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2023.12.28
「色」がテーマの企画展示『歴博色尽くし』の見どころは?色から紐解く人の営みとは
「色」をテーマとした企画展示「歴博色尽くし」が、国立歴史民俗博物館で2024年3月12日(火)~5月6日(月・休)に開催されます。「色」を切り口として、館蔵資料のさまざまな見方を引き出す展覧会になるそうです。
東京名所第一之勝景墨水堤花盛の図 三代歌川広重画 明治14年 国立歴史民俗博物館蔵 展示期間 後期(4/9~5/6)
皆さんには、好きな「色」はありますか? 赤や黄、青などの色彩はもちろん、本展では素材がもつ質感や微細な構造がかもす「つや」、それらの組み合わせがつくる「かたち」まで含め、「色」という言葉を大きな意味で捉えます。
王塚古墳 前室正面戸口右側壁復元模写 原品:古墳時代 国立歴史民俗博物館蔵
特徴的な「いろ・つや・かたち」をもつ館蔵資料を取り上げ、歴史学・考古学・民俗学・自然科学の観点から展示・解説が行われるとのこと。日本における色と人間とのかかわりについて考える本展は、「色」という切り口だからこそ、訪れた鑑賞者も歴史と文化を身近に感じることができそうです。
見どころ①権威?おそれ?色が象徴するさまざまなもの
本展では色に特徴のある作品が数多く展示されます。たとえば、古墳時代の装身具です。
王やエリートたちの身体を飾った勾玉や管玉などの玉類は碧玉、瑪瑙、水晶、琥珀、ガラスなどさまざまな素材からできています。当初は青色や緑色が中心でしたが、時代が下ると無色透明、赤、黄色などの色が加わっていきました。
現代とは異なり、身に着けるものの質と身分が固く結びついていた時代です。現代人が勾玉などを見て「綺麗だな」と感じる以上に、当時の人々は華やかさに「おそれ」を感じていたのではないでしょうか。
本展で展示される作品の時代は多岐にわたり、古墳時代のものもあれば江戸や明治に作られたものなどもあります。さまざまな時代の文化や価値観を象徴する色に着目し、人間の営みについて考えていきます。
見どころ②職人によって生み出される技芸としての色
四季花鳥扇面散蒔絵芝山象嵌印籠 銘「易政」 江戸時代 国立歴史民俗博物館蔵
蒔絵や螺鈿など漆工芸も、「色」という視点で観てみましょう。前近代までは漆の色は五色のみだったそうで、限られた素材の組み合わせによって繊細かつ豊かな色合いが生み出されています。
素材がかもし出す絶妙な艶と質感に加え、職人の手によって生まれる細部に至るまでの造形は、日本の美意識の結集と言っても良いのでは。「何色」とも断定できない「いろ」を、心ゆくまで堪能できそうです。
見どころ③失われる色彩への探求
醍醐寺五重塔彩色模型:ろ1柱帯(腰長押下部)(部分)《山崎昭二郎作成》 国立歴史民俗博物館蔵
残念ながら、色は経年によって褪せていきます。いつのまにか本棚にしまった本の背表紙の色が薄くなっていたり、部屋に飾っていたポスターの色味が変わっていたり。そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか?
文化財にも同じことが言え、経年による変化は避けられません。特に傷みが激しいのは、建造物など自然環境にさらされるものです。
本展では劣化や剥落が進んだ文化財建造物に焦点を当て、醍醐寺五重塔の彩色模型など、実物大の彩色模型が展示されます。当時の豪華絢爛な彩色を復原するため、先達たちが検討を重ねて作り上げました。
日本の文化財に対して、なんとなくしっとりと落ち着いたイメージを持っていませんか? 実は極彩色で華やかに彩られていたものもあるのです。実際の建造物では見ることのできない色を博物館で鑑賞し、興味と見識を広げる機会としたいところです。
展覧会情報
企画展示「歴博色尽くし」
会期:2024年3月12日(火)~5月6日(月・休)
※会期中展示替えあり(前期:~4月7日(日)、後期:4月9日(火)~)
会場:国立歴史民俗博物館 企画展示室A
公式サイト:「歴博色尽くし」
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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