STUDY
2024.9.30
【芸術は爆発だ】岡本太郎の魂を揺さぶる言葉と作品から学ぶ、常識破りの芸術家の生き方
目次
「芸術は爆発だ」
岡本太郎は、その力強い言葉と、芸術への飽くなき探求心をもって常識を打ち破る作品で今もなお多くの人々を魅了しています。彼は画家に留まらず、彫刻、書、陶芸、建築、執筆、メディアアートなど、さまざまな分野で活躍しました。彼の作品や言葉からは、自分の内側にある感情を信じ、情熱を持って生きることの大切さが強く伝わってきます。「太陽の塔」や「明日の神話」などの代表作、そして彼の魂を揺さぶる言葉の数々から、既成概念に囚われない革新的な芸術の世界を冒険しましょう。
http://www.bunshun.co.jp/bunshitachi/enoaru.htm, Public domain, via Wikimedia Commons
岡本太郎という芸術の巨人
芸術家の申し子の誕生
岡本太郎は、1911年、神奈川県橘樹郡高津村二子(現・川崎市高津区二子)で生まれました。漫画家の父・岡本一平と歌人で小説家の母・岡本かの子を両親に持つ芸術一家に生まれ、幼い頃から創造性溢れる環境で育ちました。幼少期から自立心が強く、感受性が豊かだったため、小学校を4回も転校したというエピソードが残っています。1929年、岡本は18歳の若さで一家でパリに渡ります。その後、1940年まで10年以上パリで過ごし、当時の最先端芸術に触れ、独自の芸術観を形成していきます。
パリでの衝撃と独自の思考形成
渡仏した岡本は、1932年にパリでピカソの作品「水差しと果物鉢」に感銘を受けます。
ピカソは、時代の矛盾や社会の現実を大胆に描くアーティストでした。彼の作品は美しさだけでなく、時には醜さも含み、深いメッセージを伝えます。岡本はこのようなピカソの姿勢に強く共鳴し、“ピカソを超える作品を作る”ことを決意します。ピカソの作品に触れることで、より自由で抽象的な表現を目指すようになりました。
▼岡本太郎がピカソからどんな影響を受け、何に感動したのか、詳しく知りたい方はこちらの本がおすすめです!
「ピカソ[ピカソ講義]」岡本太郎 著/宗左近 著
▼ピカソについてはこちらの記事でも紹介しています!
関連記事:
パブロ・ピカソの楽しみ方!世界一多くの作品をつくった天才のおもしろエピソード
1933年、ヨーロッパの抽象芸術運動を代表する芸術家集団だった「アプストラクシオン・クレアシオン協会」の最年少メンバーとして加入しました。しかし、純粋抽象芸術の限界を感じ、新たな表現を求めてシュルレアリスムの世界へと足を踏み入れます。転機となったのが、1937年にサロン・デ・シュールアンデパンダン展で発表した作品「傷ましき腕」でした。この作品がシュルレアリスムの巨匠アンドレ・ブルトンに高く評価され、彼は当時のスター芸術家たちとの交流を深めていきました。
▼「傷ましき腕」
パリ時代の初期作品。赤いリボンで縛られた腕は、当時の社会や芸術界の束縛、そして戦争の影に対する岡本太郎の抵抗を表しています。力強い筆致と鮮烈な色彩は、彼の内なる情熱を表現しています。
また、パリ大学で哲学を学んでいた彼は、民族学博物館「ミュゼ・ド・ロム」と衝撃的な出会いを果たします。絵画や彫刻を凌ぐ人類の営みに衝撃を受け、「芸術とは何か」「人間とは何か」を深く探求していきます。そして、日本にも民族博物館を設立するという夢を抱き始めます。
さらに、思想家バタイユとの偶然の出会いから、その魅力に引き込まれるかのように過激な思考に共鳴していきます。秘密結社「アセファル」に参加した岡本は、サンジェルマンの森で行われた秘儀体験から、後の代表作「夜」「電撃」を創作したと言われています。
岡本太郎の精神を反映した代表作
岡本太郎は、戦争を機に日本に帰還します。戦争によってパリ時代の作品やアトリエを失い、ゼロからの出発を余儀なくされました。しかし彼は、戦後の閉塞感漂う日本の美術界に反旗を翻し、「対極主義」という革新的な芸術思想を掲げ、精力的に作品を発表しました。同時に、縄文土器や日本各地の民俗文化など、日本の根源的な美にも目を向け、精力的な活動を展開し、日本美術界に旋風を巻き起こしていきます。
■代表作:森の掟(1950年)
横2m59cm、縦約1m80cmの油彩画の中央に描かれた怪物は、見る者に強烈なインパクトを与えます。チャックを開けると何が飛び出すのか、強烈な色彩と力強い筆致が何を訴えかけているのか―その迫力に観る者の心は引き込まれます。この独特で強烈な作風は当時批判を受けましたが、岡本太郎は決して屈することなく描き続けました。この作品は、彼が提唱した「対極主義」を象徴する作品の一つです。
■代表作:坐ることを拒否する椅子(1963年)
人間工学に基づいた快適な椅子が流行し始めた時代に、岡本太郎はあえて座りにくい椅子を制作しました。「安楽に流されず、緊張感を持って生きよ」と、彼に言われているような気さえします。機能性よりも精神性を重視するこの作品は、彼の反骨精神を体現したものです。
■代表作:明日の神話(1968年)
幅30m、高さ5.5mの巨大壁画です。メキシコで制作され、長らく行方不明になっていましたが、2003年に奇跡的に発見されました。原爆の炸裂という悲劇的な瞬間を描写しながらも、そこから力強く立ち上がろうとする人間の姿を表現し、未来への希望を託した作品です。
現在、渋谷駅に恒久設置され、多くの人々に感動を与え続けています。設置から15年経過し、想定以上の傷みが進行しているため、2023年10月10日から大規模改修に入りました。次世代に作品を残すために複数年かけて修復を行うことが決定しました。亀裂や剥落、変色した部分を修復し、壁画裏の環境改善も実施される予定です。
DannyWithLove, CC BY-SA 4.0
■代表作:太陽の塔(1970年)
大阪万博のシンボルとして制作された高さ70mの巨大モニュメント「太陽の塔」は、博覧会のテーマ「人類の進歩と調和」に基づき、テーマ館の中心に配置されました。岡本太郎の代表作であり、未来(黄色の顔)、現在、過去(背面の黒い太陽)を象徴する3つの顔を持つこの塔は、生命のエネルギーと人間の根源的な力を表現しています。内部には「生命の樹」と呼ばれる巨大な彫刻があり、生命の進化を描いています。
「太陽の塔は、パリでの民族学博物館「ミュゼ・ド・ロム」に感銘を受け、日本独自の文化を展示する場を作りたいという彼の思いが反映されたものです。太陽の塔は万博のシンボルとなり、岡本太郎は大衆に愛される前衛芸術家として、後のパブリックアートに大きな影響を与えました。
▼岡本太郎の他の作品についてはこちらの記事でも紹介しています!
関連記事:
私たちの魂が求める戦う芸術『展覧会 岡本太郎』大阪中之島美術館にて開催中
岡本太郎の言葉が伝えるアートとは?
岡本太郎の魅力は、作品だけにとどまりません。パリ時代に思想家バタイユから発信することと行動することを学んだ彼は、数多くの言葉を残しています。自分の哲学や生き方を力強く発信し、多くの人々に影響を与えてきました。その言葉は、時に挑発的で、時に優しく、常に私たちを「本当の人生」へと導いてくれます。
岡本太郎の名言「芸術は爆発だ」は、1981年に放映されたテレビCMで広まり、1986年には「新語・流行語大賞」を受賞しました。この言葉は、彼の芸術哲学や人生観を反映し、アートが持つエネルギーと革新性を強調しています。
岡本は創作活動において、自分の感情や体験を率直に表現することを重視しました。彼の作品には強烈な色彩や形が使われており、これが彼の情熱や怒り、喜びを表現しています。このように、アートは内面を表現する手段であり、観る者にも同様の反応を引き起こす力があります。また、アートは社会に刺激を与え、新たな視点を提供する役割も果たします。
岡本の「芸術は爆発だ」という言葉は、アートの自由さや個人の表現力、そして社会への影響力を示しています。アートは難解なものではなく、誰もが自分自身を表現できる手段です。
この言葉を通じて、自分の内面に隠れている「爆発」を発見する可能性を感じ、一歩前に進む勇気を与えられたように思います。
岡本太郎の展示をみよう!
芸術作品について考えたり感じたりすることで、自分自身の「爆発」を体験できるかもしれません。岡本太郎の独特なアートやその哲学に触れてみてはいかがでしょうか。岡本太郎の作品を楽しめるスポットをご紹介いたします。
■岡本太郎記念館
岡本太郎記念館は、彼の生涯や作品を総合的に紹介している場所です。館内では、岡本が残した言葉や思想に触れながら、作品の背景や制作過程を学ぶことができます。
住所:東京都港区南青山6丁目1-19
営業時間:10:00~18:00(最終入館は17:30まで)
休館日:火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
料金:一般650円(550円)/小学生300円(200円)
※( )内は15人以上の団体料金
公式URL:岡本太郎記念館
■川崎市岡本太郎美術館
川崎市岡本太郎美術館は、岡本太郎が生まれた川崎にある美術館です。彼の多様な作品を収蔵し、定期的に特別展も開催されています。美術館のデザイン自体も岡本の芸術的な精神を反映しており、訪問者はそのユニークな建築とともにアートを楽しむことができます。また、体験型のイベントが開催されることもあり、アートを身近に感じることができます。
住所:川崎市多摩区枡形7-1-5 生田緑地内
営業時間:9:30~17:00(最終入館は16:30まで)
休館日:月曜日(月曜が祝日の場合は除く)、祝日の翌日、年末年始
料金:料金は展覧会ごとに異なります。
公式URL:川崎市岡本太郎美術館
「川崎市岡本太郎美術館」では2024年10月6日までイベント開催中!『目もあやなオバケ王国 岡本太郎のオバケ論』
■『目もあやなオバケ王国 岡本太郎のオバケ論』
岡本太郎はオバケを日本文化の重要な要素として捉え、人間の内面や真の姿を具現化したものとして表現しました。この展覧会では、岡本の独自の視点から見たオバケや、彼の創造性とユーモアを楽しむことができます。また、人気作品「夜」や「森の掟」なども展示され、さまざまな作品を一度にお楽しみいただけます!
会期: 2024年7月12日(金)~2024年10月6日(日)
開館時間:9:30-17:00(入館16:30まで)
常設展のみ開催:一般500(400)円、高・大学生・65歳以上300(240)円
●7月20日(土)~9月1日(日)
企画展とのセット料金:一般900(720)円、高・大学生・65歳以上700(560)円
※( )内は20名以上の団体料金、中学生以下無料
主催: 川崎市岡本太郎美術館
「目もあやなオバケ王国 岡本太郎のオバケ論」
まとめ
岡本太郎の芸術は、単なる視覚的な美しさだけでなく、私たちの人生を豊かにする力強さを持っています。その根源は彼の芸術への飽くなき探求心と独特な感性からくる思想にあるのではないでしょうか。
作品を通して、そして言葉を通して、時代を経ても私たちに「自分らしく生きる」ことの大切さを教えてくれます。彼の魂に触れ、あなたの何かが殻を破り、内側から湧き出る情熱を感じられるのではないでしょうか。
画像ギャラリー
このライターの書いた記事
Lily
1997年生まれ。観光学部出身の東京都在住のライター。
イロハニアートを通じて、芸術の美しさや楽しさを多くの人に伝えられるように日々精進しています。
猫と漫画が好き!
1997年生まれ。観光学部出身の東京都在住のライター。
イロハニアートを通じて、芸術の美しさや楽しさを多くの人に伝えられるように日々精進しています。
猫と漫画が好き!