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2025.1.20

山水画の世界へようこそ!自然と心が調和するアートの魅力

「山水画」という言葉を聞いたことはあるけれど、白黒の絵というイメージしか湧かない…

そんな方も多いのではないでしょうか。山水画は、「山」と「水」を描いたアートですが、そこには自然の美しさだけでなく、画家たちの深い思想や巧みな技術が詰まっています。

この記事では、アート初心者でも楽しめるように、山水画の基本的な特徴や鑑賞のコツ、日本と中国の山水画の違いをわかりやすく解説します。山水画を詳しく知るきっかけがつかめて、鑑賞がもっと楽しくなりますよ。

最後まで、読んでみてください!!

1. 山水画とは?初心者にもわかる基本解説

早春図:早春図、北宋、郭煕, Public domain, via Wikimedia Commons.

アート初心者がまず気になるのは「山水画とは何か」という基本的な疑問です。山水画とは、深い山や流れる川など自然の景色を墨で描いたものです。

山水画が生まれたのは唐の時代(9世紀ごろ)と言われています。墨を作る技術が向上し、墨によって多彩な表現が可能になりました。

山水画は、平安時代に禅の教えとともに日本に伝えられたそうです。その後、日本独自の完成でアレンジされ発展していきます。

2. 山水画と水墨画の違いを理解しよう

雪舟:天橋立図,:『天橋立図』(京都国立博物館), Public domain, via Wikimedia Commons.

初心者が混乱しがちな点の一つが、「山水画」と「水墨画」の違いです。

• 山水画:「テーマ」に基づいた分類で、山や水、樹木などを中心に描かれるもの
• 水墨画:「技法」に注目した分類で、墨を使って描くスタイル全般を指します。

水墨画には、山水、人物、花鳥の3種類があります。水墨画の中に山水画が含まれているということです。

山水画のほとんどは、現実の景色を描いたものではありません。描き手が思い描く物語や理想などが表現されています。

水墨画特有の濃淡やぼかしを活用して描かれた「余白」も山水画の特徴と言えます。

3. 日本と中国の山水画の違いを知る

中林竹洞画・頼山陽賛「山水図」:中林竹洞画・頼山陽賛「山水図」, Public domain, via Wikimedia Commons.

中国の山水画

中国の山水画の多くは、線で形を表しています。壮大で哲学的な雰囲気が特徴です。描かれる山や川は実際の風景というより、理想化された自然の姿です。画家たちは自然を観察するだけでなく、精神世界を反映した独自の景観を描いています。

代表的な画家には、北宋時代の范寛(はんかん)や、南宋時代の馬遠(ばえん)が挙げられます。作品には、巨大な山々がそびえる大胆な構図や、細やかな筆遣いが見られます。

日本の山水画

日本の山水画は、輪郭を描かずに墨の濃淡で形を表している作品が多くみられます。中国の影響を受けながらも、より写実的で温かみのある表現が特徴的です。中国の作品に比べて、繊細で人間の感情に寄り添った表現が重視されます。

代表的な画家は、室町時代の雪舟(せっしゅう)です。日本の山水画は、個々の風景の美しさを際立たせることに重きを置いています。

4. 初心者におすすめの山水画家と代表作品

范寛(はんかん):「谿山行旅図(けいざんこうりょず)」

谿山行旅図:Fan Kuan - Travelers Among Mountains and Streams - Google Art Project, Public domain, via Wikimedia Commons.

范寛(はんかん)は、10世紀後半から11世紀初頭に活躍した画家です。

范寛は主に現在の中国・陝西省あたりで活動しており、山の荘厳さを大胆かつ細密に表現する手法が特徴です。この時代の他の画家たちと同様、自然を神聖視し、その威厳を描くことに重点を置いていました。

「谿山行旅図」は、11世紀の制作と考えられています。この先品は、本人の名款のほか、宋代、明代、清代の押印もあり、長きに渡り人々を魅了してきたものといえます。この作品を模写した画家が多かったのだとか。

馬遠(ばえん):「風雨山水図」

風雨山水図:風雨山水図, Public domain, via Wikimedia Commons.

馬遠(ばえん)は、南宋時代(1127年~1279年)の後期に活躍した画家です。おおよそ 12世紀末から13世紀初頭にかけて活動していたとされています。

馬遠は、南宋の宮廷画院に所属し、主に皇帝のために絵画を制作しました。彼のスタイルは、南宋時代の特徴である「部分の美」に重点を置き、画面の一部に集中して風景を描き、余白を大胆に活用することで知られています。

雪舟(せっしゅう):「秋冬山水図」

秋冬山水図:Autumn and Winter Landscape.jpg , Public domain, via Wikimedia Commons.

雪舟は、室町時代中期(15世紀)に活躍した日本を代表する水墨画家です。生没年はおおよそ1420年~1506年とされています。

雪舟は、主に室町幕府が支配する時代に活動しました。この時代、日本は中国・明との貿易(勘合貿易)が盛んで、雪舟自身も一度明に渡り、中国の画家から直接指導を受けた経験があります。帰国後は、日本独自の美意識を融合させた水墨画を完成させ、独自のスタイルを築き上げました。

5.山水画の鑑賞ポイント

李成:喬松平遠園:喬松平遠図, Public domain, via Wikimedia Commons.

山水画を楽しむためには、単に美しい風景を描いているだけでなく、その中に込められた技術や思想、物語性を理解することで、より深い感動を得ることができます。以下のポイントに注目して鑑賞してみましょう。

1. 墨の濃淡と余白

山水画において最も重要な要素の一つに、墨の濃淡と余白を活かした表現があります。墨の濃さや薄さを使い分けることで、画家は風景の立体感や奥行きを描き出します。

例えば、山の稜線や木々には濃い墨を用いて輪郭を強調し、力強さを表現します。一方、霧や遠景の山々は薄墨やぼかしを用いることで、曖昧で柔らかな印象を作り出します。この対比が、山水画独特の「深さ」と「静寂感」を生み出すのです。

余白の活用も見逃せません。山水画では、画面全体を描き込むのではなく、あえて白い部分を残して空間を作り出します。これにより、鑑賞者はその余白に光や空気、水、風などを感じ、自然の広がりを想像することができるのです。画家が意図的に描かなかった部分こそが、鑑賞者の想像力を刺激し、絵画の魅力を高めています。

2. 画家のサイン

山水画を観賞する際には、画家のサイン(署名)や印章(ハンコ)にも注目してみましょう。サインには、その作品を描いた画家の名前が書かれていることが多く、時には画家の心情や願いが込められた詩句が添えられていることもあります。

例えば、北宋の画家范寛(はんかん)の「谿山行旅図」には、彼の名前が控えめに記されています。一方、日本の雪舟(せっしゅう)の作品では、彼の独特な署名や印章を見ることができます。これらは、画家自身の個性や時代背景を知る手がかりになります。

サインや印章から、どの流派に属していたのかを知ることができる場合もあります。中国では、南宋画院や明時代の文人画家たちがそれぞれ異なるサインスタイルを持っていました。

一方で、日本では禅僧の雪舟のように、精神性を重視した独自の署名が特徴的です。サインを手がかりにして、画家のバックグラウンドや作品が制作された時代の文化を知ると、山水画がより面白く感じられるでしょう。

3. ストーリー性

山水画は単なる風景画ではなく、多くの場合、そこには画家が描きたかった物語や象徴が隠されています。たとえば、中国の山水画では、山は「永遠」や「堅固さ」を象徴し、水は「流動性」や「生命の循環」を表現しています。このような象徴性は、東洋思想や禅の精神と深く結びついており、絵の中に隠された哲学的なテーマを読み解く鍵になります。

描かれた風景が現実の場所をモデルにしている場合もあります。例えば、雪舟の「天橋立図」は、京都府の天橋立を題材にしていますが、その風景の中には、人々の営みや自然との共存が詩的に描かれています。

一方、中国の馬遠(ばえん)の「踏歌図」では、楽しげに踊る人々を描き、自然の中での人間の喜びや調和が表現されています。

鑑賞時には、画面に描かれた細部や配置をじっくり観察し、画家が伝えたかった感情や思想を探ってみましょう。その背景にある物語や象徴を知ることで、山水画の奥深い魅力をより味わうことができます。

縦長の山水画の場合、作品の下から上にみていくのがオススメですよ。物語の時間を旅しながら絵を楽しめます!

5. 週末に行きたい!山水画が楽しめる施設

狩野探幽「四季山水図屏風」,四季山水図屏風-Landscapes of the Four Seasons MET DP-12434-004 , Public domain, via Wikimedia Commons.

山水画はその芸術的価値だけでなく、歴史的・文化的資料としての側面が重視されるため、美術館よりも博物館に多く所蔵されています。歴史あるお寺の襖などにも山水画が描かれているので、参拝ついでにチェックしてもいいですね。

東京国立博物館(東京都)

雪舟「秋冬山水図 」(室町時代・15世紀末~16世紀初)
狩野正信「山水図」(室町時代・16世紀)
伝周文
竺雲等「山水図」(室町時代・15世紀)など
東京国立博物館HP

京都国立博物館(京都府)

王原祁「倣元四大家山水図」(中国  清時代 17世紀)
伝徽宗「秋景冬景山水図」(中国 南宋時代 12世紀)
京都国立博物館HP

奈良国立博物館(奈良県)

伝周文筆・江西龍派賛・信忠以篤賛・心田清播賛「山水図(水色巒光図)」(15世紀)

三井寺(滋賀県)

円山応挙「法明院襖絵 山水図」(明和二年 1765頃)
三井寺HP

臨済宗天龍寺派 福寿山・金剛寺(京都府)

作者詳細不明「山水図」(国指定重要文化財13幅)
臨済宗天龍寺派 福寿山・金剛寺HP

まとめ

山水画は「自然の美しさ」と「精神性」を融合させた奥深い芸術です。水墨画の技法や日中の文化的背景を知ることで、より深く楽しむことができます。次の週末には、ぜひ美術館に足を運び、実物の山水画の迫力を体感してみてください!!

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加藤 瞳

加藤 瞳

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本の執筆をメインに活動中。イロハニアートでは「難しい言葉をわかりやすく。アートの入り口を広げたい」と奮闘する。幼い頃から作品を作るのも見るのも好き。40代の現在も、自然にある素材や家庭から出る廃材を使って作品を作ることも。美術館から小規模のギャラリーまで足を運んで、アート空間を堪能している。

本の執筆をメインに活動中。イロハニアートでは「難しい言葉をわかりやすく。アートの入り口を広げたい」と奮闘する。幼い頃から作品を作るのも見るのも好き。40代の現在も、自然にある素材や家庭から出る廃材を使って作品を作ることも。美術館から小規模のギャラリーまで足を運んで、アート空間を堪能している。

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