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2026.7.3

【箱根】かがやきの美に魅せられて。岡田美術館「金銀雲母きら」展が開幕

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静謐な山あいに佇む岡田美術館(神奈川県箱根町・小涌谷)にて、2026年6月14日(日)より特別展「金銀雲母きら ―かがやきの日本美術―」が開催されています。金、銀、そして雲母(きら)――古来、人々の心を惹きつけてやまない"かがやく素材"に焦点を当て、平安時代の経典から現代の書、桃山時代の屏風、やきもの、漆芸まで約40件を一堂に展示。日本人の美意識が生み出した多彩な「かがやきの美術」を堪能できる展覧会です。

特別展「金銀雲母きら ―かがやきの日本美術―」

平安時代の金・銀・雲母とそのリバイバル

金銀と雲母の表現が美麗を極めたのは、平安時代のことでした。仏教を篤く信仰した天皇や公家、武士たちが功徳を願い、写経の事業を盛んに行うなかで、金銀は経文や絵に多く使われました。また、流麗な仮名で和歌を記す冊子や巻子のために、金・銀・雲母を駆使した美しい料紙が作られています。

本展では、平安後期の経典や書の名品を核に、古典に倣いつつ新たな美を創造した桃山〜江戸時代初期の和歌色紙や謡本、さらに現代の名筆による和歌巻までを展示。時代を超えて受け継がれてきた「かがやきの美意識」をたどります。

「仁王経 巻上」(中尊寺経・部分) 平安時代後期 岡田美術館蔵

金・銀・瑠璃(青玉)などでできていると経典に記される極楽浄土のイメージ。紺色の紙に金銀の文字が浮かび上がる荘厳な姿は、平安の信仰と美意識が結晶したものです。

「石山切」(伊勢集断簡・部分)平安時代 天永3年(1112)頃 重要美術品 岡田美術館蔵

和歌集の2ページを改装した掛軸。右は色紙を継ぎ合わせ雲母砂子を撒いた料紙に、繊細な銀泥絵をあしらった逸品。左は雲母摺の料紙。平安時代の書と料紙の白眉と称される名品です。

「謡本」(表紙)桃山〜江戸時代初期 岡田美術館蔵

料紙装飾における雲母摺は、桃山時代に新たな段階を迎えました。この本は表紙だけでなく本文の紙にも雲母を施し、平安の繊細さと桃山のおおらかさが同居する一冊となっています。

俵屋宗達下絵・本阿弥光悦書「柳に波下絵和歌色紙 はるごとに」(部分) 桃山〜江戸時代初期 岡田美術館蔵

宗達は平安時代の金銀泥絵を、光悦は日本と中国の古い書を学び、新しい時代の感覚でアレンジ。琳派の美意識が凝縮された色紙です。

髙木聖鶴「古今和歌集抄」(部分) 平成24年(2012) 岡田美術館蔵

古典の書を学び続けた研鑽の成果。平安時代の国宝の名品に倣って作られた料紙は、金・銀と雲母を豊かに用いたもの。現代の名筆による卒寿記念の大作です。

絵とやきものに見る金銀の多様な表現

日本では古来、金・銀が併用されることが多く、意匠や技法を凝らした美術品が生み出されてきました。金には日光、銀には月光や水など、具体的な自然のイメージが重ねられることも。絵画では比較的自由に使える一方、やきものでは焼成を1回増やす必要があり、特に変色しやすい銀彩は稀少なものです。

池大雅「沈香看花・楓林停車図屏風」のうち「沈香看花図」(部分)江戸時代中期 岡田美術館蔵

漢詩を主題にした屏風の一場面。楊貴妃が楼閣から苑池を眺めるさまが描かれ、金色の線が重なる画面に唐時代の雅な雰囲気が漂います。

「緑地金襴手牡丹唐草文碗」景徳鎮窯 中国・明時代 岡田美術館蔵

日本で「金襴手」と称される、金を焼き付けた磁器。萌黄地に金彩を施した器は珍しく、萌黄色と金色が織りなす優美な色合いが見どころです。

「染付金銀彩網干文輪花皿」有田 江戸時代 岡田美術館蔵

舟と芦の葉に金銀の線を重ね、手前の銀色の曲線は波、金銀の点は水しぶきを表現。肥前磁器の金銀彩は1650〜60年代頃に限定される、貴重な作例です。

塩川文麟「流崖群蛍図」(部分)江戸時代末期〜明治時代初期 岡田美術館蔵

水の上を舞い、あるいは岩や木に止まる蛍。金泥で表現された蛍の光が、闇のなかにきらめきます。箱の記載によれば宇治川の蛍とのこと。

円山応挙「三美人図」のうち「太夫図」(部分)江戸時代 天明3年(1783) 重要美術品 岡田美術館蔵

京都・島原の太夫が高下駄でゆっくりと歩むさま。紅白に金銀を組み合わせた豪華な装いが目を引きます。金地の帯に銀の菱模様の打掛という、華麗な出で立ちです。

漆芸のかがやき ―日本・琉球・韓国―

金・銀に加えて貝殻の輝きを生かした漆の作品も展示されます。漆は東洋独自の技法として発展し、つややかな光沢のある漆地に金属や貝殻など異素材を組み合わせた多彩な美術品が生み出されてきました。螺鈿・蒔絵などの技法を凝らした、きらびやかな漆芸の世界をお楽しみください。

「吉野山蒔絵分銅形硯箱」江戸時代 岡田美術館蔵

金地に満開の桜が映える春爛漫の吉野山。桜は銀蒔絵、山や岩肌は切金(小さく切った金の薄板を貼る技法)を使うなど、技巧を凝らした逸品です。

「黒漆葡萄栗鼠図螺鈿箔絵小箱」琉球王朝時代 岡田美術館蔵

全体を黒漆で塗り、地に細かく砕いた貝片を蒔いた小箱。リスとブドウは金箔と螺鈿で表し、線彫りで毛並みや葉脈を加えています。光の角度によって虹色に輝く美しい一品です。

アートをもっと深く楽しむ!関連イベント

展覧会をさらに深く楽しめる関連イベントも充実しています。

・学芸員ギャラリートーク|特別展「金銀雲母きら」(7月3日〜11月27日 毎週金曜11:00〜)
・スライドトーク|「金銀の美と中国のやきもの ―唐時代の金銀器から陶磁へ―」(9月19日)
・関連講座|「雲母の美/池大雅の金の使用」(10月10日)

※イベントは参加費無料(要入館料)/申込不要

展覧会情報

展覧会名:金銀雲母きら ―かがやきの日本美術―
会期:2026年6月14日(日)〜12月6日(日) ※会期中無休
開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
入館料:一般・大学生 2,800円/小中高生 1,800円
会場:岡田美術館(神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1)
主催:岡田美術館
公式サイト:https://www.okada-museum.com


金と銀、そして雲母のやわらかな光――日本人が磨き上げてきた「かがやきの美」を、箱根の豊かな自然のなかで体感してみてはいかがでしょうか。

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イロハニアート編集部

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