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2024.1.10

レンブラント『夜警』は実は「昼」の絵?特徴と見どころをわかりやすく解説

『夜警』は、オランダ画家レンブラントが17世紀に制作した絵画です。全体的に暗い色味のなかに強い光が差し込む明暗の対比は、その後の絵画に大きな影響を与えました。

『夜警』はレンブラントの代表作の1つであり、世界中から愛され続けている作品です。しかし、描かれた主題や絵画技法についてくわしく知らない方も多いはず。この記事では、レンブラントの『夜警』の特徴と見どころを、わかりやすく解説します!

レンブラント『夜警』の歴史

レンブラント『夜警』, Public domain, via Wikimedia Commons

『夜警』は、1642年に完成した作品です。1639年頃に大尉と17人の市民警護隊からレンブラントに依頼されました。作品は非常に大きく、363㎝×437㎝です。レンブラントの代表作であるのはもちろんのこと、オランダの黄金期を代表する絵画でもあります。


絵画制作の目的は警護隊集会場の宴会場に飾るためであり、レンブラントに支払われた報酬は1,600ギルダーだったと言われます。1,600ギルダーという報酬は当時には大金であり、メンバー全員で割って1人当たり約100ギルダーでも非常に高価でした。


レンブラントに依頼された『夜警』のほかにも、警護隊は別の画家に絵画作成の依頼をしていました。大金を支払ってまで集会場を装飾した目的は、フランス王妃マリー・ド・メディチの訪問であったとする説があります。


マリー・ド・メディチはルイ13世から言い渡されたフランス追放令から逃れアムステルダムに来ており、警護隊はマリーを盛大に迎えるために集会場の準備をしていたのでしょう。

レンブラント『夜警』の特徴:ドラマチックな陰影表現

レンブラント『夜警』, Public domain, via Wikimedia Commons

レンブラントの『夜警』で特筆すべき特徴は、ドラマチックな陰影表現です。作品全体を包む薄暗い雰囲気に対し、正面左上から強い光が差し込むことでなにかが起こりそうな独特な緊張感を示しています。


しかし基本的な作品の目的は警護隊メンバーの「肖像画」であり、ドラマチックな主題ではありません。肖像画というと個々人を静的に正面から描く方法が一般的ですが、レンブラントは集団肖像画に動的で自然な場面を取り入れました。17世紀のフランドルやオランダには、集団肖像画を自然な構図で描く風潮が生まれつつあったものの、『夜警』における肖像画の自由な表現は革新的だったでしょう。


『夜警』の制作費用は大尉と警護隊メンバー17人で平等に分割して出資したと言われますが、作品のなかには明らかに光が当たって目立っているメンバーと、人の陰に隠れて顔がよく見えない人物がいます。


また、中央やや左にいる少女は警護隊には関係がないにもかかわらず、大きく注目を集める場所に配置されている点も不思議です。実際、同じお金を払ったのに見えづらい場所に配置されたメンバーからは不平等を非難され、物議をかもしました。

レンブラント『夜警』の見どころ:「夜の絵」ではない!

レンブラント『夜警』, Public domain, via Wikimedia Commons

『夜警』というタイトルは、実は正しくありません。なぜなら、作品は昼のシーンを描いたものだからです。本当のタイトルは『フランス・バニング・コック隊長の市警団』であり、「夜」という言葉は当初含まれていませんでした。


作品全体が夜のように暗く見えるのは、ニスの劣化による黒茶への変色が原因です。ニスの劣化による変色は、絵画の歴史において珍しいことはでありません。油絵の具をカンバスに定着させるためには顔料や油のほかにニス・樹脂を混ぜる必要があり、使用する絵具の材料によっては経年で化学変化が起きるためです。


実際、左上から差し込む光源は電気がない時代において、あまりに明るすぎるようです。光源は太陽であり、室内にいる警護隊に外からの光が差している状態です。作中の警護隊は、出隊するために準備を進めています。必要な道具を揃え、互いにコミュニケーションをとる生き生きとしたシーンが印象的でね。


レンブラントの『夜警』を鑑賞する際は、変色を考慮し「昼のシーン」であることを意識すると、違った発見があるかもしれません。以上、レンブラント『夜警』の特徴と見どころについてでした!

【写真3枚】レンブラント『夜警』は実は「昼」の絵?特徴と見どころをわかりやすく解説 を詳しく見る
はな

はな

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

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