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2022.12.9
フランスから200点の作品が来日!かつてないスケールの展示でたどるパリ・オペラ座の歴史
1669年、太陽王ルイ14世が創立したアカデミーを起源とするパリ・オペラ座。現在の壮麗な建築はシャルル・ガルニエの設計によるもので、1875年に落成し、その後も1989年にはバスティーユ歌劇場(オペラ・バスティーユ)が完成するなど、2つの劇場でさまざまなバレエやオペラを上演されています。
目次
フランスを代表するパリ・オペラ座の歴史を17世紀から現代までたどりながら、その魅力を総合芸術的な観点から浮き彫りにする『パリ・オペラ座―響き合う芸術の殿堂』が、東京・京橋のアーティゾン美術館にて開催中です。
台本と音楽と舞台が融合した総合芸術のオペラ。ガルニエの設計した劇場の誕生の経緯
展示風景 左上:シャルル・ガルニエ『パリ・オペラ座(ガルニエ宮)のファサード立面図、1861年8月』 1861年 フランス国立図書館 他
まず冒頭では「序曲」として、当時ヨーロッパで最大規模の劇場だったガルニエ宮の誕生の経緯について紹介。弱冠35歳のほぼ無名だったシャルル・ガルニエが描いた立体図をはじめ、ガルニエ宮の天井画を手がけた歴史画家、ジュール=ウジェーヌ・ルヌヴーによる円天井の最終案の絵画や、ジャン=バティスト=エドゥアール・ドゥタイユが1875年のオペラ座の落成式を描いた作品などが展示されています。
展示風景 右:ジャン=バティスト=エドゥアール・ドゥタイユ『オペラ座の落成式、1875年1月5日』 1878年 オルセー美術館(ヴェルサイユ宮殿に寄託) 他
イタリアで誕生し、台本と音楽と舞台が融合したオペラは、歌手やダンサー、エキストラをはじめ、オーケストラの楽団員など大勢のスタッフがまとまることで成立する総合芸術であり、時に大がかりな舞台演出の手段も必要となります。そしてガルニエが設計した建物としてのオペラ座そのものの、建築や彫刻、装飾などが一体化した総合芸術作品でした。
グランド・オペラが聴衆を惹きつける。人気ダンサーも登場!
展示風景 右:シャルル・セシャン『ユダヤの女』第5幕の舞台美術 1835年 左:『オペラ座総裁、アンリ・デュポンシェルの肖像』 1836年頃 ともにフランス国立図書館
今回の展覧会で特に重点が置かれている時代は、ロマンティック・バレエ、グランド・オペラ、それにバレエ・リュスの時代に当たる19世紀から20世紀初頭です。このうち19世紀前半のグランド・オペラとは、歴史的題材をテクストに据え、規模の大きい合唱やバレエを挿入した歌劇のことで、クライマックスには一大スペクタクルが行われるなど、当時の聴衆を大いに惹きつけました。マイアベーアの『ユグノー教徒』、それにロッシーニの『ウィリアム・テル』などの作品が知られています。
展示風景 左:ジャン=バティスト・バール『シルフィードを演じるマリー・タリオーニ』 1837年 フランス国立図書館
このグランド・オペラの一場面であったロマンティック・バレエでは、数多くの女性ダンサーが登場して脚光を浴びました。スウェーデン生まれのイタリア人のマリー・タリオーニも、ロマンティック・バレエを代表するダンサーの1人で、オーストリア出身のダンサー、ファニー・エルスラーとともに人気を二分します。トゥ・シューズを用い、爪先で立つポワントと呼ばれる技法を芸術として高めたのもマリー・タリオーニでした。
ドガからウジェーヌ・ジロー、それにマネまで、パリ・オペラ座を描いた画家たち
展示風景 右:エドガー・ドガ『踊り子たち、ピンクと緑』 1894年 吉野石膏コレクション(山形美術館に寄託)※前期展示のみ(〜12月18日) 左:エドガー・ドガ『バレエの授業』 1873〜1876年 オルセー美術館
パリ・オペラ座と画家との関係はどうだったのでしょうか。音楽に囲まれた環境で育ち、観劇を好んだ印象派のエドガー・ドガは、劇場への自由な出入りも許されるなど、オペラ座と深く関わっていました。ドガは舞台や楽屋、それに稽古場など劇場のあらゆる空間や、踊り子や歌手といった人物を取り上げ、油彩やパステルにて作品を制作します。特に1870年代から手がけた踊り子はドガにとって重要なモチーフでした。
展示風景 右:エドゥアール・マネ『オペラ座の仮装舞踏会』 1873年 石橋財団アーティゾン美術館 左:エドゥアール・マネ『オペラ座の仮面舞踏会』 1873年 ワシントン、ナショナル・ギャラリー
このドガほどではないものの、ジャン・ベローやウジェーヌ・ジロー、それにエドゥアール・マネもオペラ座を舞台とした絵画を手がけます。そのうちマネは『オペラ座の仮面舞踏会』にて、社交界のブルジョワ紳士たちと高級娼婦と思しき女性たちを描き、オペラ座を舞台とした男女の怪しげな出会いを巧みに表現しました。ともに仮面舞踏会をモチーフとした、アーティゾン美術館とワシントン・ナショナル・ギャラリーの所蔵する2点のマネの作品も見どころです。
音楽ファンも注目!モーツァルトやヴェルディの自筆譜からワーグナーの舞台美術まで
展示風景 右:ジャック=エミール・ブランシュ『火の鳥』のタマラ・カルサヴィナ 1910年頃 フランス国立図書館
この他、パリ・オペラ座でセンセーショナルな人気を博したバレエ・リュスや、近代芸術とオペラ座との関係、さらにデザイナーと舞台美術や演出家と振付家に関する展示など、内容は実に多岐に渡りますが、あえておすすめしたいのが作曲家に因む作品や資料です。
展示風景 右:クリストフ・ヴィリバルト・グルック『オルフェオ』 1774年 左:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト『バレエの間奏曲のためのスケッチ。パントマイムのためのフランス語の指示付き、KV 299c』 1780年 ともにフランス国立図書館
会場ではグルックやモーツァルト、またロッシーニやヴェルディ、さらにワーグナーの自筆譜なども公開。音符が踊り跳ねるようなモーツァルトや端正に書かれたロッシーニの楽譜からは、作曲家の息遣いを感じることができます。
展示風景 左:シャルル・ビアンキーニ『ワルキューレ』のリュシエンヌ・プレヴァルの舞台衣装 1893年 フランス国立図書館
また1861年に『タンホイザー』(パリ版)をオペラ座にて初演したワーグナーにも着目。当時の『タンホイザー』の初演ポスターや衣装小物の冠をはじめ、1893年にて上演された『ニーベルングの指環』の第2作である『ワルキューレ』に用いられた舞台衣装なども公開されています。
展示風景 左:フランソワ=ガブリエル・レポール『悪魔のロベール』第5幕第3場の三重唱 1835年 右:アルベール=エルネスト・カリエ=べルーズ『ジャコモ・マイアベーアの胸像』 ともにフランス国立図書館
さらにヴェルディの『ドン・カルロス』の小道具の王冠や、当時は大変な人気を博したものの、現在では上演頻度が少ないマイアベーアの『悪魔のロベール』の三重唱の様子を描いたフランソワ=ガブリエル・レポールの絵画も見ておきたい作品ではないでしょうか。一時は隆盛を極めたグランド・オペラも、19世紀の後半に入ると翳りを見せ、音楽はより心理的なドラマを描くようになっていくのです。
フランスより200点の作品が来日。かつてないスケールで解き明かされるオペラ座の魅力
展示風景 手前:ポール・ロルミエ『ファウスト』の衣装小道具 1869年頃 右:エドゥアール・マネ『ハムレット役のフォールの肖像』 1877年 ハンブルク美術館 左:エドゥアール・マネ『ハムレット役のフォールの肖像』 1877年 フォルクヴァング美術館
展示はフランスのオペラ、バレエ関係の資料が多く収蔵するフランス国立図書館をはじめ、オルセー美術館の所蔵する絵画など約200点の作品が来日。これほど網羅的でかつ丹念にパリ・オペラ座の歴史が検証され、明らかになったことは過去に国内では一度もありません。
美術ファン、バレエファン、そしてオペラなどのクラシック音楽ファンにも注目の『パリ・オペラ座―響き合う芸術の殿堂』から、オペラより開かれる諸芸術を楽しんでください。
展覧会情報
『パリ・オペラ座―響き合う芸術の殿堂』 アーティゾン美術館
開催期間:2022年11月5日(土)~2023年2月5日(日)
所在地:東京都中央区京橋1-7-2
アクセス:JR線東京駅八重洲中央口、東京メトロ銀座線・京橋駅6番、7番出口より徒歩5分
開館時間:10:00~18:00
※毎週金曜日は20時まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし1月9日は開館)、年末年始(12月28日〜1月3日)、1月10日
観覧料:日時指定予約制 一般1800円、大学生以下無料(要予約)
※当日チケットは2000円
https://www.artizon.museum
画像ギャラリー
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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