフィーリア』。フリーランスのライターとして幅広いジャンルで執筆経験あり。趣味は観劇と洋画/海外ドラマ鑑賞。ヴァイオリンを習っています。
アートの美しさや面白さを身近な視点で伝えます。お気に入りの絵画はミレーの『オフィーリア』。フリーランスのライターとして幅広いジャンルで執筆経験あり。趣味は観劇と洋画/海外ドラマ鑑賞。ヴァイオリンを習っています。
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