LIFE
2026.1.6
【五感】触覚で楽しむ絵本3選。さわることから多様な感覚を体験しよう!
「五感で楽しむ絵本」をピックアップし、ひとつの感覚にフォーカスして、アートの視点から解説するシリーズ。
今回は触覚をテーマに、さわり心地のイメージを豊かに広げたり、しかけに触れて物語への興味が深まったりする3作品をご紹介します。どの絵本も、3歳ごろから楽しめますので、親子で身体を動かしながら、感触の面白さを味わってみましょう!
目次
①『こねて のばして』—さわり心地をイメージしてみよう
ヨシタケシンスケ『こねて のばして』ブロンズ新社、2017年(画像提供:ブロンズ新社)
最初にご紹介するのは、様々なさわり心地をイメージできる『こねて のばして』。パン生地のようなものを叩いたり、巻きつけたり——。男の子が全身を使って自由に遊ぶ様子を見ていると、お子さんも思わず動き出したくなるはずです。
ヨシタケシンスケ『こねて のばして』ブロンズ新社、2017年、p.4,5(画像提供:ブロンズ新社)
こねるものの形がどんどん変化するので、ページをめくるたびに、「次はどうなるんだろう?」と予想外の展開にワクワクします。
作者のヨシタケシンスケ氏は、肌感覚に訴える表現を追求し、字が少なくてテンポが良く、読み聞かせに向いている絵本をテーマに制作したと言います。(※1)
アニメーションのようなリズム感を楽しむうちに、自然と男の子の動作に興味がわき、「どんな触り心地かな?」と想像が膨らむでしょう。
ヨシタケシンスケ『こねて のばして』ブロンズ新社、2017年、p.10,11(画像提供:ブロンズ新社)
手ざわりのイメージに直接働きかける工夫は、キャラクターの動きだけでなく、色のつけ方や表情にも表れています。
ヨシタケ氏は、線画を描いた後、デザイナーに着彩を依頼してひとつの作品を作り上げており、『こねて のばして』は寄藤文平氏が彩色を担当しました。(※2)
均等に塗られた部分と、色鉛筆の濃淡で表現された箇所の対比が、よりリアルな質感を引き出していると言えるでしょう。
また、ヨシタケ氏は、「少ない線でどこまで表現できるか」を重視し、シンプルな線画で奥深い表情を描き出しています。
「例えば、”本当はやりたいんだけれど、やりたくない顔”なのか、”本当にやりたくない顔”なのか。微妙な表情の描き分けはできるようになりたいです」(※3)という言葉から、鋭い観察眼が、洗練された表現につながっていることがうかがえます。
男の子の表情の変化に注目すると、動きの観察から、キャラクターの気持ちを想像する遊びへと発展していくでしょう。お子さんと一緒に、男の子の動作や表情をまねて、さわる感覚とそこから生まれる感情を楽しんでみてくださいね。
(※1)「ヨシタケシンスケ」、日下部行洋編『別冊太陽スペシャル 絵本作家のしごと』平凡社、2024年、p.92
(※2)堀内日出登巳「直近10年でデビューした先端の絵本作家8人」小野明『絵本の冒険「絵」と「ことば」で楽しむ』フィルムアート社、2018年、p.185
(※3)「ヨシタケシンスケ」、勝山俊光編『絵本作家61人のアトリエと道具』玄光社、2017年、p.51
②『しっぽ しっぽ しっぽっぽ』—しかけに触れて物語を味わおう
木曽秀夫作・絵『しっぽ しっぽ しっぽっぽ』フレーベル館、2011年 (画像提供:フレーベル館)
次にピックアップするのは、手を動かして楽しめる『しっぽ しっぽ しっぽっぽ』。ねずみのしっぽがゴムになっている、ユニークなしかけ絵本です。
木曽秀夫作・絵『しっぽ しっぽ しっぽっぽ』フレーベル館、2011年、p.4,5
物語は、主人公のねずみが「もしも、自分のしっぽが長かったら…」と想像するところから始まります。
かばさんの虫歯を抜いてあげたり、わにさんの身長を測ってあげたり——「そんな使い方があるのか」と、読者を驚かせるアイデアが次々と飛び出します。
ページをめくると、ねずみのしっぽが画面いっぱいに伸び、さらに引っ張ると垂れ下がるなど、しかけによって絵の印象が変わるのが面白いポイントです。
「どこまで伸びるかな?」「こうしたらどう見えるかな?」と、自分の手で物語に関われるのが、本作ならではの魅力だと言えます。
木曽秀夫作・絵『しっぽ しっぽ しっぽっぽ』フレーベル館、2011年、p.12,13
『しっぽ しっぽ しっぽっぽ』は、キャラクターの多彩な表情も見どころのひとつ。羊が道路を渡るために車をとおせんぼするページでは、きびきびとした顔つきのねずみと、困り顔の人間たちが、対比されるように描かれています。
また、よく観察すると、すべてのページにカメが登場していることに気づくでしょう。カメは、ねずみとは違う反応を見せる場面も多く、ストーリーに奥行きを感じさせる存在です。
「このシーンではどんな顔をしているかな?」と注目すると、キャラクターの気持ちを想像し、絵本の世界により親しみがわいてきます。
しかけを楽しみながら、お子さんが登場人物に興味を持ち、物語を深く味わう体験ができる一冊です。
③『うどん できた!』—料理の手ざわりを想像してみよう
加藤休ミ・作『うどん できた!』福音館書店、2017年(画像提供:福音館書店)
小麦粉からうどんを作る様子と、素材に触れた時の感覚をリアルに描き出す『うどん できた!』。手の温度や料理の温かさまで伝わってくるようで、思わず「食べてみたい」と感じる一冊です。
加藤休ミ・作『うどん できた!』福音館書店、2017年、p.4,5
作者の加藤休ミ氏は、クレヨンとクレパスを使用し、本物の料理が目の前に現れたかのような、臨場感あふれる作品を生み出しています。
うどんの粉と塩水を混ぜるシーンでは、さらさらとした粉が塊になっていく感触が、生き生きと表現されています。「ふわふわしてたのに ぺとぺと ゆびに くっついた!」というセリフから、手ざわりの変化まで感じられるでしょう。
加藤休ミ・作『うどん できた!』福音館書店、2017年、p.10,11
さらに工程が進むと、手の感覚だけでなく、全身の動きも加わっていきます。生地を踏む動作を「ふみふみダンス」と名付けて、足の裏や身体全体を使って楽しむ様子が描かれています。読者が「実際に作ってみたい」と感じられるような工夫が、細部にちりばめられているのが魅力です。
加藤休ミ・作『うどん できた!』福音館書店、2017年、p.16,17
また、親子のやりとりや子どもの反応が丁寧に描かれている点も、作品のリアリティにつながっていると言えるでしょう。
うどんを足で踏んだ後、生地を寝かせていると、「そろそろ おひるねじかんは おしまいよ」というお母さんの言葉を聞いて、男の子が「うどんだんごー おきてー。」と語りかけます。自分で料理をする体験を通して、愛着がわいていることが伝わってくるシーンです。
本物そっくりに描かれた小麦粉や生地に、自然と手を伸ばしたくなるような、お子さんの好奇心を刺激する絵本です。詳しいレシピも付いていますので、ぜひご自宅でチャレンジしてみてください。
絵本をきっかけに、お子さんと一緒に料理の手ざわりを想像し、自分で作る体験を楽しんでみましょう!
まとめ:さわる楽しさから発見する多彩な感覚
今回は、触覚をテーマに、3つの絵本をご紹介しました。やわらかいもので遊ぶ心地良さや、しかけから物語の世界に入り込む面白さ、料理を作るプロセスを全身で味わう体験など、お子さんが自ら関わりたくなる作品ばかりです。
読み聞かせをしながら、手を動かしたり、同じ動きをまねしてみたりと、さわる感覚を入り口に、お子さんの豊かな感覚の芽を見つけてみてくださいね。
※本記事の画像は、各出版社に許諾を得た上で、提供いただいた画像およびスキャンデータを作成して掲載しています。
《参考文献》
・ヨシタケシンスケ『こねて のばして』ブロンズ新社、2017年
ブロンズ新社 - こねて のばして
・木曽秀夫作・絵『しっぽ しっぽ しっぽっぽ』フレーベル館、2022年(初版:2011年)
しっぽ.しっぽ.しっぽっぽ.|フレーベル館 出版サイト
・加藤休ミ・作『うどん できた!』福音館書店、2020年(初版:2017年)
うどん できた!|福音館書店
・小野明『絵本の冒険「絵」と「ことば」で楽しむ』フィルムアート社、2018年
・日下部行洋編『別冊太陽スペシャル 絵本作家のしごと』平凡社、2024年
・勝山俊光編『絵本作家61人のアトリエと道具』玄光社、2017年
《参考記事》
vol.140 クレヨン画家・絵本作家 加藤休ミさん(前編)(mi:te[ミーテ])
クレヨン画家・絵本作家 加藤休ミさん 絵本作家インタビュー(前編)|mi:te[ミーテ]
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アートと文化のライター。アーティストのサポートや、行政の文化事業に関わった経験を活かし、インタビューや展覧会レポートを執筆しています。難しく考えがちなアートを解きほぐし、「アートって面白い」と感じていただける記事を作成します。
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