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2024.9.4

東京都美術館「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」奄美に生き、奄美を描いた画家を知る

青い海と緑の森に包まれ、太古の時代から変わらない大自然が広がる奄美大島。南国の楽園とも称されるこの島で晩年を過ごした、一人の画家がいました。

彼の名は田中一村(たなか・いっそん/1908-1977)。生涯をかけて絵画へ情熱を注ぎ続け、全身全霊をかけて「描くこと」に取り組んだ人物です。その一村の全貌を紹介する大回顧展「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」が、東京都美術館で2024年9月19日(木)から2024年12月1日まで開催されます。

田中一村展 奄美の光 魂の絵画とは

田中一村は栃木町(現・栃木市)に生まれ、幼年期から卓越した画才を示し、神童と称されました。東京に転居して制作に励み、50歳のときに奄美大島へ単身で移住。紬織の染色工として働いて制作費を貯めては、奄美の自然を主題とした絵に専念するという日々を送りました。

昭和22年(1947)に《白い花》が青龍展に入選するも、翌年は自信作が落選し、その後も日展、院展と相次いで落選。世俗的な栄達とは無縁でしたが、絵を決して諦めることのなかった一村の生涯は、「不屈の情熱の軌跡」といえるものでした。

無名のまま奄美で没しましたが、彼の三回忌に奄美の人たちの手で行われた展覧会を地元メディアが報じたことをきっかけに、4年後の1984年にNHK教育テレビ「日曜美術館」で取り上げられ、その名が全国的に知られました。

田中一村展 奄美の光 魂の絵画の楽しみ方

自然を主題とする澄んだ光にあふれた絵画は、一村の情熱の結晶ともいうべきもの。これらの作品を通じて、田中一村の歩んだ軌跡をお楽しみいただけます。

奄美大島の自然景を楽しむ!

南国情緒の豊かな大作二枚《アダンの海辺》と《不喰芋と蘇鐵》をはじめ、奄美の豊かな森と透き通る海を感じるような、自然美あふれる絵画が見どころのひとつです。

一村が移り住んだ当時は、日本最南端だった奄美大島。その地で生まれた絵画は、静かで落ち着いた雰囲気のなかに、消えることのない彼の魂の輝きをも宿しているかのようです。

「アダンの海辺」昭和44年(1969)絹本着色 個人蔵 Ⓒ2024Hiroshi Niiyama

「不喰芋と蘇鐵」昭和48年(1973)以前 絹本着色 個人蔵 Ⓒ2024Hiroshi Niiyama

初公開の作品や資料を楽しむ!

「椿図屏風」昭和6年(1931)絹本金地着色2曲1双 千葉市美術館蔵 Ⓒ2024Hiroshi Niiyama

絵画作品を中心に、スケッチ・工芸品・資料を含めた250件を超える作品が彩る本展では、近年発見された初公開作品も多数出品し、未知の軌跡もたどります。

例えば「空白期」とされていた一村の昭和初期にも、新しい関心で描き続けた新展開がわかってきました。《椿図屏風》のような力作も出現し、今なおこの時期の作品は新たに発見が続いています。

一村という人物を知って楽しむ!

「奄美の海に蘇鐵とアダン」昭和36年(1961)1月 絹本墨画着色 田中一村記念美術館蔵 Ⓒ2024Hiroshi Niiyama

一村の残された作品からは、背後にあった人々との関係性や、生涯の集大成への道筋とその思想を探ってきた経過が読み取れます。

独学で自らの絵を模索した一村は、支援してくれた人々に宛てて風景画の色紙を贈りました。人との繋がりの窓口として生涯描き続けた色紙には、一村の絵のエッセンスと、絵画をめぐる思考が常に吐露されています。彼の人柄や作品に心を掴まれた有志の尽力によって実現した1980年の展覧会には、たった3日間の会期にもかかわらず、約3,000人の島民が会場に押し寄せました。

神童と称された幼年期から最晩年の作品までを紹介する本展は、一村とはどのような人物だったかを知る好機となるはずです。

奄美で集大成となった、一村の情熱の軌跡にふれよう

「秋晴」昭和23年(1948)9月 紙本金地着色 2曲1隻 田中一村記念美術館蔵 Ⓒ2024Hiroshi Niiyama

本展は、奄美の田中一村記念美術館の所蔵品をはじめ、代表作を網羅する決定版です。一村の不屈の情熱の軌跡にふれ、その先にある奄美の光に満ちた絵画の魂を感じてみませんか。

開催概要

展覧会名:田中一村展 奄美の光 魂の絵画 Tanaka Isson : Light and Soul
会期:2024年9月19日(木)–2024年12月1日(日)
会場:〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36 東京都美術館 企画展示室
開室時間:9:30–17:30、金曜日は9:30–20:00
 ※入室は閉室の30分前まで
休室日:月曜日、9月24日(火)、10月15日(火)、11月5日(火)
 ※ただし、9月23日(月・休)、10月14日(月・祝)、11月4日(月・休)は開室
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団東京都美術館、
   鹿児島県奄美パーク田中一村記念美術館、NHK、NHKプロモーション、日本経済新聞社
協賛:DNP大日本印刷、日本典礼
監修:松尾知子(千葉市美術館副館長)
お問い合わせ(ハローダイヤル):050-5541-8600(全日9:00–20:00)
展覧会公式サイト:田中一村展 奄美の光 魂の絵画 Tanaka Isson : Light and Soul

観覧料(税込)
一般:前売券1,800円、当日券2,000円
大学生・専門学校生:前売券1,100円、当日券1,300円
65歳以上:前売券1,300円、当日券1,500円

※前売券は2024年8月19日(月)10:00–9月18日(水)23:59までの販売。
※高校生以下無料。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料。
※身体障害者手帳等のお手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)・高校生以下の方は、日時指定予約は不要です。直接会場入口にお越しください。
※高校生、大学生・専門学校生、65歳以上の方、各種お手帳をお持ちの方は、いずれも証明できるものをご提示ください。
※毎月第3土曜日・翌日曜日は家族ふれあいの日により、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は一般通常料金の半額(住所のわかるものをご提示ください)。日時指定予約不要、販売は東京都美術館チケットカウンターのみ。
※最新情報は展覧会公式サイトでご確認ください。
※本展は他会場への巡回はありません。

【写真7枚】東京都美術館「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」奄美に生き、奄美を描いた画家を知る を詳しく見る

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さつま瑠璃

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文筆家(ライター)。芸術文化を専門に取材執筆を行い、アートと社会について探究する書き手。SNSでも情報を発信する他、さつまがゆく Official Podcastでは取材執筆にまつわるトークを配信中。

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