EVENT
2024.3.25
【長野4/6〜】葛飾北斎の挿絵に注目。『北斎と感情』で知る北斎のエモい描写
長野県の北斎館にて『北斎と感情』が開催されます。会期は4月6日(土)〜6月9日(日)です。
「富嶽三十六景」など特に浮世絵版画で知られる北斎ですが、読本(よみほん)の挿絵の分野でも活躍したことをご存知でしょうか?
読本は文章が主体の文学作品で、簡単に言うと当時の小説です。北斎は40代半ば頃から読本挿絵の分野で活躍し、曲亭馬琴や柳亭種彦などの戯作者とタッグを組んで多くの作品を世に送り出しました。
芸術性の高い北斎の挿絵は人気を博し、当時、挿絵入りの読本が大流行したのだとか。
緻密な描写や大胆な構図によって人々の心を掴んだ北斎の挿絵。とりわけ注目したいのが、登場人物の感情表現です。
泣いたり、驚いたり、喜んだり。北斎が描き出す人々の表情はエモーショナルで、読者を物語の世界に引き込みます。
本展では登場人物の感情表現に焦点を当て、北斎の版本挿絵を中心に作品が紹介されます。晩年の北斎が滞在したゆかりの地である信州小布施で、読本挿絵の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。
見どころ①表情や仕草から読み解く感情
『国字鵺物語』より「此君韓衣玉環三人の亡霊冤罪に陥たる事を石川義廉に告」北斎館所蔵
北斎は登場人物ひとりひとりの表情や仕草を通して、複雑な感情を描き出しました。
感情移入せずにいられないシリアスな表情もあれば、思わず笑ってしまうコミカルな顔もあり、令和の現代人から見ても面白い作品ばかりです。
私の友人に絵が得意な人がおり、人物の顔を描くときは、描いている自分も同じ顔をしている……と話していました。北斎も、絵の中の人々と同じ表情をしながら描いていたのかも? なんて想像するのも楽しいです。
全体の構図や背景の表現も圧倒的ですが、今回は少し画面に寄り、人物の細かい表現に注目してみましょう。悲しみに暮れて涙を流す人や、大金を前に大喜びする人など、北斎が描き出した人々の感情をお楽しみください。
見どころ②挿絵から広がる物語世界
泣いたり笑ったり、感情を露わにする人物たち。挿絵を見ていると、彼らに何があったのか気になり、物語そのものを知りたくなってきます。
『北越奇談』より「仁助大蜂の夢を買て樹根に金を得る」北斎館所蔵
本展では、いくつかの物語の一節も紹介され、挿絵とともに物語も楽しめるようになっています。お話の流れがわかると、挿絵で物語の世界を広げるために北斎が凝らした工夫も見えてくるのではないでしょうか。
見どころ③北斎ゆかりの地で作品を楽しもう
北斎館のある信州小布施は、80歳を過ぎた晩年の北斎が滞在した土地です。訪れるきっかけにはさまざまな説があり、天保の改革によって江戸では絵の制作が制限されたとか、地元の豪農・豪商の高井鴻山に招かれた、などと伝わっているそうです。
同館では季節ごとの企画展に加え、晩年の大作である東町・上町の祭屋台天井絵「龍」「鳳凰」、「男浪」「女浪」が常設されています。
実際に北斎が暮らし、アトリエのような場所を得て制作していた土地で、北斎の作品をゆったりと堪能してみてはいかがでしょうか。
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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