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2025.4.2

メディアアートとは?先進的な現代アートで新しい発見を!

光、音、映像、テクノロジー。これらを駆使して生まれるメディアアートは、私たちに新しいアート体験をもたらしてくれます。
インタラクティブな作品や、美しいインスタレーション作品など、その表現方法は多種多様です。

本記事では、メディアアートの基礎知識から、楽しみ方、代表的なアーティストやおすすめの展示施設までご紹介します。

リンツで開催されたアルスエレクトロニカ2012の期間中、アルスエレクトロニカセンターにて公開されたメディアアートリンツで開催されたアルスエレクトロニカ2012の期間中、アルスエレクトロニカセンターにて。オーバーエスターライヒ州, At Ars Electronica Center during Ars Electronica 2012 in Linz, Upper Austria, Public domain, via Wikimedia Commons.

メディアアートとはどういうもの?

メディアアートは、映像、音、光、センサーなど、多様なメディアを組み合わせ、インタラクティブ性や体験性を重視する傾向の作品を指します。鑑賞者が作品に触れたり、参加したりすることで、作品が変化したり、新しい体験が生まれたりする点が大きな特徴です。

「2つのカテゴリーの空間」ハンナ・ハースラハティ(2006年)「2つのカテゴリーの空間」は、インタラクティブな影の投影です。ハンナ・ハースラハティ(2006年), Space of Two Categories is an interactive shadow projection by Hanna Haaslahti (2006), Public domain, via Wikimedia Commons.

「メディア芸術」や「メディア表現」と表すこともあり、これらの言葉は、メディアアートが単なる美術作品ではなく、技術・文化・社会など、さまざまな要素を含む複合的な表現であることを示しています。

また、メディアアートはデジタル技術を駆使したアート作品全般を指しますが、単にデジタル技術を用いた「デジタルアート」とは異なります。

メディアアートが「メディア」と呼ばれるのは、作品の制作や表現に多様なメディアが不可欠であるためです。テクノロジーの進化とともに表現方法も多様化しており、AIやVRなど、最新の技術を活用した作品も登場しています。

メディアアートの歴史

メディアアートは20世紀に入ってから、映像や音響技術の発展とともに、実験的な芸術表現が始まったことを起源とします。コンピュータ技術の進歩に伴って大きく発展し、近年にはメディアアートの展覧会やイベントが開催されるようになり、一般の人々にも広く知られるようになりました。

文化庁ではメディア芸術分野の振興を図るために、メディア芸術祭の開催や、若手アーティストの育成などの取り組みを行っています。

メディアアートの作品例

メディアアートの作品には主にどのようなものがあるか、主要なジャンルに分けて4つご紹介します。

映像やアニメーションを使用したもの

Realtime Family。オンライン投影によるメディアアート作品Realtime Familyはオンライン投影によるメディアアート作品(2015年), Realtime Family is media artwork with online projection (2015), Public domain, via Wikimedia Commons.

映像やアニメーションは、メディアアートの代表的な表現手法の一つです。例えば、プロジェクションマッピングのように建築物や自然現象に映像を投影することで、現実世界と仮想世界を融合させた作品や、アニメやゲームといったポップカルチャーと組み合わせて、独自の発展を遂げている作品などがあります。

音楽を使用したもの

左から右へ:DJ Stylus(Gabriel Willow)、DJ Shakey(Julie Covello)、そしてNina Katchadourianが、2017年2月2日にペンシルベニア州フィラデルフィアのテンプルコンテンポラリーのイベントスペースで電話の保留音の録音をリミックスしている左から右へ:DJ Stylus(Gabriel Willow)、DJ Shakey(Julie Covello)、そしてNina Katchadourianが、2017年2月2日にペンシルベニア州フィラデルフィアのテンプルコンテンポラリーのイベントスペースで電話の保留音の録音をリミックスしている, From left to right: DJ Stylus (Gabriel Willow), DJ Shakey (Julie Covello), and Nina Katchadourian remix recordings of telephone hold music at a Temple Contemporary event space in Philadelphia, Pennsylvania on February 2, 2017, Public domain, via Wikimedia Commons.

音楽はメディアアートにおいて、聴覚的な体験を提供する重要な要素です。電子音楽、サウンドインスタレーション、DJパフォーマンスなど、多様な表現手法があります。

近年では、映像や照明などと組み合わせたDJパフォーマンスも増えており、視覚と聴覚の両方で楽しめるメディアアートとして注目されています。

プログラミング・AI・VRなどの技術を取り入れたもの

We are ping, they are pong(私たちはピン、彼らはポン)は、2013年にヘルシンキのHeino Galleryで展示されたハンナ・ハースラハティによるメディアアート作品We are ping, they are pong(私たちはピン、彼らはポン)は、2013年にヘルシンキのHeino Galleryで展示されたハンナ・ハースラハティによるメディアアート作品, We are ping, they are pong is a Media Artwork by Hanna Haaslahti exhibited in Heino Gallery, Helsinki, 2013, Public domain, via Wikimedia Commons.

プログラミングをはじめとするIT技術や、AI、VRなどの先進技術は、メディアアートの表現領域を大きく広げています。

具体的には、テクノロジーによって映像や音楽を生成あるいは操作したり、AIの能力や対話に基づいた作品づくりをしたり、VRによる仮想現実空間の体験を提供したりと、技術とアートの融合による新たな表現が次々と生まれています。

インタラクティブな体験を重視したもの

オーロラ・シーゲルがインタラクティブな科学アート作品のプロトタイプの部品をテスト中 -フォトニック・ペンデュクタオーロラ・シーゲルがインタラクティブな科学アート作品のプロトタイプの部品をテスト中 -フォトニック・ペンデュクタ, Aurora Siegel testing components for interactive scientific art prototype -Photonic Pentiductor, Public domain, via Wikimedia Commons.

インタラクティブアートは、鑑賞者が作品に触れる・参加することで作品が変化したり、新しい体験が生まれたりするメディアアートです。鑑賞者の身体的な動きや、センサーによる情報などを活用し、鑑賞者と作品とのインタラクション(対話的作用)を生み出します。

鑑賞者の振る舞いが作品の一部となり、作品と一体化するような体験は、身体を通して得られる感覚や体験を示す身体性に富んでいます。

メディアアートの主なクリエイター

メディアアートの主なクリエイターあるいはアーティストとして、主要な人物や団体をご紹介します。

落合陽一

落合陽一(おちあいよういち)は1987年生まれのメディアアーティストで、筑波大学准教授を務める研究者でもあります。光や音、映像と物質の垣根などに関心を持ち、新しい自然観として「デジタルネイチャー」を提唱しながら、さまざまな表現形式を探求しています。

真鍋大度

真鍋大度(まなべだいと)は1976年に東京で生まれ、音楽家の両親のもと、音楽とプログラミングに親しんで育ったアーティストです。テクノロジーと身体表現、生命と機械の融合などに関心を持ち、DJの経験を活かしたパフォーマンスが注目されています。

2006年にクリエイティブ集団として株式会社ライゾマティクスを設立し、2024年には大阪のうめきた地区に新たに誕生したアートスペース「VS.」で個展を開催するなど、幅広い活動を展開しています。

参照:Daito Manabe

チームラボ株式会社(teamLab Inc.)

チームラボの通称で親しまれるチームラボ株式会社は、2000年に東京大学・東京工業大学の大学院生・学部生が集まり、文京区西片に設立したことを始まりとする会社です。

国内外に拠点を持ち、水に入るミュージアム「チームラボプラネッツ」や、麻布台ヒルズに開業した「森ビル デジタルアート ミュージアム」など、写真映えスポットとしても人気の高い展示施設を数多く展開しています。

サイエンスとテクノロジー、そしてデザインとアートが融合した独自の技術や、世界観を強みとしています。

メディアアートに触れられる場所

メディアアートは国内外の展覧会や芸術祭などで触れることができます。主な場所や施設をまとめました。

teamlab -舞动光影-teamlab -舞动光影, Public domain, via Wikimedia Commons.

美術館・博物館・ギャラリー

美術館や博物館などのミュージアムの展覧会では、メディアアートの作品が展示されることがあります。特に、東京都の森美術館東京都現代美術館など、現代アートを扱う美術館でよく出会えるはずです。

また、中にはメディアアートを専門とした展示施設もあります。例えば、横浜マリンタワーの30階にあるメディアアートギャラリーは、横浜の夜景とデジタルアートが融合する空間を売りにしています。また、東京都・有楽町のSusHi Tech Squareはデジタルを切り口にした展示施設で、誰でも無料で入場可能です。

美術大学・芸術大学のイベント

美術大学・芸術大学のイベント
メディアアートを扱う美術大学・芸術大学では、一般の方でも、卒業制作展やイベントなどでそれらの作品に触れられます。

特にメディアアートの分野で世界的に知られているのは、岐阜県が2001年に開学した大学院のみで構成される大学、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]です。

その他にも、国公立・私立を問わずさまざまな大学で、メディアアートの学科や専攻、授業などが展開されています。

芸術祭

ARSエレクトロニカ、オーストリア・リンツARSエレクトロニカ、オーストリア・リンツARS Electronica Linz Austria, Public domain, via Wikimedia Commons.

メディアアートを楽しもう!

テクノロジーの進化とともに、常に新しい表現を生み出し続けているメディアアート。きっと私たちの日常に、新たな発見と驚きをもたらしてくれるでしょう。

また、アート初心者の方でも、難しく考えず直感的に触れられるのがメディアアートの魅力でもあります。作品解説やアーティストの思想を知れば、その面白さはさらに深まっていくはず。

メディアアートを今まであまり見てこなかった人も、この機会に体験してみませんか?

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さつま瑠璃

さつま瑠璃

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文筆家(ライター)。芸術文化を専門に取材執筆を行い、アートと社会について探究する書き手。SNSでも情報を発信する他、さつまがゆく Official Podcastでは取材執筆にまつわるトークを配信中。

文筆家(ライター)。芸術文化を専門に取材執筆を行い、アートと社会について探究する書き手。SNSでも情報を発信する他、さつまがゆく Official Podcastでは取材執筆にまつわるトークを配信中。

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