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2022.7.14
アール・デコの館に花の楽園が出現!『蜷川実花「瞬く光の庭」』展レポート
朝香宮邸として1933年に建てられ、アール・デコ様式を現在にまで留める東京都庭園美術館。1983年に美術館として一般公開され、新館が竣工すると、2015年には本館などが重要文化財に指定されるなど、昭和初期の東京の文化の様相をうかがえる貴重な歴史的建造物として知られています。
目次
『蜷川実花「瞬く光の庭」』から「大食堂」展示風景。会場内は一部エリアの撮影が可能です。
そうした“アール・デコの館”を色鮮やかな花の写真で彩ったら…? 植物から花へと蝶のように回遊しながら、アール・デコ建築の装飾を楽しめる夢のような展覧会が開かれています。見どころをご紹介します。
東京都庭園美術館の本館全景。戦後は政府が借り受け、吉田外相・首相公邸として用いられたり、国賓・ 公賓を迎える「白金迎賓館」として使用されました。
すべて新作!コロナ禍において撮り続けた花や植物の写真が館内を美しく彩る
この展覧会を実現させたのは写真家の蜷川実花(にながわみか)。2018年には国内10カ所を巡回した『蜷川実花展-虚構と現実の間に-』が、のべ約34万人も動員するなど人気のアーティストです。またNetflixオリジナルドラマ『FOLLOWERS』 や、今年4月には最新作『ホリック xxxHOLiC』が公開されるといった、ドラマや映画監督としても活躍しています。
展示に出品したのはすべて新作。2021年から今年にかけて国内各地にて撮影された植物の写真です。もともと蜷川にとって花とは、デビュー前から撮り続けている極めて身近なモチーフですが、いわゆるコロナ禍での制限された生活や創作活動を踏まえ、「生まれたての気分で撮った」と言っています。つまり慣れ親しんだ被写体でありながら、新たな気持ちにて取り組んだ作品でもあるのです。
蜷川実花にとっての花とは?花を撮って動いた心を伝える
本館1階の「大客室」から「次室」を眺める。両側に作品が展示されています。「大客室」は南側の庭にテラスを控えた部屋で、明るい光が差し込んできます。
なぜ蜷川は花の写真を撮り続けているのでしょうか? それを“原初的な衝動”と位置付ける蜷川は、すぐに枯れてしまう花の一瞬の輝きを永遠に封じるため、祈るようにしてシャッターを押しているとしています。また花の多くは庭園や公園などで育まれたものですが、蜷川は人に寄り添って咲くような花に呼吸を合わせながら、その時に自身が感じる情感を重ね合わせています。言わば花を撮って動いた心を写真で伝えようとしているのです。
本館2階ベランダの展示風景。作品が右手の窓一面に写されています。黒と白の大理石による床の市松模様が特徴的です。
撮影された花の写真は実に4万枚。その中から選ばれた作品が展示されています。そして館内の装飾から窓の外の庭園の風景とともに写真を鑑賞すること全体が蜷川の作品とされていて、個別の写真にタイトルは付けられていません。よって建物と作品が一体となったインスタレーションとして展覧会が組み立てられているわけです。
輝かしい光彩色の世界。アール・デコ建築との魅力的なコラボレーション
1つ1つの花の写真を見ていくと、鮮やかな色彩と一緒に、蜷川がいま強く惹かれているという光にあふれた“光彩色”と呼ばれる世界が広がっていることがわかります。そして梅や河津桜、ネモフィラなど四季の花々が広間や通路を抜けるごとに展開していて、部屋を巡り歩くたびに移りゆく季節を追体験することもできます。
本館「大広間」から「次室」方向の展示風景。アンリ・ラパンがデザインした白磁の香水塔が飾られています。
蜷川が学生時代から通っていた東京都庭園美術館は、「そこに入ることが特別な体験」と思うほど好きな場所だったとしています。確かに同館の建築空間はほかに類を見ることができません。
窓に展示された作品。明るい日差しを通して戸外の緑も見えます。
ちょうど私が鑑賞した日は暑い夏の晴天でしたが、窓の外から差し込む強い光と作品の中の光が重なり合うように広がり、光の中に包まれて花の楽園へと誘われるような稀有な体験が得られました。
映像インスタレーション『胡蝶めぐる季節』にて四季の花々をめぐる
こうした本館の展示に続く新館にて公開された映像インスタレーション、『胡蝶めぐる季節』も必見ではないでしょうか。蝶に誘われながら四季の花々をめぐる光景を浮遊感のある映像にて表現した作品で、中に入ることによって花の咲き誇る空間を全身で感じることができます。
夢の中のような世界が広がっていますが、実際に映された光景のほとんどは加工されず、花々も日常にて撮影されたもの。まるで虚構を漂っているようにも見えますが、現実の世界でもあるのです。
東京都庭園美術館の庭園から新館を眺める。展覧会チケットにて庭園にも入場できます。
この夏限定のアール・デコと光と色彩にあふれた蜷川の写真のコラボレーション。作品を通して“蜷川の目”を追体験したのち、美術館の庭を散策すると、植物や光に対しての見方が変わるかもしれません。美術館に出現した美しくもはかない花の楽園を味わってみてください。
『蜷川実花「瞬く光の庭」』 東京都庭園美術館
開催期間:2022年6月25日(土)〜9月4日(日)
所在地:東京都港区白金台5-21-9
アクセス:都営三田線・東京メトロ南北線白金台駅1番出口より徒歩6分。JR線目黒駅東口、東急目黒線目黒駅正面口より徒歩7分
開館時間:10:00~18:00
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日。※ただし7月18日(月・祝)は開館、7月19日(火)は休館
料金:一般1400円、大学生1120円、中学・高校生700円、65歳以上700円
※小学生以下、都内在住在学の中学生は無料
https://www.teien-art-museum.ne.jp
画像ギャラリー
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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