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2024.1.17

糸でアート?身近な素材の魅力に出会う『小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ』

京都国立近代美術館で開館60周年記念『小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ』が開幕しました。会期は3月10日(日)までです。

小林正和《SOUND COLLAGE-93(音のコラージュ-93)》1993年 京都市美術館

ファイバーアートの日本におけるパイオニア、小林正和の初の回顧展となる本展では、「糸」を活かしたアートを鑑賞できます。


展示風景

糸といえば、私たちの日々の暮らしに欠かせない素材。本展では思いもよらぬ形で糸の魅力を知ることができ、興味の幅を広げるきっかけになるのではないでしょうか。

本展の見どころについて、美術ライターの明菜が紹介していきます。


ファイバーアートとは?小林正和とは?

小林正和《MIZUOTO-99(水音-99)1999年頃 個人蔵

1960年代以降、欧米において従来のテキスタイルの概念を超えるような作品群が数多く登場しました。さまざまな素材を用い、平面から立体へ、空間へと展開した作品群は、「ファイバーアート」と呼ばれるようになりました。(「ファイバー」は繊維という意味の英単語)

小林正和(1944-2004)は、日本におけるファイバーアートのパイオニアです。京都市立美術大学(のちの京都市立芸術大学)で漆工を学んだものの、より自由な色彩表現を求めて卒業後は川島織物に就職。第6回国際タペストリー・ビエンナーレへの入選を皮切りに、国際的に高く評価されるようになりました。


展示風景

本展は2024年に生誕80年・没後20年を迎える小林正和の初めての回顧展として開催され、小林の代表作や関連資料約80点が展示されます。

加えて、小林と歩みをともにした作家たちの作品も加えた計約100点を通し、これまでのファイバーアートの動向を振り返るとともに、今後の展開についても考える機会となる展覧会です。


身近な糸の美

小林正和《WAVE(波)》(部分)1993年頃 個人蔵

毎日衣服をまとう私たちにとって、糸はとても身近な素材。ありふれていて、日頃は特に価値を感じていないようなものですが、どっこいこれがアートになり、観る人の心に何かが生まれることがあるのです。本展では、当たり前のようで知らなかった糸の可能性や面白さに出会うことができました。

小林はデザイナーとして川島織物に在職するなかで、「1本の糸との出会い」を起点に、糸を「垂らし」「緩め」「張り」、さらにそれらを集積させた作品を制作するようになります。

彼の作品からは、表現したいことのための道具として糸を使うのではなく、「糸の何を表現するか」という視点に立つような、糸の本質を追求した印象を受けました。


小林正和[デザイン]/川島織物[製作]《吹けよ風》1972年 川島織物文化館

出世作シリーズ「吹けよ風」は、糸を垂らして波の模様が表現されています。さらに上から下に行くにつれて徐々に弛みが大きくなり、奥行きやリズム、グラデーションが生まれています。

緻密な計算により織られているからこそ、糸の重力に従って緩やかな曲線を描く性質が際立ち、普段は意識しない糸の美的な一面に出会うことができます。


小林正和《KAZAOTO-87(風音-87)》(部分)1987年 国立国際美術館

一方、ピンと張ったときの糸の張力に着目したのが《KAZAOTO》などの作品群です。糸を張って竹ひごや金属棒をしならせた、弓を彷彿とさせるパーツを用いています。

糸は常にピンと張り、元の形に戻ろうとする棒の力とつり合っています。静かな佇まいの作品ですが、作品のあらゆる部分の緊張に気づくと、作品の見方や印象がガラリと変わってしまうはず。


小林正和《Spirit of the Tree(一本の気)》1987年 個人蔵

重力や張力といった自然の力、糸の色彩や質感、小林の美的な感覚が合わさることで、美術館の中に雄大な情景が生まれています。しかし、目の前の作品に使われているのは「糸」で、美術館を訪れた人が身にまとう衣服の素材でもあります。

糸の可能性を知る驚きと、身近な素材ゆえの親近感と、いろいろな感情を呼び起こされる展覧会でした。皆さまも胸に響く作品を見つけに、美術館へ出かけてみてはいかがでしょうか。


展覧会情報

開館60周年記念
小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ

会場:京都国立近代美術館
会期:2024年1月6日(土)~3月10日(日)

開館時間:午前10時~午後6時
金曜日は午後8時まで開館
*入館は閉館の30分前まで

休館日:月曜日(ただし2月12日(月・祝)は開館)、2月13日(火)

展覧会ウェブサイト:小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ

【写真8枚】糸でアート?身近な素材の魅力に出会う『小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ』 を詳しく見る
明菜

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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