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EVENT

2024.1.16

【新潟2/22〜】『JUNKO KOSHINO コシノジュンコ 原点から現点』から読み解くファッションと芸術

新潟県立万代島美術館で『JUNKO KOSHINO コシノジュンコ 原点から現点』が開幕します。会期は2月22日(木)〜5月26日(日)です。本展は巡回展で、1月21日(火)までは大阪のあべのハルカス美術館でも開催されています。

DRUM TAO “現代甲冑” 衣装 2018年

コシノジュンコさんは、ご存知のとおり日本を代表するファッションデザイナーです。大阪に生まれ、1960年に装苑賞を最年少で受賞し、東京を拠点にファッションデザイナーとして活動を開始。1978年のパリコレクションの参加をはじめ、世界各地でショーを開催し高い評価を得て、オペラなど舞台衣装にも活躍の幅を広げていきました。

コシノジュンコ

近年ではインテリアや食、花火のデザイン、野外エンターテインメントのプロデュースなど、服飾デザインの枠に留まらない活動を行っています。本展では、そんなコシノジュンコさんの原点である高校時代に描いた絵画や装苑賞受賞作から、現在の多彩な活動の全貌が紹介されます。

見どころ①活動の原点とはばたき

装苑賞受賞作品 1960年

コシノさんが新人デザイナーの登竜門とされる「装苑賞」を最年少で受賞したのは、文化服装学院在学中の1960年のこと。以降、東京を拠点にファッションデザイナーとして活動を開始し、1966年には青山にブティック「COLLET(コレット)」を オープン。その後、南青山キラー通りに移転しブティック「JUNKO」をオープンしました。


ザ・タイガースをはじめとするグループサウンズの衣装を手がけ、ブティックには音楽関係者や芸能人、文化人が集ったそうです。こうした職種を超えた出会いは、新たな仕事へとつながっていきます。


1970年の大阪万博では3つのパビリオンユニフォームを手がけ、流行を取り入れつつも、ユニセックス、機能性、斬新なデザインなどが話題を呼びました。当時のことが記憶にある読者の方もいらっしゃるのでは。

キューバでのファッションショー Cabaret “TROPICANA” HAVANA, CUBA 1996年

1978年にはパリコレクションに初参加し、中国、アメリカ、キューバなど各国でショーを開催していきます。本展は、コシノさんが世界的な評価を得ていく様子を改めて展覧できる機会となりそうです。

見どころ②キーワード「対極」

POROPORO at GOBI Desert 2016年

1980年代から、コシノさんは「アール・フュチュール(未来の芸術)」という表現に取り組んできました。宇宙を構成する太陽、地 球、月、大気、そこに生滅する人間など、それらすべてを表現しようとする壮大な試みです。


そのなかで生み出されたコンセプトが「対極」です。宇宙に存在し、対極にある2つが相互に影響しながら、新たな価値を創造していく、という考えです。

Spike Dress 2010年

「対極」はコシノさんのデザインの核心に位置づけられます。「円」「四角」「三角」をベースにしながら、「光と陰」「東洋と西洋」「用と美」「論理と感性」など対極となる要素を共存・融合させて、万物の摂理を表現しようとしているとのこと。


・円…宇宙という完全なる神の創造物の象徴
・四角…人間がつくり出す合理的なものを象徴
・三角…光や人知の方向を示す


筆者としては、実用と美術のどちらにも踏み込みうるファッションという領域への挑戦のように感じられます。衣服は1人の人間が身につけるもので、常に作品の大きさなどの制限がつきまといます。既存の枠を超えて表現したいという強い思いを受け取れるのではないでしょうか。

見どころ③コシノジュンコの「現点」

DRUM TAO “甲冑” 衣装 デザイン画 2016年

本展では、スポーツユニフォーム、オペラやブロードウェイミュージカルなどの舞台衣装にも活動の幅を広げていったコシノさんの「現点」も掘り下げます。


特に注目したいのが、日本文化の魅力を世界に発信する取り組みです。2012年から和太鼓エンターテインメント集団 DRUM TAO(ドラム タオ)の舞台衣装を手がけたり、2015 年の特別展「琳派誕生 400 年記念 琳派 京を彩る」(京都国立博物館 平成知新館)のオープニングイベントでは「能とモード」をテーマにしたファッションショーを開催したりしています。

琳派コレクション “松柄羽織” 2004年

さらに2017年の「KIMONO」展(フランス国立ギメ東洋美術館)、翌年の「Theatre 能 et mode」(パリ市庁舎)というショーなどを通して、コシノさんは伝統的な着物に現代のデザインを織り交ぜた独自のスタイルを発表してきました。


近年の新型コロナウイルス蔓延にともなう外出と交流の制限下では、絵を描くことに時間を費やしたそうです。それは高校時代に画家を目指していたコシノさんの「原点」であり、本展は「未来」を予感させる内容となりそうです。

展覧会情報

会場:新潟県立万代島美術館
会期:2024年2月22日(木)〜2024年5月26日(日)
休館日:月曜日 *ただし3/25、4/1、4/29、5/6は開館
開館時間:10:00~18:00(観覧券販売は17:30まで)
美術館ウェブサイト: JUNKO KOSHINO コシノジュンコ 原点から現点

★関連イベント
『コシノジュンコ トークイベント』

開催日時:2024年2月25日(日) 11:00~12:00
会場:朱鷺メッセ2F 中会議室
定員:200名 [要事前申込/要観覧券]

※申込方法や追加のイベント情報は同館ウェブサイトにてご確認ください

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明菜

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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