NEWS
2026.3.31
【2026年4月のおすすめ展覧会5選】知られざるヴァルザーから、日本画の新しい表現に挑んだ紫紅、そして蘇る江戸の魅力まで。
新年度の幕開けとともに、展覧会シーンがいっそう華やぐ4月。大型企画から個性際立つ回顧展まで、多彩なラインナップが各地で始まります。
知られざるスイスの画家に光を当てる『カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照』、リニューアルオープンした東京都江戸東京博物館を飾る特別展『大江戸礼賛』など、見応えのある展覧会が目白押し。東京と横浜で開催される注目の5展をご紹介します。
目次
知られざるスイスの異才の全貌が明らかに。『スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照』|東京ステーションギャラリー
《婦人の肖像》 1902年 ゴットフリート・ケラー財団(新ビール美術館寄託)
「日本を描いた西洋画家」と聞いて、すぐに名前が思い浮かぶ人は多くないかもしれません。ましてや、その作品のすべてが日本初公開となるなら、なおさら心待ちな展覧会といえるでしょう。東京ステーションギャラリーで開催される『カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照』は、そうした知られざる画家に光を当てる貴重な機会です。
20世紀前半のスイスで活躍したカール・ヴァルザー(1877〜1943年)は、ベルン近郊のビールに生まれ、20代でベルリン分離派に参加。本の装幀や挿絵、舞台美術、壁画などの幅広い分野で仕事を手がける一方、象徴主義的な絵画も制作しました。
1908年、ヴァルザーはドイツの小説家のベルンハルト・ケラーマンとともに来日し、日本各地を巡りながら風景や風俗を数多く描きます。中でも気に入った京都府北部の宮津に長く滞在すると、芸妓や歌舞伎役者、市井の人々の姿を生き生きとした筆致と水彩でとらえました。
本展では、こうした日本滞在期の作品に加え、初期の象徴主義的絵画や挿絵、舞台美術のデザインなど約150点を一挙公開。120年前の日本が鮮やかに甦るとともに、世紀末の残照とも呼ぶべき昏(くら)さと、謎めいた神秘性をたたえた独自の作品世界が立ち上がります。
《京都先斗町の鴨川納涼床》 1908年 ゴットフリート・ケラー財団(新ビール美術館寄託)
『スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照』 東京ステーションギャラリー
開催期間:2026年4月18日(土)~6月21日(日)
所在地:東京都千代田区丸の内1-9-1
アクセス:JR東京駅 丸の内北口 改札前
開館時間:10:00~18:00(金曜日~20:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(ただし5/4、6/15は開館)
入館料:一般1800(1600)円、高校・大学生1300(1100)円、中学生以下無料
美術館サイト:
『スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照』
世界最高峰の暁斎コレクションが里帰り!『ゴールドマン コレクション 河鍋暁斎の世界』|サントリー美術館
百鬼夜行図屛風 河鍋暁斎 六曲一双のうち左隻 明治4〜22年(1871〜89) イスラエル・ゴールドマン・コレクション 写真協力:立命館大学アート・リサーチセンター 【通期展示】
幕末から明治にかけて、卓越した画技と機知に富んだ表現で異彩を放った絵師がいます。サントリー美術館で開催される『ゴールドマン コレクション 河鍋暁斎の世界』は、その全貌に迫る注目の展覧会です。
河鍋暁斎(1831〜1889年)は、7歳の頃から歌川国芳に学び、さらに狩野派での修業を経て、高い筆技と戯画の諧謔精神をあわせ持つ独自の画風を確立しました。神仏や妖怪、動物、さらには風俗や戯画にいたるまで多様な主題を自在に描き分け、そのいずれにも鋭い観察眼とユーモアが息づいています。
本展では、イギリス在住のコレクター、イスラエル・ゴールドマンが40年以上にわたり蒐集してきたコレクションを中心に構成。肉筆画、版画、下絵、絵日記にいたるまで約110件を紹介し、その半数以上が日本初出品となります。世界最高峰ともされるコレクションを通して、暁斎の多彩な仕事が立体的に浮かび上がります。
なかでも動物を描いた作品は見どころのひとつ。鴉や蛙、猫といった身近な生き物を、愛嬌と野性味をあわせ持つ存在として描き出します。暁斎にとって動物表現は、単なる写生にとどまらず、伝統的な画題への応答であると同時に、狂画として人間社会を映し出す手段でもあったのです。
蛙の学校 河鍋暁斎 一葉 明治零年代中頃(1870年代前半) イスラエル・ゴールドマン・コレクション Photo:Ken Adlard 【通期展示】
『ゴールドマン コレクション 河鍋暁斎の世界』 サントリー美術館
開催期間:2026年4月22日(水)~6月21日(日)
※作品保護のため、会期中展示替を行います。
所在地:東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階
アクセス(東京ミッドタウン[六本木]まで):都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩約3分。
開館時間:10:00~18:00
※ 金曜日および5月2日(土)~5日(火・祝)、6月20日(土)は20:00まで
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日(5月5日は20:00まで開館 )
入館料(当日券):一般1800円、大学生1200円、高校生1000円
美術館サイト:
『ゴールドマン コレクション 河鍋暁斎の世界』
祝・リニューアルオープン!特別展『大江戸礼賛』で知る江戸の魅力|東京都江戸東京博物館
東都両国ばし夏景色 橋本貞秀/画 安政6年(1859) 東京都江戸東京博物館蔵
約4年の休館を経て、この春にリニューアルオープンした東京都江戸東京博物館。その再開館を飾る特別展『大江戸礼賛』は、同館のコレクションのみで構成される意欲的な企画として、あらためて江戸という都市の魅力に迫ります。
徳川家康による開府以降、政治の中心として発展した江戸は、将軍家を頂点に武士が集住する「武士の都」としての顔を持っていました。甲冑や刀剣、婚礼道具といった品々は、単なる実用品にとどまらず、家格や権威を示す象徴として尊ばれます。一方で、人口100万を超える大都市へと成長するなか、商人や職人といった町人層が台頭し、都市の活力を支えました。
こうした江戸の多様な文化を、「甲冑や婚礼道具などの武家文化」、「相撲・歌舞伎・吉原と浮世絵などの町人文化」、「武家火消と町火消」、そして「多彩な文芸活動」の4つのトピックスから多角的に紹介します。
甲冑・屏風・婚礼道具・浮世絵・火消道具など、約35万点に及ぶ収蔵品のなかから厳選された約160件を展示。収蔵後初披露となる資料も多く出品されます。さらに再開館を記念し、小・中・高校生の観覧料が無料となるのも嬉しいところ。江戸の賑わいと人々の営みを味わえる展示に、足を運んでみてはいかがでしょうか。
『江戸東京博物館リニューアル記念特別展「大江戸礼賛」』 東京都江戸東京博物館 1階特別展示室
開催期間:2026年4月25日(土)〜5月24日(日)
所在地:東京都墨田区横網1-4-1
アクセス:JR総武線「両国駅」下車 西口から徒歩3分、東口から徒歩7分。都営地下鉄大江戸線「両国駅(江戸東京博物館前)」下車 A3・A4出口から徒歩1分。
開館時間:9:30~17:30(土曜日は19:30まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし5月4日は開館)、5月7日(木)
観覧料:一般1300円(1200円)、大学生・専門学校生1040円(940円)、65歳以上650円(550円)
※( )は前売券の観覧料。前売券の販売期間:4月1日〜4月24日(4月25日から当日料金にて販売)
※チケットの販売は江戸東京博物館のみで行います。
博物館サイト:
『江戸東京博物館リニューアル記念特別展「大江戸礼賛」』
横浜に生まれ、日本画の新しい表現に挑む。『没後110年 日本画の革命児 今村紫紅』|横浜美術館
今村紫紅《護花鈴》 絹本着色・六曲屏風一双(図は右隻) 明治44年(1911) 各170.2×364.4cm 霊友会妙一コレクション (展示期間:4月25日~5月8日)
明治末から大正初期にかけて、日本画の刷新に挑んだ画家がいます。横浜美術館で開催される『没後110年 日本画の革命児 今村紫紅』は、今村紫紅の35年という短い生涯を創作の軌跡とともにたどる、42年ぶりにして公立美術館では初となる大規模回顧展です。
横浜の提灯問屋に生まれた今村紫紅(1880〜1916年)は、やまと絵や歴史画の伝統に学び、早くから確かな技量を示しました。やがて琳派や南画、西洋の印象派など多様な表現に目を向け、明るい色彩と大胆な構図による新たな風景表現を切り拓いていきます。とりわけインドへの旅の途上で得た着想から生まれた《熱国之巻》は、日本画のジャンルに収まらない意欲作として賛否を呼び起こしました。
その画業を支えたのが、横浜の実業家である原三溪です。代表作《護花鈴》が三溪の目にとまったことを契機に支援を受けると、安定した制作環境のもとで、創作の幅をさらに広げていきました。
本展では、初公開作品約40点を含む約180点を4章構成で紹介。古画研究から出発し、自由な表現へと至る軌跡を通して、革新者の実像に迫ります。横浜ゆかりの支援者との関係にも光を当てながら、日本画の可能性を押し広げたその挑戦を体感することができます。
今村紫紅《枇杷ニ鷽》 絹本着色・一幅 大正2年(1913) 121.2×41.3cm 横浜美術館
『没後110年 日本画の革命児 今村紫紅』 横浜美術館
開催期間:2026年4月25日(土)〜6月28日(日)
所在地:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
アクセス:みなとみらい線「みなとみらい」駅〈3番出口〉から、マークイズみなとみらい〈グランドガレリア〉経由徒歩3分、または〈マークイズ連絡口〉(10時~)から徒歩5分。JR(京浜東北・根岸線)・横浜市営地下鉄「桜木町」駅から〈動く歩道〉を利用、徒歩10分。
開館時間:10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:木曜日 ※4月30日、5月7日は開館
観覧料:一般2200円、大学生1600円、中学・高校生1000円、小学生以下無料
美術館サイト:
『没後110年 日本画の革命児 今村紫紅』
没後初の国内での回顧展!『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』|東京都美術館
《クリスティーナ・オルソン》 1947年 テンペラ、パネル 83.8x63.5㎝ マイロン・クニン・コレクション、ミネアポリス Myron Kunin Collection of American Art, Minneapolis, MN photo: Curtis Galleries, Inc. ©2026 Wyeth Foundation for American Art / ARS, New York / JASPAR, Tokyo
20世紀アメリカを代表する具象画家、アンドリュー・ワイエス(1917〜2009年)。その静謐で詩的な作品は、日本でも長く親しまれ、多くのファンを魅了してきました。東京都美術館で開催される『アンドリュー・ワイエス展』は、没後初となる国内での回顧展として、その人気の理由をあらためて見つめ直す機会となります。
ワイエスは、抽象表現主義やポップアートといった同時代の潮流とは距離を置き、故郷ペンシルヴェニアやメイン州の風景、そして身近な人々を一貫して描き続けました。精緻な描写で知られるその作品は、単なる写実を超え、静かな情景のなかに深い感情や記憶をたたえています。
本展の大きなテーマとなるのが「境界」です。ワイエスの作品には、窓や扉といったモティーフが繰り返し登場します。とりわけ窓は、内と外、あるいは心の内面と外界とを隔てながらも、同時にゆるやかにつなぐ存在として描かれます。それは生と死を対立させるのではなく、連続するものとして捉えるワイエスの思想を映し出すものでもあります。
会場では、日本初公開となる作品を含む代表作の数々を紹介。誰もが一目で惹きつけられるその不思議な魅力の奥に、どのような精神世界が広がっているのでしょうか。身近な風景のなかに潜む、切なくも美しい物語に触れてみてください。
《ゼラニウム》 1960年 ドライブラッシュ・水彩、紙 52.7x39.4㎝ ファーンズワース美術館、ロックランド Collection of the Farnsworth Art Museum, Rockland, Maine, Bequest of Betsy James Wyeth Trust, 2021.1.1 ©2026 Wyeth Foundation for American Art / ARS, New York / JASPAR, Tokyo
『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』 東京都美術館
開催期間:2026年4月28日(火)~7月5日(日)
所在地:東京都台東区上野公園8-36
アクセス:JR上野駅「公園改札」より徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅「7番出口」より徒歩10分。京成電鉄京成上野駅より徒歩10分。
開室時間:9:30~17:30、金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
休室日:月曜日、5月7日(木) ※5月4日(月・祝)、6月29日(月)は開室
観覧料(当日券):一般2300円、大学生・専門学校生1300円、65歳以上1600円
展覧会サイト:
『東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展』
※全ての画像の無断転載を禁じます。
画像ギャラリー
このライターの書いた記事
-

NEWS
2026.03.03
【3月のおすすめ展覧会5選】焼絵から蘆雪、それにチュルリョーニスまで。
はろるど
-

EVENT
2026.01.15
【千葉市美術館】麗しい花鳥版画が35年ぶりに里帰り!『ロックフェラー・コレクション花鳥版画展 北斎、広重を中心に』が開催
はろるど
-

EVENT
2026.01.12
新たな芸術祭「下呂 Art Discovery 2026」が開催へ。「みんなの学校」の作品プランおよび各種プログラムも募集中!
はろるど
-

EVENT
2026.01.09
【パナソニック汐留美術館】『美しいユートピア 理想の地を夢みた近代日本の群像』が開催!ユートピアを追い求めた近代日本の人々の営みを追いかける。
はろるど
-

EVENT
2025.12.19
『モダンアートの街・新宿』が、東京・西新宿のSOMPO美術館にて開催!新宿の半世紀にわたるアートシーンとは?
はろるど
-

EVENT
2025.12.16
ポーラ美術館『SPRING わきあがる鼓動』開催!浮世絵から現代アートまでの多様な表現を箱根で楽しむ
はろるど

千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
はろるどさんの記事一覧はこちら
