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EVENT

2026.1.26

倉庫でクリムトに包まれる。ウィーン世紀末芸術「美の黄金時代」展―THE MOVEUM YOKOHAMA

冬の横浜、山下ふ頭。港の風に背中を押されて倉庫の方へ歩いていくと、いつもの「展示室の入口」とは違う気配がします。ここは山下ふ頭4号上屋(うわや)。

ウィーン世紀末芸術「美の黄金時代」展―THE MOVEUM YOKOHAMAウィーン世紀末芸術「美の黄金時代」展―THE MOVEUM YOKOHAMA

物流のための巨大な倉庫が、期間限定で“没入型ミュージアム”へと姿を変えています。展覧会 「ウィーン世紀末芸術「美の黄金時代」グスタフ・クリムトとエゴン・シーレ~光と影の芸術家たち~」がTHE MOVEUM YOKOHAMA by TOYOTA GROUPで、2026年3月31日まで開催されています。

山下ふ頭4号上屋(うわや)の外観山下ふ頭4号上屋(うわや)の外観

倉庫のスケールがそのまま“体験装置”になる

いまや没入型展示は全国的に広がっていますが、「ここが違う」と断言できるのは、まず“箱”の大きさ。約1,800㎡の大空間に、天井高、奥行き、視界の端まで映像が押し寄せる余白、すべてが体験の一部に組み込まれています。

会場のようす会場のようす

その空間を支えるのが、プロジェクター75台と、綿密に配置された27台のスピーカー。倉庫は本来、音響のための空間ではありません。にもかかわらず、ハウリングを抑えながら均一に音を回す設計が施されていると聞くと、体験の“裏側”まで面白く感じられてきます。

会場はウォークスルー型。歩きながらでも、立ち止まっても、離れて全体を浴びてもいい。混雑の不安も、空間のスケールが自然に吸収してくれます。さらに上階(2Fエリア)から見下ろす視点も取れるため、“作品に対する身体の位置”が変わるたび、感じ方も変わるのが特徴です。

会場のようす会場のようす

クリムトの“光”を浴びる THEATER PROGRAM「美の黄金時代」

メインとなるのは、ウィーン世紀末を舞台にした 「美の黄金時代」。

エゴン・シーレとグスタフ・クリムト――眩しさと影を併せ持つ二人の世界が、音と映像によって丸ごと体に入り込んでくる約52分のプログラム(時間指定鑑賞)。「いま何を観ているのか」を追うより先に、まず“浴びる”のが正解です。

会場のようす会場のようす

光と音が先に届き、絵があとから立ち上がる

会場に足を踏み入れた瞬間、まず“空気が変わる”のを感じます。光と音が先に身体へ届き、作品がゆっくりとその奥から浮かび上がってくる。

会場のようす会場のようす

クリムトの場面では、黄金の粒子が壁全面に広がり、光のわずかな揺れが金箔の呼吸のように見える。そこに重なるのは、19世紀末ウィーンの祝祭性を思わせる華やかな響き。鑑賞者の歩く速度すら変えてしまうほどの音の力で、“絵の前に立つ”というより、黄金の渦を泳ぐ体験になります。

会場のようす会場のようす

《ベートーベン・フリーズ》が“動いて見える”理由

特に圧倒的なのが《ベートーベン・フリーズ》です。実物はどうしても「高い位置の絵を見上げる」構造になりがちですが、ここでは壁面全体で再現され、作品がクローズアップで展開されるため、自分がフリーズの内部に入り込んだような没入感が生まれます。

会場のようす会場のようす

女性像の横顔、怪物たちの影、金色のうねりらが視界をゆっくり横断し、静止画なのに“動いて見える”不思議。これは、音楽と光が作品の内部に流れていた“時間”を呼び戻しているからです。絵画鑑賞というより、音と視覚が混ざり合う総合芸術の体験に近い。

会場のようす会場のようす

シーレの“影”が立ち上がる 音と光が切り替わって生まれるコントラスト

シーレのパートに入ると、空気がすっと冷えます。
人物像が現れる直前、音が細くなり、光が抑えられる。
クリムトの祝祭を浴びた後だからこそ、シーレの痩身の人物たちの不安定なラインが鋭く胸に刺さる。

会場のようす会場のようす

音楽も、ウィーン世紀末の“影”を引き取るような旋律へ。ひらめく光、止まる影、遠くで響く低音。シーレ作品に漂う「生と死のはざま」の気配が、音と光によって輪郭を増していく。

会場のようす会場のようす

面白いのは、クリムトとシーレを比較する展示ではないのに、音と映像の演出が二人の世界観の対比を身体に刻んでくる点。

クリムトの“外へ広がる光”、シーレの“内へ沈む影”。この切り替えが、会場全体を巨大な画集、あるいは劇場へと変貌させていきます。

体験を終えて外へ出ても、まだ金色が目の奥に残り、音が耳の奥で反響している。没入展示ならではの余韻が、しばらく身体に居座り続けるのです。

音に連れ去られる STUDIO PROGRAM「LISTEN. ONE MOMENT」

さらにもうひとつの柱が、STUDIO PROGRAM 「LISTEN. ONE MOMENT」。プロデューサーは山口智子さん。

10年にわたり世界各地の音楽文化を記録してきた「LISTEN.」の映像アーカイブから生まれた新シリーズです。

会場のようす会場のようす

こちらは美術史の物語ではなく、土地の息づかいを“音で感じる”ための空間。

歌声、踊りのリズム、楽器の振動が映像と一緒に身体の中心へ届き、気がつけば“聴く”より“そこにいる”方へと意識が移っていく。

二つのプログラムは入口がまったく異なります。絵画好きはウィーンへ、音と旅好きはLISTEN.へ。同じ施設内で異なる没入体験が並んでいるのが、とても気持ちよい。

まとめ

没入展示は、ときに「映像がきれい」で終わるものもあります。でも今回は、“倉庫のスケール”が体験の核になっている。

巨大な箱が作品世界をただ拡大するのではなく、こちらの呼吸や距離感まで巻き込んでくる。テクノロジーの派手さより前に、“体で理解してしまう”瞬間が残る展示です。

会場のようす会場のようす

クリムトの光。シーレの影。そして世界の音。

知識は要りません。


まずは金色の波と音のうねりに身を預けてみてください。
そこから先は、あなたの記憶の中で、作品が静かに動き始めます。

便利メモ

・駐車場:専用はなし。公共交通機関推奨
・支払い:会場はキャッシュレス(現金不可)。チケット・物販ともに注意
・入場ルール:チケット記載の上映開始時間の15分前から入場。上映時間を過ぎると原則入場不可(返金・振替なし)
・体質的に不安がある人は、光・音の刺激を想定して“無理しない設計”で(途中で距離を取れるのもこの会場の良さです)

会場への移動手段のひとつモビリティ(e-Palette)会場への移動手段のひとつモビリティ(e-Palette)

開催概要

◆THEATER:ウィーン世紀末芸術「美の黄金時代」グスタフ・クリムトとエゴン・シーレ~光と影の芸術家たち~
◆STUDIO:LISTEN. ONE MOMENT(山口智子プロデュース)
【開催期間】2025年12月20日(土)~2026年3月31日(火)
【所在地】〒231-0023 神奈川県横浜市中区山下町279-9 横浜山下ふ頭4号上屋 @THEATER
【アクセス】
 みなとみらい線「元町・中華街駅 4番口」
 山下ふ頭バス待合所まで 徒歩4分
 山下ふ頭バス待合所からTHE MOVEUM YOKOHAMAまで
  徒歩20分
  モビリティによる移動体験約5分
【開館時間】
 日曜日~木曜日・祝日  11:00~19:00
 金曜日・土曜日・祝前日 11:00~20:00
【休館日】会期中無休
【入場料】
一般:
 3,000円(オンライン販売)3,800円(当日会場販売)
・大学生・高校生・専門学校生:
 2,000円(オンライン販売)2,700円(当日会場販売)
・小・中学生:
 1,200円(オンライン販売)1,900円(当日会場販売)
・障がい者手帳をお持ちの方:
 2,500円(オンライン販売)3,300円(当日会場販売)
【展覧会サイト】
THEATER:ウィーン世紀末芸術「美の黄金時代」グスタフ・クリムトとエゴン・シーレ~光と影の芸術家たち~

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つくだゆき

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東京美術館巡りというSNSアカウントの中の人をやっております。サラリーマンのかたわら、お休みの日には、美術館巡りにいそしんでおります。もともとミーハーなので、国内外の古典的なオールドマスターが好きでしたが、去年あたりから現代アートもたしなむようになり、今が割と雑食色が強いです。

東京美術館巡りというSNSアカウントの中の人をやっております。サラリーマンのかたわら、お休みの日には、美術館巡りにいそしんでおります。もともとミーハーなので、国内外の古典的なオールドマスターが好きでしたが、去年あたりから現代アートもたしなむようになり、今が割と雑食色が強いです。

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