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EVENT

2025.3.24

千葉市美術館3/22〜『ブラチスラバからやってきた!世界の絵本パレード』 世界各国から注目の絵本が集結!

千葉市美術館で2025年3月22日(土)から開催される『ブラチスラバからやってきた!世界の絵本パレード』。

2023年に開かれた世界最大規模の絵本原画コンクール「ブラチスラバ世界絵本原画展」に出展された作品のうち、国際審査を経て選ばれた受賞作や日本代表の作品が会場に集結します。

日本代表に選ばれたのは、『あらしのよるに』(きむらゆういち文・講談社)の絵を手がけるあべ弘士や、2024年に同館で個展を開催し注目されたザ・キャビンカンパニーなど、最前線で活躍する10組の作家たちです。お子さんに人気がある作品も多く、親子で楽しめる展覧会です。

この記事では、展覧会の見どころや日本代表の作品を詳しくご紹介します。鮮やかな色彩や独特の表現方法を間近で楽しめる原画の魅力もお伝えします。

パロマ・バルディビア《問いかけの本》2022年 ©Paloma Valdiviaパロマ・バルディビア《問いかけの本》2022年 ©Paloma Valdivia

「ブラチスラバ世界絵本原画展」とは

マエヴァ・ルブリ《わたしの街、あなたの街》2019年 ©Maeva Rubliマエヴァ・ルブリ《わたしの街、あなたの街》2019年 ©Maeva Rubli

「ブラチスラバ世界絵本原画展」(略称BIB=Biennial of Illustrations Bratislava)は、1967年にスロバキア共和国の首都ブラチスラバで始まった歴史あるコンクールです。2年に1回開催され、国際審査により受賞者が決定します。

各国を代表する作家の作品が現地に集まるため、会期中は世界中から多くの人々が訪れます。

2023年のBIBの出展者は、36か国、総勢275名にのぼり、355冊の絵本と合計2,072点の原画が勢揃いしました。1カ国につき最大10名までとエントリーできる人数が限られており、最前線で活躍する作家が選抜されます。

日本からは、あべ弘士やザ・キャビンカンパニーをはじめ、『たいようオルガン』(偕成社、2008年)を手がけた荒井良二や、『怪物園』(福音館書店、2020)で話題になったjunaidaら10名が出展しました。

見どころ① 世界各国の最前線で活躍する作家たちの絵本

ダニ・トゥレン《一等車の旅》2018-2020年 ©Dani Torrentダニ・トゥレン《一等車の旅》2018-2020年 ©Dani Torrent

各国の第一線で活動する作家たちが選抜される「ブラチスラバ世界絵本原画展」。BIB2023の受賞者と彼らが拠点とする国は、チリやスイス、ラトビアなど様々です。

栄誉あるグランプリや金のりんご賞に輝いた作家と活動拠点の国は、次の通りです。

《BIB2023の受賞者と活動拠点の国》
・グランプリ
パロマ・バルディビア(チリ)

・金のりんご賞
アネテ・バヤーレ=バブチュカ(ラトビア)
チン・シンルー(陳巽如)(中国)
マエヴァ・ルブリ(スイス)
マヤ・シュレイフェル(イスラエル)
ダニ・トゥレン(スペイン)

・金牌
アナ・クーニャ(ブラジル)
ルツィエ・ルチャンスカー(チェコ)
サンナ・ペッリチオーニ(フィンランド)
ヤーン・ロームス(エストニア)
ヴェンディ・ヴェルニッチ(クロアチア)

(参考)国立国会図書館 国際子ども図書館「2023年BIB賞の受賞作品決定」


絵本に限らずイラストレーションや編集を手がける作家もおり、従来の絵本のイメージに留まらない幅広い表現が魅力です。

また、制作の背景にある地域の違いからも、表現が多様であることがうかがえます。中には日本語に翻訳されていない絵本もあるため、国内で原画を見られる貴重な機会です。

見どころ② 日本を代表する作家たちの作品

本展では、日本代表を務めた10組の作家たちの作品を見ることができます。ここでは、3名の作家をピックアップし、作品の魅力を紹介します。

あべ弘士『よあけ』

あべ弘士《よあけ》2021年 ©あべ弘士あべ弘士《よあけ》2021年 ©あべ弘士

旭川市旭山動物園で飼育係を25年も務めた後、創作活動をスタートした作家・あべ弘士。当時の経験を存分に活かし、動物を生き生きと描いた絵本を多数手がけています。

BIB2023に出品された『よあけ』(偕成社、2021年)にも森の動物たちが登場し、今にも鳴き声が聞こえてくるような迫力があります。

この絵本は、ユリー・シュルヴィッツの『よあけ』(福音館書店、1977年)にあべが感銘を受け、制作されました。シュルヴィッツが描いたのは、おじいさんと孫が湖でボートを漕ぎながら、雄大な自然の中で語らう風景です。

あべの作品にもおじいさんと孫が登場し、舟で川を下りながら、森の動物たちの声を聞き二人で語り合う描写があります。

『よあけ』には、あべが極東シベリアのビキン川を訪れた際の体験が息づいています。彼は、現地に住むウデヘ族と何度も舟で旅をしたそうです。原画を見ると、ダイナミックな自然をよりリアルに感じられるでしょう。

きくちちき『ともだちのいろ』

きくちちき《ともだちのいろ》2021年 ©きくちちききくちちき《ともだちのいろ》2021年 ©きくちちき

絵本作家のきくちちきは、2013年に『しろねこくろねこ』(Gakken)でブラチスラバ世界絵本原画展「金のりんご賞」を受賞し、2019年には『もみじのてがみ』(小峰書店)で同展金牌を受賞しました。

国内外で高い評価を得るきくちがBIB2023に出展したのは、『ともだちのいろ』(小峰書店、2021年)です。

主人公は、真っ黒な犬のくろちゃん。緑色のカエル、赤色の鳥など、様々な色彩で表現された動物たちが「くろちゃん、何色が好き?」と尋ねたことをきっかけに、ストーリーが展開します。

この作品は、黒い犬と鮮やかな色の動物たちとの対比が印象的ですが、キャラクターの描き方にも違いがあります。

くろちゃんの毛並みが水墨画のようなタッチで表現されていたり、カエルは躍動感のある線で描かれていたりと、動物の特徴を細やかに捉えた作品です。絵の具の滲みや色彩の鮮やかさなどを、ぜひ原画で味わってみてくださいね。

堀川理万子『海のアトリエ』

堀川理万子《海のアトリエ》2020年 ©堀川理万子堀川理万子《海のアトリエ》2020年 ©堀川理万子

画家・絵本作家の堀川理万子は、数々の絵本を制作しているほか、展覧会で絵画作品も発表しています。

BIB2023に出展された『海のアトリエ』(偕成社、2021年)は、主人公の女の子が、ある一枚の絵をきっかけに、おばあちゃんの思い出に触れるというストーリーです。おばあちゃんが小学校に通うのが難しくなった時のお話から始まり、彼女の心がどのように解放されていったのかを辿ります。

ストーリーの中心となるのは、おばあちゃんが海辺のアトリエに暮らす「絵描きさん」と過ごすシーンです。少女を子ども扱いせず、一人の人間として向き合う「絵描きさん」のモデルは、作者の堀川が幼い頃に絵を教えてもらった女性の画家だそうです。

おばあちゃんの心に残る風景が、生き生きと浮かび上がる作品『海のアトリエ』。まるで映画のワンシーンを見ているかのような情緒溢れる本作を、ぜひ原画でもお楽しみください。


千葉市美術館の『ブラチスラバからやってきた!世界の絵本パレード』では、国内外で注目されている作家の原画をじっくりと味わえます。様々な地域の作家の作品を通して、従来の絵本のイメージを超えた幅広い表現に触れられるでしょう。

また、お子様と一緒に訪れると、絵本への興味が深まり、お気に入りの一冊に出会えるかもしれません。

注目が集まる作家たちのオリジナリティに溢れる世界を楽しんでみてくださいね。

展覧会情報

ブラチスラバからやってきた! 世界の絵本パレード

会期:2025年3月22日(土)〜5月18日(日)
会場:千葉市美術館
〒260-0013 千葉県千葉市中央区中央3丁目10-8
開催時間:10:00〜18:00 (金・土曜日は、20:00まで)
※入場受付は閉館の30分前まで
休室日:4月7日(月)、14日(月)、21日(月)、28日(月)、5月7日(水)、12日(月)
美術館公式ウェブサイト:ブラチスラバからやってきた! 世界の絵本パレード

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浜田夏実

浜田夏実

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アートと文化のライター。アーティストのサポートや、行政の文化事業に関わった経験を活かし、インタビューや展覧会レポートを執筆しています。難しく考えがちなアートを解きほぐし、「アートって面白い」と感じていただける記事を作成します。

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