EVENT
2022.5.5
『庵野秀明展』に見る「夢中」の起爆力
『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)で一世を風靡し、『シン・ゴジラ』(2016年)で大ヒットを飛ばした監督・プロデューサーの庵野秀明さん。今やアニメ好き・特撮好き以外にも広く知られる庵野さんの展覧会が、大阪・あべのハルカス美術館で開幕しました。
本展の特徴は、庵野さんが手がけた仕事のみならず、庵野さんが影響を受けた作品も紹介していることです。
庵野秀明をつくったもの
庵野秀明がつくったもの
そして、これからつくるもの
というコンセプトのとおり、庵野秀明という一人のトップクリエイターを徹底的に解剖する展覧会でした。普段、イロハニアートが取り上げる芸術家との共通点もうかがえます。筆者はアニメや特撮に詳しくありませんが、それでも強い衝撃を受けるほどおもしろい展覧会だったので、見どころを解説していきます。
夢中で取り組んだ仕事の数々
『新世紀エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』はもちろん、本展では庵野さんがアマチュア時代から今日に至るまでに手掛けた仕事の数々が、映像や原画、写真などとともに展示されます。なかには、美術部に在籍していた中学時代に描いた油絵も。
本展では、アニメーター時代に参加した『風の谷のナウシカ』や『火垂るの墓』、『超時空要塞マクロス』、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』、自身が監督した『トップをねらえ!』、『ふしぎの海のナディア』などの作品が紹介されています。短く編集された映像でも構図の美しさに見とれてしまい、その場を動けなくなってしまうほどでした。
庵野さんが『風の谷のナウシカ』で巨神兵のシーンを担当したときの原画やメモも展示されています。宮﨑駿監督が庵野さんを急かす𠮟咤激励の直筆コメントも残っています。
特に興味深かったのが、上記の仕事を手がける前の、アマチュア時代の作品です。大学生時代に自主制作した『ウルトラマン』は、大好きなウルトラマンにオマージュを捧げた作品。庵野さんが監督を務め、自身がウルトラマンになりきって敵と戦います。ドカーン!バターン!と破壊される街並みのセットがリアルで、とてもミニチュアとは思えませんでした。カット割りもアマチュア離れしています。
おもしろいのが、ウルトラマンなのに顔は丸出しなこと。非現実の世界に生身の人間という現実が入り込み、なんとも言えない味わいを醸し出していました。庵野さんは表情豊かにウルトラマンを熱演しており、これは現実なの?非現実なの?と不思議な感覚にさせられます。しかし、いきいきと楽しそうに演じる庵野さんの表情から、ウルトラマンが好きで好きで仕方ないんだなあ、と伝わってきて、見ている私も楽しくなりました。
影響を受けたさまざまなもの
本展の特徴は、庵野さんが手がけた仕事だけでなく、幼少期から敬愛し大きな影響を受けたアニメや特撮などの作品も紹介されていること。『ウルトラマン』、『仮面ライダー』、『宇宙戦艦ヤマト』、『機動戦士ガンダム』など、実際に使用された衣装を含む貴重な資料が展示されています。
庵野さんは1960年生まれ。特に同世代の方は、こうした作品に夢中になった子ども時代を思い出して懐かしくなるのではないでしょうか?
展示を通して庵野秀明のルーツがわかるとともに、庵野さんは子どもの頃にアニメや特撮が大好きで夢中になり、そのまま大人になったのだな、と感じました。受け取る側にいた頃も、作り手になった今も、大好きという気持ちがガソリンとなり夢中で走ってきたのだと思います。
展覧会では、庵野さんの実家に保管されていた足踏みミシンも展示されています。メカに魅了された原点が、このミシンなのだそうです。
【まとめ】創造の起爆剤は「夢中」
本展では、天才と称される庵野秀明という人物が、どんな作品に感化され、どんな道を走ってきたのかが明らかにされます。膨大な作品をインプットし、ウルトラマンへのオマージュに始まるアウトプットが漏れ出していく様子は、一人の芸術家が誕生する過程そのものでした。
また、創造性を発揮する仕事は、夢中で楽しみ、夢中で作るから生まれるのだと実感しました。アニメや特撮だけに当てはまることではないですね。「夢中」が芸術の起爆剤となることがわかる展覧会です。
展覧会情報
庵野秀明展
会場:あべのハルカス美術館
会期:2022年4月16日(土)~6月19日(日)
休館日:4月18日(月)、5月9日(月)
開館時間:火~金/10:00~20:00、月土日祝/10:00~18:00
※入場は閉館の30分前まで
公式ウェブサイト:https://www.annohideakiten.jp/
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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