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2025.3.20

【滋賀】アートで落語を紹介?意外すぎるコラボに惹かれる『落語であーっ!と展』

いやもう、私は美術館がとにかく怖くて。美術館の近くを通るだけで寒気がしますし、中に入ろうものなら滝のように冷や汗が流れて、心臓が破裂しそうなほどバクバクするんです。

『落語であーっ!と展 そこまでやっちゃう?落語と美術の無理矢理コラボレーション』

……ごめんなさい、見え透いた嘘ですね。まんじゅうを怖がって見せるのにも、相当の演技力が要りそうです。

「まんじゅう怖い」は、誰もが知る落語の演目。滋賀県立美術館にて開催される『落語であーっ!と展 そこまでやっちゃう?落語と美術の無理矢理コラボレーション』のご紹介に際し、畏れ多くもネタを拝借いたしました。会期は4月8日(火)〜6月8日(日)です。

岸竹堂《虎図》1891年 滋賀県立美術館蔵

江戸時代に発展し、今も新作が生み出され続けている落語。面白おかしな滑稽噺やしくじり談、胸が温まる人情噺など、人間のリアルな感情が表現されたストーリーは、時代を問わず人々の心に寄り添ってきました。

美術にも同じような側面があった……とはいえ、落語と美術? 意外すぎて想像できない組み合わせです。「落語と美術の無理矢理コラボレーション」、一体どんな展覧会になるのでしょうか?

見どころ① 美術作品で落語を紹介!?

野村文挙《近江八景図 矢橋帰帆》1899年 滋賀県立美術館

落語のストーリーが多彩な美術作品によって紹介される本展。滋賀ゆかりの演目である「近江八景」のほか、「猫の皿」「抜け雀」「あたま山」などコミカルな落語噺の世界と、同館のコレクションがコラボします。

主な展示として、山元春挙や小倉遊亀などによる日本画、志村ふくみの染織、ジョージ・シーガルなどのアメリカ美術、小幡正雄などのアール・ブリュット作品が挙げられます。

落語×日本画は、まだわかるんです。しかし落語×ジョージ・シーガルは、想像が及ばないのでは……?

大辻良介《ライオン》2008年 滋賀県立美術館蔵

たとえば、「近江八景」では野村文挙《近江八景図》を、「動物園」では岸竹堂《虎》や大辻良介《ライオン》を展示。落語のストーリーに登場する物や景色と関連する絵画、工芸、立体作品が紹介されます。

コンスタンティン・ブランクーシ《空間の鳥》1926年(原型制作年)滋賀県立美術館蔵

さらに、「つる」ではコンスタンティン・ブランクーシ《空間の鳥》を、「やかん」ではジョージ・シーガル《コーヒーを注ぐウェイトレス》を展示。コラボ相手が落語だからこそ成立する、洒落っ気のある展示になりそうです。

塔本シスコ《オモチャカボチャ(白)》2001年 滋賀県立美術館蔵

「落語通の方はもちろん、落語を知らない方も噺とともに美術作品を味わえる、一粒で二度おいしい企画」とのことですが、一粒なんて可愛さでは終わらない予感がします。

三遊亭わん丈 近影 撮影:宮﨑健太郎 ©Kentar

落語監修者は、滋賀県初の江戸落語家、三遊亭わん丈さん。2024年春、16 人抜きの大抜擢で真打に昇進し、7月には寄席主任興行の史上最速記録を打ち立てました。落語界を牽引する若手の一人です。

また、立命館大学落語研究会と連携し、毎週土曜日の午後に高座が開催されます(6月1日(日)も開催)。展覧会と合わせて、生の落語にも触れられる嬉しい機会です。

見どころ②「井戸の茶碗」「あたま山」に関する特別出品

《井戸茶碗 銘 雨雲》16世紀 北村美術館蔵

他にも多彩な作品が出品される本展。正直者が幸せな縁を得る「井戸の茶碗」に関連し、茶道具のコレクションで有名な京都の北村美術館が所蔵する《井戸茶碗 銘 雨雲》が特別出品されます。

井戸茶碗とは、李朝時代の朝鮮半島で作られた高麗茶碗の一種です。日用品として生産されましたが、桃山時代のわび茶の美意識と相性が良く、日本で珍重されるようになりました。実物の井戸茶碗を知ると、落語「井戸の茶碗」がより面白くなりそうです。

また、さくらんぼの種を飲み込んだ男の頭に桜が生える「あたま山」を短編アニメーションにした、山村浩二監督による《頭山》も会期中に展示室で上映されます。「あたま山」の奇妙な世界観がどんな風に映像化されているのか、こちらも楽しみな内容です。

見どころ③ 桂三度×桂二葉による紙芝居動画が初公開!

桂三度さんの新作落語「虹」に桂二葉さんのイラストを組み合わせた、本展オリジナルの紙芝居動画が初公開されます。赤や黄などの色が会話をするストーリーに合わせ、ユニークなイラストが登場するそうです。

滋賀県高島市出身の桂三度さん……については、「3の倍数と3がつく数字のときだけアホになる」ネタで日本中を沸かせた世界のナベアツさん、と言えば誰もがピンと来るのでは。2011年に桂三枝(当代、桂文枝さん)に入門して落語家に転身し、2018年にNHK新人落語大賞を受賞しました。

桂二葉さんは、2021年NHK新人落語大賞で女性初の大賞を受賞。未来ある2人の落語家が紡ぎ出す紙芝居動画も、本展の大きな見どころです。

展覧会情報

『落語であーっ!と展』
そこまでやっちゃう?落語と美術の無理矢理コラボレーション

会期:2025年4月8日(火)〜2025年6月8日(日)
会場:滋賀県立美術館
開館時間:9:30〜17:00(最終入場時間 16:30)
休館日:毎週月曜日(ただし5月5日(月・祝)と5月6日(火・振休)は開館し、5月7日(水)は休館)
美術館ウェブサイト:落語であーっ!と展

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明菜

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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