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2026.10.22

紅葉シーズンに愛でたい!赤が主役の名画たちで秋を感じよう

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秋が深まり、紅葉シーズンが近づいてきました。

1年でいちばん「赤色」を見上げるこの季節。
アート作品にも、赤色が印象的な名画がたくさんあります。

この記事では、西洋画から浮世絵、そして肖像画にいたるまで、「赤」が印象的な作品をご紹介します。

秋に色づく自然の赤を愛でる感覚を、絵画でも楽しんでみませんか。

アンリ・マティス作『赤いアトリエ』~「赤」に浸る~


アンリ・マティス『赤いアトリエ』, Public domain, via Wikimedia Commons.

アンリ・マティス(1869-1954)は、その強烈な色彩によって美術史に大きな影響を与えた人物です。

20世紀初頭におこった激しい原色の対比と、大胆な筆致を特色とする絵画運動・フォーヴィズム(野獣派)の中心人物として、フランス・パリで頭角を現したマティス。その後ニースに移り住んだあとも、様々な作品を精力的に生み出していきました。

特に、色が塗られた紙を切り取り、それを紙に貼り付ける「切り紙絵」に積極的に取り組んだことで知られています。晩年には、その手法を活かして南フランス・ヴァンスにあるロザリオ礼拝堂のステンドグラスを手がけました。

そんなマティスが1911年に制作した『赤いアトリエ』は、彼の激しい色彩感覚がふんだんに表現された作品です。

実際のアトリエを描いた作品ですが、そのすべてが赤に包まれており、アトリエに置かれたものたちがくっきりと浮かび上がってくるような不思議な感覚を抱きます。

マティスはかつて「この赤い色をどこから得たのか、正直なところ自分でもわからない」と、語っています。強烈な赤に包み込まれながら、その不可思議な美しさを味わえる1枚です。


フィンセント・ヴァン・ゴッホ作『赤い葡萄畑』~実りの「赤」~


フィンセント・ヴァン・ゴッホ『赤い葡萄畑』, Public domain, via Wikimedia Commons.

フィンセント・ヴァン・ゴッホ(1853-1890)と言えば、アートに詳しくない方でも一度は聞いたことのある名前かもしれません。日本でもたびたびゴッホの展覧会がひらかれ、多くの人々が美術館に足を運んでいます。

現代でこそ唯一無二の画家として世界中の人々に愛されているゴッホですが、生前は無名で苦労の多い人生でした。27歳で画家の道を志すものの、その後精神の病に冒され、わずか37歳という短い生涯を終えました。

『赤い葡萄畑』は、ゴッホが死去する前年に制作された作品です。ゴッホの存命中に購入された数少ない作品のひとつとしても知られており、現在はロシアの首都・モスクワにあるプーシキン美術館が所蔵しています。

本作には、夕暮れ時の葡萄畑で収穫作業をする人々の姿と、ぎらぎらと燃える夕陽、そしてその光を映した川の水面などが描かれています。

1枚の絵の中に、ところどころ真っ赤に染まった部分と、もっと深い赤紫、そして黄色が同居しています。

この3色はまさに、日本でみられる紅葉の色。当時ゴッホが暮らしたアルルの風景を描いた1枚ですが、その色彩が日本の秋にも通ずるように感じられます。


葛飾北斎作『凱風快晴(赤富士)』~燃えるような「赤」~


葛飾北斎『凱風快晴(赤富士)』, Public domain, via Wikimedia Commons.

日本一の高さを誇る山・富士山。主に晩夏から初秋にかけての、朝日に照らされて赤く染まった富士山を「赤富士」といいます。

この状態を目撃できるのはわずかな時間ということもあり、厄除けや商売繁盛などの願いが叶うという「縁起物」だとされています。

その真っ赤に燃えさかるような姿を絵の中に閉じ込めたのは、葛飾北斎(1760-1849)。江戸時代に活躍した画人で、その90年の生涯において読本の挿絵、錦絵、肉筆画などのさまざまなジャンルの絵を手がけました。

北斎の作品は1867年のパリ万国博覧会で紹介され、その大胆な構図や明るい色彩はヨーロッパ画壇の人々を虜にしました。現在でも世界中で愛される「印象派」誕生のきっかけになったと言われています。

本作『凱風快晴』は、北斎の代表作として知られる『冨嶽三十六景』の1枚です。

このシリーズで最も有名な1枚『神奈川沖浪裏』で描かれている姿のように、富士山と言えば冴え冴えとしたブルーと、頂上に降り積もる雪の美しい白の印象が強いかもしれません。


葛飾北斎『神奈川沖浪裏』, Public domain, via Wikimedia Commons.

しかし、『凱風快晴』で北斎が描いたのは、燃え盛る力強い姿の富士山。その勇壮な姿は非常にドラマチックで、眺めていると力が湧いてくる1枚です。

富士山の後ろに広がる青い空とのコントラストが、早朝のすがすがしい空気を演出しています。自然の持つ力強さや生命力を、ありありと感じてみてはいかがでしょうか。


歌川広重作『名所江戸百景 浅草金龍山』~おめでたい「赤」~


歌川広重『名所江戸百景 浅草金龍山』, Public domain, via Wikimedia Commons.

江戸の人々に「観音さま」として親しまれてきた浅草寺。その浅草寺の山号を金龍山といいます。

この絵を描いた歌川広重(1797-1858)は、江戸時代後期に活躍した絵師です。特に風景画でその名を馳せた広重は、晩年に『名所江戸百景』シリーズを描き、世界的に知られることになりました。

今まで見過ごされてきた場所を新しい江戸の名所として描き出す視点や、大胆で奇抜な構図、そして江戸の最新の世相を取り入れる工夫など、広重が当時の江戸の町へと向けるあたたかな愛が感じられるシリーズです。

さて、この『名所江戸百景 浅草金龍山』には、浅草寺の象徴である雷門が描かれています。

しかし門全体を描くのではなく、絵の右側のほとんどを大きな提灯が占め、雷門を通り抜けようとして立ち止まった人の視点でシャッターが切られたようにも思えるのです。

そしてその奥には、一面の雪景色と参拝客の姿が描かれています。雪を被った木々も白く染まっており、雪が音を吸うことで訪れる静寂が伝わってきます。

赤と白の組み合わせは、古くから「めでたい」イメージとして扱われてきました。白い雪と鮮やかな赤が織りなす「紅白」のコントラストから、縁起のよさ、めでたさを楽しんでください。


ジョン・シンガー・サージェント作『自宅のポッツィ博士』~まとう「赤」、いのちの「赤」~


ジョン・シンガー・サージェント『自宅のポッツィ博士』, Public domain, via Wikimedia Commons.

本コラムでは、これまで風景の中に描かれた「赤」を取り上げてきましたが、最後にご紹介するのは、『自宅のポッツィ博士』という肖像画です。

この作品は、外科医・婦人科医のサミュエル・ジャン・ポッツィ(1846-1918)をモデルに、ジョン・シンガー・サージェント(1856-1925)によって描かれたものです。

ポッツィは20世紀最大の女優サラ・ベルナールの恋人だったこともあり、社交界で華やかな存在感を示していました。また、傷口の消毒という、当時はまだ一般的でなかった医療を広めた先駆者としても知られています。

鮮やかな赤い色(緋色)のガウンを着た35歳頃のポッツィは、その端正な顔立ちや優美な指先も相まって、官能的な魅力を放っています。

しかし、外科医・婦人科医としての彼の仕事を思うとき、画面を満たす深い赤は、人の体をめぐる「血」や「命」の色にも重なってきます。

美しく、どこか神秘的で深みのある赤。「命」を感じられる作品です。


おわりに


「赤」の絵画に着目してみても、それぞれの作品にはさまざまな赤が存在していました。

マティスのアトリエ、ゴッホの葡萄畑。
北斎の赤富士に広重の雷門。そして、サージェントが描いた医師のガウン。

名画のなかにはどれひとつとして同じ赤は存在せず、それが自然の美しさに勝るとも劣らない魅力を持っています。

美術館を訪れて、あるいは画集を広げて、秋を楽しんでみませんか。


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糸崎 舞

糸崎 舞

元舞台俳優。現役時代、さまざまな演劇作品に出演した経験を通じて、世界中の歴史や文化、芸能への深い理解を培いました。俳優としての経験を活かし、アートの中に息づく文化や歴史を解説します。 好きなアーティストは葛飾北斎とアルフォンス・ミュシャです。

元舞台俳優。現役時代、さまざまな演劇作品に出演した経験を通じて、世界中の歴史や文化、芸能への深い理解を培いました。俳優としての経験を活かし、アートの中に息づく文化や歴史を解説します。 好きなアーティストは葛飾北斎とアルフォンス・ミュシャです。

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