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2024.10.5
東京国立近代美術館で「ハニワと土偶の近代」が開催!楽しみ方は?
きっと誰もが子どもの頃に出会い、身近な存在として親しんできたハニワや土偶。それらの出土遺物を美的に愛でる視点に着目した、東京国立近代美術館の企画展「ハニワと土偶の近代」が2024年10月1日(火)から開催されます。本記事では、その見どころについてご紹介します。
目次
ハニワと土偶の近代とは
かつて、ハニワは古墳時代に、土偶は縄文時代に製作されました。順番でいえば土偶が先ですが、本展のタイトルが「ハニワと土偶」の順番なのは、近代の美術作品や美術展に登場するのは圧倒的にハニワの方が早かったからなのです。
ハニワと土偶、その美的な価値を「発見」した人物として知られるのは、戦後の岡本太郎やイサム・ノグチといった芸術家たちです。
しかし、近代以降、地中から掘り出された遺物に着目した人物は彼ら二人にとどまりません。出土遺物は、美術に限らず、工芸、建築、写真、映画、演劇、文学、伝統芸能、思想、さらにはテレビ番組にいたるまで、幅広い領域で文化現象を巻き起こしてきました。
関連記事:【芸術は爆発だ】岡本太郎の魂を揺さぶる言葉と作品から学ぶ、常識破りの芸術家の生き方
イサム・ノグチ《かぶと》 1952年 一般財団法人 草月会(千葉市美術館寄託) © 2024 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ARS, NY/ JASPAR, Tokyo E5599
なぜ、出土遺物は一時期に集中して注目を浴びたのか。その評価はいかに広まったのか。作家たちが遺物の掘りおこしに熱中したのはなぜか。
これらの疑問を起点に、本展は美術を中心に、文化史の舞台に躍り出た「出土モチーフ」の系譜を、明治時代から現代にかけて追いかけつつ、ハニワや土器、土偶に向けられた視線の変遷を探ります。
ハニワと土偶の近代の楽しみ方
「ハニワと土偶の近代」は、博物館ではなく美術館で開催するからこその、面白い仕掛けが盛りだくさんです。考古学に詳しくない人でも大丈夫!きっとハニワと土偶を鑑賞する楽しさに気づけるはずです。
ハニワ・土偶ブームの裏側を知って楽しむ!
斎藤清《土偶(B)》 1958年 やないづ町立斎藤清美術館 ©Hisako Watanabe
ハニワや土偶が歴史教科書の冒頭に登場するようになったのは、実は遠い昔のことではありません。本展では、いかにしてハニワ・土偶ブームが始まり、人々にとって身近なものになっていったかを読み解きます。
ハニワや土偶が「芸術」として語られるようになったのも近代以降のことです。例えば、ハニワは古い時代の服飾や生活を伝える視覚的な考古資料ですが、やがてハニワそのものの「美」が称揚されるようになりました。
実際にハニワを美術品として鑑賞しながら、当時の日本人たちが探求した「日本的なるもの」や「伝統」、美意識についてイメージを膨らませられます。
考古図譜からマンガまで幅広いジャンルを楽しむ!
五姓田義松 《埴輪スケッチ(『丹青雑集』より)》 1878年 個人蔵(團伊能旧蔵コレクション) 写真提供:神奈川県立歴史博物館
本展の大きな特徴は、とりあげる時代とジャンルの幅広さです。出土品を克明に描いた明治時代のスケッチから、近現代の絵画や彫刻などのアート、果てはマンガまで網羅し、ハニワと土偶の世界をにぎやかに楽しく見せてくれます。
ハニワと土偶があらゆる文化に連なっていることを知ると、美術館を出た時、景色が少しだけ変わってみえるかもしれません。
ハニワと土偶から連なる未来を楽しむ!
タイガー立石《富士のDNA》 1992年 Courtesy of ANOMALY
ハニワと土偶は考古学に限らず、多方面でしだいに広く大衆へと浸透していきました。特撮などのジャンルで、先史時代の遺物に着想を得たキャラクターを見たことがある人もいるのではないでしょうか。
このようにさまざまな形で現代に連なる縄文時代や古墳時代の文化は、「日本人」のオリジンに位置づけられるといえます。私たちのなかに無意識に刻み込まれたその自覚を、あらためて“掘り出す”ような展示を楽しみましょう。
ハニワと土偶を見るのがきっともっと楽しくなる!
過去のものであるハニワと土偶は、長い歴史を経て現代につながり、やがて未来へと続いていきます。ハニワと土偶の芸術的な面白さや美しさに注目しながら、日本で暮らす私たちのルーツともいえる文化に触れてみましょう。
開催概要
<会場>
東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
<会期>
2024年10月1日(火) ー 12月22日(日) ※会期中、一部作品は展示替えがあります。
<休館日>
月曜日 (ただし10月14日、11月4日は開館)、 10月15日(火)、 11月5日(火)
<開館時間>
10:00—17:00 (金・土曜日は10:00—20:00) *入館は閉館の30分前まで
<アクセス>
東京メトロ東西線「竹橋駅」1b出口 徒歩3分
<問い合わせ>
050-5541-8600 (ハローダイヤル)
<主催>
東京国立近代美術館、 NHK、 NHKプロモーション、 毎日新聞社
<協賛>
JR東日本、 光村印刷
「ハニワと土偶の近代」
画像ギャラリー
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文筆家(ライター)。芸術文化を専門に取材執筆を行い、アートと社会について探究する書き手。SNSでも情報を発信する他、さつまがゆく Official Podcastでは取材執筆にまつわるトークを配信中。
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