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2026.6.8
【会場レポート】約400点でたどる安西水丸の全仕事。PLAY! MUSEUMで新たな展覧会が開催中!【東京立川】
『イラストレーター 安西水丸展 ぼくのあそび I DRAW TO PLAY』が、東京・立川のPLAY! MUSEUMで開催されています。2016年から各地を巡回して人気を集めた展覧会に、新たな展示や空間演出を加えて再始動した本展。
会場を実際に訪れながら感じた、安西の創作の魅力や展覧会の見どころをレポートします。
目次
『イラストレーター 安西水丸展 ぼくのあそび I DRAW TO PLAY』作品展示風景
絵を描くことは、ずっと「あそび」だった
第一部「ぼくの仕事」展示風景。左に見えるのが愛用のチノパンとワークジャケット
子供のころから絵を描くのが好きで、絵を描くことが「あそび」だったという安西水丸(1942〜2014年)。広告会社や出版社でデザインの仕事に携わりながら、雑誌「ガロ」に掲載した漫画『青の時代』が評価を受けると頭角を現します。
独立した後は、村上春樹をはじめとする本の装丁や、『がたん ごとん がたん ごとん』など絵本の創作、エッセイの執筆などで活動の幅を広げていきました。
その安西の全仕事を、印刷物、原画、版画、関連資料など、約400点以上で紹介。小さなブロックに分けられた展示空間を進んでいくと、カラフルでユーモアに満ちた安西の作品世界に自然と引き込まれていきます。
アトリエの愛蔵品と、作品集『あそび』に見る創作の源泉
第一部「ぼくの仕事」でまず目を引くのが、安西がアトリエに飾っていた数々の小物です。彼は果物や酒瓶、旅先で集めた郷土玩具など、身近なモチーフを題材に描いてきましたが、ここでは作品にたびたび登場するスノードームをはじめ、創作の源泉となった愛蔵品の数々を見ることができます。
第一部「ぼくの仕事」より、左が作品集『あそび』に関する展示風景
また7歳の時に描いた絵に、61歳になった安西が言葉を添えた作品集『あそび』も見逃せません。42歳の時に出演した新聞広告で、自らを「今でも小学生の絵を描いている」と表現した安西は、絵の魅力とは上手さや技巧ではなく、その人にしか表せない個性にあると考えていました。
『あそび』は、まさに安西の創作の原点を物語る一冊です。そこに並ぶ絵には、後年の作風を思わせる面もうかがえますが、半世紀以上の時を隔てた「子どもの絵」と「大人の言葉」が響き合う様子は、全体を通してもとりわけ印象に残る展示のひとつでした。
『がたん ごとん がたん ごとん』から、村上春樹、和田誠との仕事まで
安西作品を語るうえで絶対に欠かせないのが、1987年に刊行された絵本『がたん ごとん がたん ごとん』です。
「絵本というのは字が読めない子どもでも楽しめて、毎日お母さんに読んでもらっていても、そのページに来たら必ず夢中になるものでなければいけない」との言葉を残す安西。まっ黒な汽車に、コップやスプーン、バナナやネコたちが次々と乗り込み終着駅へと向かう本作は、心地よい繰り返しのリズムと親しみやすい絵で、世代を超えて愛されてきました。
一方で安西と親交の深かった人々の仕事にも注目しましょう。なかでもジャズ喫茶で出会い、長年にわたって交流を続けた村上春樹との仕事は大きな見どころのひとつ。安西が初めて装丁を手がけた村上作品の『中国行きのスロウ・ボート』は当時、編集者の反応が芳しくなかったといいます。
しかし今では「この装丁を見てデザイナーの道に進んだ」という声もあるなど、安西の代表作として知られています。
高校時代から憧れの先輩であり、安西に多くの影響や刺激を与えたのが和田誠でした。2001年に二人で始めた展覧会「NO IDEA」から発展した共同制作では、一枚の作品を二人で完成させるというユニークな試みを2014年まで継続。その創造的なやり取りからは、安西の「あそび」の精神をあらためて感じることができます。
PLAY!ならではの「ホリゾン」体験!千倉の海が育んだ一本の線
『イラストレーター 安西水丸展 ぼくのあそび I DRAW TO PLAY』より、第二部「ぼくの水平線」展示風景
全長50mにも及ぶPLAY!ならではの楕円形の展示空間へと足を進めましょう。壁一面に並ぶのは、安西のトレードマークである「ホリゾン(水平線)」の作品群です。その数は約70点。近年アトリエで発見された原画や、それらをもとに制作されたジークレー版画(※)が一堂に公開されています。※インクジェットプリンターを用いたデジタル版画
安西が「ホリゾン」と呼んだのは、イラストレーションの画面を横切る一本の線のこと。この線が加わることで、コーヒーカップがテーブルの上に置かれているように、絵のなかに手前と奥の空間が生まれます。シンプルな線でありながら、安西作品を特徴づける重要な要素といえます。
第二部「ぼくの水平線」展示風景より、正面が新たに撮り下ろした映像「千倉の海」
この展示空間のほぼ中央に映し出されているのが、安西が幼少期から中学卒業までを過ごした千葉県・房総半島の「千倉の海」の映像です。「紙にホリゾンを引くとき、いつも千倉の海の水平線が目に浮かぶのです」という言葉が示すように、彼にとって水平線は原風景そのものでした。
作品を見ながら歩いていると、額の高さが少しずつ違っていることに気づきます。これは額ではなく、画面の中のホリゾンの位置を揃えているため。さらに千倉の海の映像の水平線とも高さが一致しており、会場全体をひとつの水平線がどこまでも貫いているかのような演出が施されているのです。
イラストレーター、そしてデザイナーとして。創作世界の広がり
展示の終盤では、雑誌やポスター、広告など、安西の幅広い仕事を紹介。親しみやすく温かな作品で知られる一方、ファッショナブルであったり、時にはエロティックなモチーフを取り入れた作品も並び、その表現の引き出しの多さに魅了されます。
また作品を見比べていくと、安西が媒体やテーマに応じて技法やタッチを使い分けていたことも浮かび上がります。そこにはデザイナーとしての優れたセンスも垣間見えるのではないでしょうか。
手前が「水丸るワークショップ」コーナー。奥に見えるのが、「フライングトマトカフェ」の壁画(部分)のプリント。
このほか、帝国ホテル大阪の「フライングトマトカフェ」の壁画(2018年に横浜のぴあアリーナMMへ移設)など、建築と結びついた仕事についても展示されていて、安西の創作世界の広がりを実感できます。
2016年から各地を巡回した展覧会を見た方にとっても、新たな発見に出会える『イラストレーター 安西水丸展 ぼくのあそび I DRAW TO PLAY』。お気に入りの作品を探しながら、遊び心あふれる安西水丸の世界にどっぷり浸かってみてください。
展覧会情報
『イラストレーター 安西水丸展 ぼくのあそび I DRAW TO PLAY』 PLAY! MUSEUM
開催期間:2026年5月20日(水)〜7月12日(日)
所在地:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3 棟 2F
アクセス:JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅(国営昭和記念公園方面)より徒歩約10分
開館時間:10:00~17:00(土日祝は18:00 まで/入場は閉館の30分前まで)
休館日:会期中無休
入場料:一般1,800円、大学生1,200円、高校生1,000円、中・小学生600円、未就学児無料
ウェブサイト:『イラストレーター 安西水丸展 ぼくのあそび I DRAW TO PLAY』
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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