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2024.7.26

ポップアートが分かる! アーティストや作品を分かりやすく教えます!

ポップアートは現代アートのひとつですが、「どんなアートなの?」と聞かれて、すぐに「こういうもの」と明確に答えるのは、意外と難しいのではないでしょうか。この記事では、ポップアートの始まりから現代に至るまでの変遷や、代表的な作品をダイジェストでご紹介します。

ポップアートってどんなアート?

ポップアートは、1950年代のイギリスで生まれ、1960年代にアメリカに広がった美術運動として知られていますが、今もなお、進化し続けているアートジャンルでもあります。では、詳しく見ていきましょう!

ポップアートの誕生

ポップアートは現代アートのひとつで、広告、テレビ、映画、商品パッケージ、雑誌などの商業上、生み出されるビジュアル要素を作品に取り入れています。誕生は、第二次世界大戦後の1950年代のイギリス。戦時中とは異なり経済が安定し、マスメディアや娯楽が発展。社会はあらゆる分野で大量生産・大量消費を推し進め、大衆はそれを享受し始めました。

そんな時代の息吹の中、今までの西洋美術作品と日常とのギャップに違和感を覚えたアーティストたちが、自分たちの身の回りに流通している商品を題材に作品をつくり始めたことで、ポップアートが生まれました。

ポップアートの先駆者、リチャード・ハミルトン(Richard Hamilton,1922-2011 )

リチャード・ハミルトンはイギリスの画家で、1950年代にポップアートの幕開けとされるコラージュを制作しました。その後、版画やコラージュ、デザインなどジャンルを超えた多様な創作活動を続けました。代表作品は「いったい何が今日の家庭をこれほど変え、魅力的にしているのか?」(1956)で、一躍、ポップアートの“生みの親”と称されるようになりました。

Hamilton-appealing2Public domain, via Wikimedia Commons.

ポップアートの主な特徴

当時、ハミルトン自身がポップアートについて「通俗的、一過性、使い捨て、低価格、大量生産的、若者向け、機知があり、セクシーで、トリックがあり、華やかで、ビッグビジネス」と定義しています。

ハミルトンは晩年になって、「今でもこの定義は、実に多くのアーティストが受け入れるようになり、きわめて正確だったと思う」と語っているように、11項目の定義のほとんどは現在も当てはまっているでしょう。しかし、ポップアートの有名な作品が、数十億円から数百億円という高額で落札されていることを鑑みれば、「一過性、使い捨て、低価格」の定義は、曖昧になっているのかもしれませんね。

ポップアートを代表する巨匠とその作品

アンディ・ウォーホル (Andy Warhol, 1928-1987)

銀髪のカツラがトレードマークのアンディ・ウォーホルは、アメリカの画家、版画家、芸術家です。ポップアートの最も有名なアーティストのひとりであり、視覚芸術と文化に革命をもたらしました。雑誌『ヴォーグ』などの広告やイラストといったコマーシャルアートで成功を収めた後、ファインアートへと転向しました。

Andy Warhol by Jack MitchellPublic domain, via Wikimedia Commons.

代表作:
「キャンベルスープの缶」(Campbell's Soup Cans)

ウォーホルは、なぜキャンベルのスープ缶を描いたかと問われ、「僕は自分が美しいと思うものを、いつも描いている。(中略)僕はスープを描いていますが、それは僕がスープを好きだから」と答えています。


「マリリン・モンロー」(Marilyn Monroe)

MarilyndiptychPublic domain, via Wikimedia Commons.

マリリン・モンローの死後、すぐに映画『ナイアガラ』のスチール写真からモンローの肖像を切り取って作品を発表。以後、色彩を変えてたくさんのシリーズ作品を生み出しました。

特徴:マスプロダクションの手法を用いて、同じ画像を繰り返し使うシルクスクリーン技法を多用。彼の作品は、消費文化や有名人崇拝を批判的に描いています。

影響:ウォーホルは、アートがどのように作られ、消費されるかを根本的に変え、大衆文化とアートの境界を曖昧にしました。

ロイ・リキテンスタイン (Roy Lichtenstein, 1923-1997)

ニューヨーク生まれのロイ・リキテンスタインは、コミックブックのスタイルを取り入れたポップアートの巨匠として知られています。彼は美術大学の修士号を取得後も大学に残り、講師などを勤めていました。
自分の子どもにミッキーマウスの漫画を描いたときに、従来の絵画より漫画のほうがインパクトがあることに気づき、アメコミのコマを拡大したようなポップアートを手がけていきます。

ロイ・リキテンスタインPublic domain, via Wikimedia Commons.

代表作:
「ヘアリボンの少女」(Girl with Hair Ribbon)

1995年、東京都現代美術館が約6億円で購入し、現在も同館に所蔵されています。アメコミやテレビドラマのヒロインの顔をテーマにした作品群の中で、代表作と言われています。



「マスターピース」(Masterpiece)

Masterpiece (Lichtenstein)Public domain, via Wikimedia Commons.

漫画の一コマを切り出した作品ですが、吹き出しを「この絵は傑作よ! 近いうちにニューヨーク中があなたの作品を求めてくるわ!」と書き換え、自分自身の成功を予言したと話題になりました。


特徴:コミックブックの絵柄を模した点描法(ベンデイ・ドット)と、明快な輪郭線が特徴。漫画のようなイメージを拡大し、キャンバスに再現することで、大衆文化を芸術の領域に引き上げました。

影響:漫画や広告といった大衆文化のビジュアル言語を真剣に受け止め、それを美術の文脈に移し変えることで、現代美術に新しい視点を提供しました。

ジャスパー・ジョーンズ (Jasper Johns, 1930-)

ジャスパー・ジョーンズはアメリカの画家で、徴兵されて陸軍に入り、1952年に除隊。1954年頃から、国旗、数字、標的などを題材にした絵画を発表していきます。ポップアートや新表現主義の前身とも言えるアーティストであり、既成概念にとらわれない表現で知られています。

ジャスパー・ジョーンズPublic domain, via Wikimedia Commons.

代表作
「旗」(Flag)

ジャスパー・ジョーンズは、1954年に自分が星条旗を描く夢を見たそうで、それがきっかけとなり、星条旗を描いたシリーズ作品を数多く生み出しています。



「4つの顔のある標的」(Target with Four Faces)

画面上部に立体的な4つのターゲットを配置したこの作品のほか、たくさんの標的シリーズを描いています。

特徴:日常的なオブジェクトやシンボル(旗やターゲットなど)を題材にし、それをキャンバス上に再現することで、物の本質や意味を問い直す作品が多いです。また、着色した蜜蝋を溶解して表面に焼き付ける絵画技法である、エンカウスティック技法を用いることが特徴です。

影響:ジョーンズは、抽象表現主義からポップアートへの橋渡しをする存在として評価されていて、コンセプチュアルアートやミニマルアートにも影響を与えました。

日本にもポップアートの旗手たちが!

日本でも多くのポップアートのアーティストが誕生しています。国際的にも評価が高い日本のアーティストたちの中で、草間彌生、横尾忠則、村上隆をご紹介します!

草間彌生 (Yayoi Kusama, 1929-)

草間彌生Public domain, via Wikimedia Commons.

代表作
「南瓜」(Pumpkin)

カボチャは、子どもの頃から愛してやまない存在だったようで、ドットや網目と同様、繰り返し描き続けている題材です。この作品は、草間の代名詞でもあるドットをカボチャに、背景に網目模様を配し、「これぞ草間彌生!」という作品になっています。

特徴:無数の水玉(ポルカドット)や反復パターンが特徴。病気の苦しみを昇華させて、ひとつのパターンを繰り返すことで、「無限」「永遠」という独自の世界観を創り出しています。

影響:草間彌生は、現代アートにおいて最も影響力のあるアーティストのひとりであり、彼女の作品は世界中の美術館やギャラリーで展示されています。

横尾忠則 (Tadanori Yokoo, 1936-)

兵庫県生まれの横尾忠則は、ポスターアートやイラストレーションで知られるアーティストで、1960年代から1970年代にかけての日本のグラフィックデザイン界に大きな影響を与えました。1969年にパリ青年ビエンナーレ版画部門大賞を受賞。
1980年7月にニューヨーク近代美術館のピカソ展に衝撃を受け、1982年に「画家宣言」をして画家に転向しています。

代表作
「横尾忠則ポスター」(Yokoo Tadanori Posters)

作品上部中央に横尾本人の首吊り姿、作品の下部中央には「29歳で頂点に達し、ぼくは死んだ」という英文のコピーを組み合わせたこのポスターは、自分自身の広告として発表。この作品が実質的なデビュー作と称され、彼の代表作のひとつとなりました。


特徴:鮮やかな色彩、サイケデリック・キッチュ・シュールなイメージ、そして東洋と西洋の要素を融合させたスタイルが特徴です。彼の作品は、視覚的に強烈で、見る者に強い印象を与えます。

影響:横尾の作品は、日本だけでなく国際的にも評価され、グラフィックデザインとアートの境界を越えた独自のスタイルを確立しました。

村上隆 (Takashi Murakami, 1962-)

東京都生まれの村上隆は、アーティスト、キュレーター、コレクター、映画監督など、今もなお、多岐にわたる活躍ぶりを見せています。漫画家になりたかったところ挫折をしてしまい、日本画を学ぶために東京藝術大学に入学し、同大学大学院まで進学。博士後期課程を修了しています。
スーパーフラット理論を提唱し、日本の伝統美術とポップカルチャー(特に、アニメや漫画)を融合させた作品で知られています。2010年には、ヴェルサイユ宮殿にて、現代芸術家として3人目となる個展を開催しました。

村上隆Public domain, via Wikimedia Commons.

代表作
「お花」(Flowers)

見た瞬間、思わず笑みが溢れるような楽しげなお花たちは、村上隆の代名詞とも言えるでしょう。彼が東京藝術大学を受験する際に、毎日のようにお花を描いていたエピソードに由来しているそうです。


特徴:村上が提唱するスーパーフラット理論とは、平坦で余白が多いなど、遠近法を使わない伝統的な日本画やアニメのセル画に共通する特徴を抽出した理論のこと。この概念を通じて、日本のポップカルチャーと伝統美術の融合を図り、その独特の美学を確立しました。

影響:現代美術の世界で広く認知されています。彼の作品は、アートと商業の境界を超え、ファッションや音楽など様々な分野にも影響を与えています。

日本のポップアートは今も進化し続けている!

現代の日本の若手ポップアーティストの中には、ポップアートの伝統を受け継ぎつつも、独自の世界観を確立し、活躍している人がたくさんいます。今回は、渡邉城大、仲衿香、KYNE(キネ)をご紹介します!

渡邉城大(Shirota Watanabe,1983-)

愛媛県生まれ。2009年から2019年まで、『AKABOSHI-異聞水滸伝-』(天野洋一)、『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦)、『GIANT KILLNG』(ツジトモ)の漫画アシスタントを経て、ポップアーティストに転身。浮世絵の北斎漫画から進化した日本漫画における線表現、余白の美学、侘び寂びの精神などの研究と、それを追求することをテーマにして、作品を創造しています。

仲衿香 (Erika Naka,1994-)

仲衿香は長野県生まれ。2019年、東京造形大学絵画専攻卒業。目にした記号や日常生活の事物を絵画に落とし込み、アクリル絵具を厚塗りした作品を制作しています。「CAF賞2018」で白石正美賞を受賞。

KYNE (キネ,1988〜)

福岡県出身のKYNE(キネ)は、日本画をベースとした女性のポートレート画を描くアーティストです。現代的でクール、媚びない美しさを持つ女性をモノクロで描いた作品は、男女問わず評価が高まっています。
地元で描いていたストリートアートが話題になり、2006年ころから活動を開始しています。大学では日本画を学び、卒業後は日本画で学んだことをストリートアートに落とし込みたいと思うようになり、アクリルを使って線画を描き始めます。KYNE独特の現在のスタイルが確立したのは2010年頃。

まとめ

いかがだったでしょうか? 今回、見てきた様に、ポップアートはその名を知らなくても、どこかで一度は目にしていたりと、意外と身近な存在だったと思えたのではないでしょうか。

今回の記事を読んで、ポップアートが時代とともに変容していく様を感じたり、その魅力を発見していただけたら嬉しいです。ぜひ、あなたの親しみやすいところ、入りやすいところから、ポップアートを楽しんでみてください!

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国場 みの

国場 みの

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建築出身のコピーライター、エディター。アートをそのまま楽しむのも好きだが、作品誕生の背景(社会的背景、作者の人生や思想、作品の意図…)の探究に楽しさを感じるタイプ。イロハニアートでは、アートの魅力を多角的にお届けできるよう、楽しみながら奮闘中。その他、企業理念策定、ブランディングブックなども手がける。

建築出身のコピーライター、エディター。アートをそのまま楽しむのも好きだが、作品誕生の背景(社会的背景、作者の人生や思想、作品の意図…)の探究に楽しさを感じるタイプ。イロハニアートでは、アートの魅力を多角的にお届けできるよう、楽しみながら奮闘中。その他、企業理念策定、ブランディングブックなども手がける。

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