EVENT
2025.12.19
『モダンアートの街・新宿』が、東京・西新宿のSOMPO美術館にて開催!新宿の半世紀にわたるアートシーンとは?
1976年7月、東京・新宿に開館したSOMPO美術館。その開館50周年を記念し、新宿をテーマとした『モダンアートの街・新宿』が、2026年1月10日より開催されます。
目次
中村彝、佐伯祐三、松本竣介、宮脇愛子といった新宿ゆかりの芸術家たちにより、近代美術の拠点の一つである新宿の半世紀にわたるアートシーンをたどる意欲的な展覧会です。
新宿に生きたアーティストたちが再結集!大きな3つのポイントとは?
松本竣介《立てる像》 1942年 神奈川県立近代美術館 ©上野則宏
まず大きな見どころは3つ。1つ目は「アートで知る、新宿の文化史」と題し、明治から戦後初期にかけて4つの区分を設定し、それぞれを異なる運動として捉え、新宿に華開いた文化の多様性と持続性についてひも解きます。
「見て、歩いて、味わう新宿」は2つ目のキーワード。同館の位置する新宿では、今も数々のゆかりの地を巡ることが出来ますが、展覧会で新宿の文化に触れたのち、館の外へと飛び出してゆかりの地の息吹に浸る、いわば逆没入型の体験を味わえます。
そして最後にあげられるのが、著名なアーティストたちの意外な関係です。新宿という地域性に注目して取り上げることで、新宿に生きたアーティストたちが再結集するまたとない機会が実現します。
展覧会の構成と各章の見どころ紹介
それでは展示の構成に沿って、細かな見どころをご紹介しましょう。
1章【中村彝と中村屋 ルーツとしての新宿】
中村彝《頭蓋骨を持てる自画像》 1923年 公益財団法人大原芸術財団 大原美術館
1909(明治42)年、相馬愛蔵・黒光夫妻が新宿に中村屋本店を開いたことをきっかけに、荻原守衛(碌山)や中村彝ら多くの若き芸術家が集い、「中村屋サロン」が生まれました。これは日本近代美術の源流の一つといえます。
荻原守衛はロダンに感銘を受けて彫刻家に転向し、短い生涯の中で日本の彫刻史に大きな足跡を残しました。中村彝はサロンの中心的存在として多くの作家を導き、新宿・下落合に芸術家たちの交流の場を築きました。
本章では、日本近代美術と新宿の美術文化を育んだ中村彝に焦点を当て、彼に影響を受けた作家たちの作品を通し、モダンアートの拠点としての新宿をあらためて見つめ直します。
コラム1【文学と美術】
1910(明治43)年、雑誌『白樺』が創刊されました。西洋美術に触れる機会が限られていた当時、セザンヌやファン・ゴッホの作品をカラー図版で紹介し、日本に新しい美術の風をもたらしました。同年、パリから帰国した有島生馬はロダンに『白樺』と浮世絵を贈り、翌年にはロダンから彫刻3点が寄贈されています。
『白樺』の中心人物である武者小路実篤と親交が深かったのが、洋画家の岸田劉生です。劉生は大正期の美術を牽引し、実篤作品の装幀も数多く手がけました。コラム1では、新宿ゆかりの作家による肖像画や、文学者と画家の交流を物語る作品を紹介します。
2章【佐伯祐三とパリ/新宿 往還する芸術家】
1921(大正10)年、白樺美術館第1回展覧会でファン・ゴッホの《ひまわり》(通称「芦屋のひまわり」)が公開され、佐伯祐三は武者小路実篤宅でこの作品と対面しました。この出会いは、彼の画業に大きな影響を与えたといわれています。
同じ年、佐伯は新宿・下落合にアトリエ付きの自宅を建て、近隣の曽宮一念を通じて中村彝と知り合います。1924(大正13)年には家族とともに渡仏し、パリで里見勝蔵やヴラマンクと出会います。ヴラマンクから「アカデミックすぎる」と厳しく批判されたことをきっかけに、写実を離れたスピード感ある都市風景の画風を確立。日本の後進にも強い影響を与えました。
ここでは、パリと日本を往復しながら独自の表現を追求した佐伯祐三を中心に、その創造の軌跡をたどります。
コラム2【描かれた新宿】
モダンアートの街・新宿の歩みは、首都東京の急速な変貌の歴史と重なります。昭和初期に刊行された『画集新宿』と『新東京百景』は、創作版画運動の成果を示す代表的な版画集です。
織田一磨は山本鼎とともに1918(大正7)年に日本創作版画協会を設立し、創作版画の普及に尽力。関東大震災から復興する東京の姿を『画集新宿』(1930[昭和5]年)などに刻みました。
『新東京百景』(1929[昭和4]年~1932[昭和7]年)は、川上澄生ら8名の作家による共同制作で、本展では100図のうち5図を紹介します。これら2つの版画集を軸に、同時代の新宿を描いた作家たちの作品を特集します。
3章【松本竣介と綜合工房 手作りのネットワーク】
新宿の落合やその周辺(目白・中井など)には、中村彝や佐伯祐三をはじめとする画家や文学者が集まり、のちに「目白文化村」「落合文士村」として受け継がれました。さらに隣接する池袋でも、1930年代に多くの芸術家が集まり、各地にアトリエ村が誕生。これらは「池袋モンパルナス」と総称されます。松本竣介をはじめ、靉光、麻生三郎、鶴岡政男、寺田政明らが中心的な存在でした。
松本は下落合にアトリエ付きの自宅「綜合工房」を構え、雑誌『雑記帳』を通じて文化人との交流を広げます。1943(昭和18)年には新人画会を結成し、戦中も静かな風景画を描き続けました。本章では、松本竣介を軸に、綜合工房や九室会、新人画会に集った作家たちの活動を紹介します。
4章【阿部展也と瀧口修造 美術のジャンルを越えて】
1948(昭和23)年、阿部芳文は第1回モダンアート展を機に阿部展也と改名し、下落合に居を構えると以後、彼のもとには多くの芸術家が集まります。1953(昭和28)年には評論家・美術家の瀧口修造が西落合に移り、福島秀子や写真家・大辻清司らが彼のもとで「実験工房」を結成。絵画・写真・音楽・映像・舞台・詩など、ジャンルを超えた活動を展開しました。阿部には芥川(間所)紗織や宮脇愛子らも師事しています。
阿部と瀧口の共作『妖精の距離』(1937[昭和12]年)は、日本における初期シュルレアリスムの代表作として知られています。この作品を起点に、新たな表現を追求した彼らと同時代の作家たちを紹介します。
エピローグ【新宿と美術の旅はつづく】
清宮質文《深夜の蝋燭》 1974年 茨城県近代美術館 照沼コレクション
本展の物語は、中村屋から始まります。水戸に生まれ、新宿で創作に生きた中村彝。一方、エピローグで紹介する清宮質文は新宿に生まれ、水戸に眠る画家です。清宮の版画には、儚さと追憶が静かに息づき、見る者に内省を促します。中村彝から清宮質文へ。50年にわたる新宿と水戸をめぐる物語を、清宮の静謐な版画で締めくくります。
ギャラリートークや参加型の鑑賞会イベントも実施!
最後に会期中に行われるイベントをご案内します。
学芸員のギャラリートーク(自由参加)
日時:1月16日(金)、1月23日(金) いずれも18:00~18:40
概要:本展担当学芸員が展覧会の見どころや出品作品について展示室で解説を行います。(展示フロアを移動しな がらマイクを使用して説明します)
参加方法:時間になりましたら5階展示室入口へお集まりください
参加費:無料 ※ただし本展への入場が必要
ギャラリー★で★トーク・アート(要申込)
日時:2月9日(月) 14:00~16:00
概要:休館日に貸し切りの美術館で、ボランティアガイドと話しをしてみませんか?作品解説を聞くのではなく、参加者が作品を見て、感じて、思うことを話しながら楽しむ参加型の作品鑑賞会です。(定員30名)
参加方法:web申込/2025年12月19日(金)10:00より
美術館ホームページにて受付開始
参加費:1500円(税込)、高校生以下無料 ※招待券、招待状、年間パスポート、割引等は適用できません
新宿という街は、常に変化を恐れず、新しい表現を受け入れてきた場所です。そこに息づく芸術の記憶をたどることは、日本のモダンアートの原点を見つめ直すことでもあります。移りゆく都市の光と影の中で育まれた創造の軌跡を、この展覧会で感じてください。新宿から生まれた、知られざる美術史が、あなたを待っていることでしょう。
※画像写真の無断転載を禁じます。
展覧会情報
『開館50周年記念 モダンアートの街・新宿』 SOMPO美術館
開催期間:2026年1月10日(土)~2月15日(日)
所在地:東京都新宿区西新宿1-26-1
アクセス:新宿駅西口から徒歩5分。
開館時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで)
※最終入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし1/12は開館)、1/13。
観覧料:一般1500(1400)円、25歳以下1100(1000)円、高校生以下無料
※当日券料金。()内は事前購入券料金。
美術館サイト:『開館50周年記念 モダンアートの街・新宿』
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千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
千葉県在住。美術ブログ「はろるど」管理人。主に都内の美術館や博物館に出かけては、日々、展覧会の感想をブログに書いています。過去に「いまトピ」や「楽活」などへ寄稿。雑誌「pen」オンラインのアートニュースの一部を担当しています。
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