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STUDY

2025.1.18

『プラダを着た悪魔』に見るファッションとアートの融合!やさしく読めるシャネルの哲学と歴史

映画『プラダを着た悪魔』は、ファッションの力を教えてくれる、私たちにとってのバイブルのような作品です。シャネルやプラダといった高級ブランドをまとったきらびやかな姿は、女性たちの憧れであるだけでなく、登場人物の心情や成長を映し出しています。この映画は、ファッションを通じて自分らしさを表現することの素晴らしさを伝えてくれます。

2006年に公開されたこのアメリカのコメディドラマ映画は、ローレン・ワイズバーガーの同名小説を原作としており、アカデミー賞を含む多くの賞にノミネートされ、批評家や観客から高い評価を受けました。

今回は、『プラダを着た悪魔』を通じて、シャネルの歴史やその魅力、そして私たちに語りかけるメッセージを探っていきましょう。まるで美術館で絵画を鑑賞するように、シャネルが持つ奥深い世界観を感じてみてください。

El javo 20th century fox, Public domain, via Wikimedia Commons

『プラダを着た悪魔』:ファッションを通して描く人間ドラマ

『プラダを着た悪魔』ってどんな映画?

『プラダを着た悪魔』は、ジャーナリスト志望の素朴な女性、アンドレア・サックス(アン・ハサウェイ)が、鬼編集長として有名なファッション誌「ランウェイ」の編集長ミランダ・プリーストリー(メリル・ストリープ)のアシスタントとして採用されるところから始まります。

ミランダは冷酷で、仕事に対して妥協を許さない上司。華やかさと残酷さを併せ持つファッション業界で、アンドレアはミランダの要求に耐えながら、もがき苦しみながらも成長していく姿を描いています。

この映画では、単に仕事ができるようになるだけでなく、アンドレア自身の内面も成長していく様子が描かれています。その変化をファッションを通して表現している点が、この映画の面白さの一つと言えるでしょう。

シャネル・ガールの魅力と時代を超えた美の立役者

『プラダを着た悪魔』では、女優たちが高級ブランドの衣装を見事に着こなし、強い印象を与えています。登場人物の心情や成長をファッションを通して表現するという、まるで魔法のような演出がされています。

作中の衣装を担当したのは、世界的にヒットした「セックス・アンド・ザ・シティ」や「エミリー、パリへ行く」のスタイリスト、パトリシア・フィールド。彼女は、アンドレアにシャネルのアイテムを着用させることで、上品で洗練された「シャネル・ガール」のイメージを見事に表現しました。

▼パトリシアのアートコレクションが中村キース・ヘリング美術館にて紹介されました。
ハウス・オブ・フィールド展 <すでに終了しました>
ハウス・オブ・フィールド展の詳細はこちらから

【中村キース・ヘリング美術館】
山梨県北杜市小淵沢町10249-7
開館時間:9:00〜17:00(最終入館16:30)
入館料:一般 1,500円 / 障がい者 600円 /
16歳以上の学生 800円 / 小人(15歳以下) 無料 /
団体(20名以上) 1500円 ※要予約
HP:中村キース・へリング美術館

UNIT7, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons

映画『プラダを着た悪魔』とシャネル~アンドレアを輝かせた魔法のアイテム~

ファッション初心者のアンドレアが、徐々に洗練されていく姿を印象的に彩るのが、シャネルのアイテムの数々です。特に、シャネルの象徴とも言える「リトルブラックドレス」と「パールネックレス」は、彼女の変身を象徴するキーアイテムとなっています。

時代を超えて愛される永遠の定番「リトルブラックドレス」の魅力に迫る

「リトルブラックドレス(LBD)」は、シンプルな黒いワンピースでありながら、特別な存在感を放つアイテムです。1926年にココ・シャネルによって生み出されて以来、その洗練されたシルエットと万能な着こなしで、時代を超えて女性たちを魅了し続けています。

20世紀初頭、黒は喪服の色とされ、日常的に着る色ではありませんでした。しかしシャネルは、シンプルで美しいブラックドレスを発表し、当時のファッションの常識を覆します。

当時のファッションは、体のラインを強調するコルセットや、動きにくいロングスカートが主流でした。シャネルのリトルブラックドレスは、動きやすく、シンプルながらも女性らしさを引き立てるデザインで、女性の解放と自由を象徴する、まさに革命的な存在となりました。

Staff photographer, Rhode Island School of Design Museum of Art, CC0, via Wikimedia Commons

シャネルの「コスチュームジュエリー」がもたらす新たな美

アンドレアが身に着けるシャネルのコスチュームジュエリーは、階級社会に変革をもたらした重要なアクセサリーです。
かつてはアクセサリーには本物の貴金属のみが用いられていましたが、シャネルはイミテーションのパールやストーンを取り入れたコスチュームジュエリーをファッションとして提案しました。

これにより、シャネルは上流階級に限られていたファッションを一般大衆にも広めることに成功し、ファッションの世界における階級の壁を打ち破りました。
シャネルのアイコニックなジュエリーは、被服文化において女性たちを階級の枠から解放する役割を果たし、作中でもアンドレアのファッションに対する固定概念を変えるきっかけとなります。

コスチュームジュエリーとは、貴金属や天然石を使わず、デザイン性に重点を置いた装飾品のことです。
シャネルのデザインは、トレンドを取り入れつつも遊び心を大切にし、豊かなボリューム感が特徴です。模造パールやガラスを用いたジュエリーは、さまざまなスタイルにマッチし、日常的に使いやすいアイテムとして人気があります。
華やかさを演出しながらも、気軽に身に着けられるため、特別なイベントからカジュアルな場面まで幅広く活躍します。

Marion Golsteijn, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons

シャネルの伝統にとらわれない「モダニズム」

シャネルの革新性を語る上で欠かせないのが、「モダニズム」という概念です。モダニズムとは、19世紀末から20世紀にかけて芸術や文化で起こった大きな潮流を指し、伝統にとらわれず、合理性や機能性を重視した表現が特徴です。

20世紀初頭、女性の服装はコルセットやロングスカートなど、男性の視線を意識した体を締め付ける非実用的なスタイルが主流でした。ファッションは単なる衣服の選択ではなく、当時の社会規範を反映したものだったのです。そんな時代に登場したのがココ・シャネルです。

彼女はファッションを通じて女性を古い価値観から解放し、自由で自分らしい生き方を提唱しました。シャネルは、女性が心地よく、自由に、そして自分らしく生きられる服を追求し続けました。彼女の代表作であるリトルブラックドレスは、それまでのコルセットで体を締め付けるドレスとは全く異なり、シンプルでありながらエレガントという新しい価値観を打ち出したのです。これは単なる「ファッション」ではなく、女性の生き方や価値観に大きな影響を与える「モード」の一形態と言えるでしょう。

「モード」とはフランス語で「流行」や「ファッション」を意味しますが、それ以上に、時代の精神を反映し、芸術的な創造性や社会的メッセージを内包するものです。「モード」は単なる衣服の流行を超え、女性の生き方や社会の在り方に挑戦し、新しい時代の象徴となる存在でした。

シャネルが創り出したモードは、単なる装いを超え、女性が自由で自立した生き方を選ぶための手段であり、当時の社会規範に対する挑戦でもあったのです。

See page for author, Public domain, via Wikimedia Commons

シャネルが纏うオーラ~映画『プラダを着た悪魔』で表現されたもの~

映画の中で、当初ファッションに無関心だったアンドレアが、シャネルのリトルブラックドレスやパールネックレスを身に着けることで、自信に満ち溢れ、周囲を魅了する存在感を放つようになります。シャネルのデザイン哲学は、女性に自由と自立をもたらし、その生き方そのものがエンパワーメントの象徴として、多くの女性に今もなお影響を与え続けていることを表現しています。

シャネルの歴史を彩る、革新と創造性の軌跡

[1], Public domain, via Wikimedia Commons

幼い頃に母と生き別れ、父に捨てられたココ・シャネルは孤児院で育ちました。成長した彼女は、エチエンヌ・バルサンの愛人となり、彼の支援を受けて1910年にパリに帽子店を開きました。その後、香水や洋服、バッグなど、様々な分野に進出し、世界的なブランドへと成長を遂げました。

シャネルの歴史は、まさに革新と創造性の連続でした。常に新しい素材やデザインに挑戦し、時代を超越したスタイルを生み出しました。

1921年: 香水「シャネル N°5」を発表します。当時主流であったフローラルな香りとは一線を画し、神秘的で官能的な香りは世界中の女性を魅了し、現在でも愛され続けています。

arz, Public domain, via Wikimedia Commons

1926年: それまで喪服の色とされていた黒を用いた「リトルブラックドレス」を発表します。シンプルでありながら洗練されたデザインは、女性の美しさを際立たせ、ファッション史に名を刻む名作となりました。

1955年: 女性が両手を自由に使えるようにとの発想から、それまで一般的でなかったショルダーバッグ「2.55」を発表します。現在も愛される「マトラッセ」の原型となり、シャネルの象徴的なアイコンバッグとなりました。

シャネルは、その長い歴史の中で、常に「女性らしさ」「エレガンス」「革新」を追求し、時代を超えて愛されるブランドとしての地位を確立してきました。シャネルは、単なる高級ブランドにとどまらず、女性一人ひとりが自分らしく、美しく、そして力強く生きるためのメッセージが込められた存在だと言えるでしょう。

芸術と自立:ココ・シャネルが築いた独自のファッション哲学

ココ・シャネルは、幼少期に孤児院で育ち、後ろ盾を持たず、厳しい環境で育った彼女は、自分の力で道を切り開く必要がありました。その強い自立心が、後に彼女の成功の鍵となったのです。シャネルは、「傲慢さは私の性格の鍵であり、成功の鍵でもある」と語り、自らの強い意志と自信を貫きました。

シャネルは、幼少期の厳しい経験を補うために、ひたすら本を読み、教養を身につけました。また、パブロ・ピカソやサルバドール・ダリといった多くの芸術家たちと親交を深め、彼らの作品からインスピレーションを得ていました。この芸術家とのつながりが、シャネルの独自のデザイン哲学にも大きな影響を与えています。

彼女は、困難な境遇を乗り越えて自立し、独自の哲学と大胆さでファッション界における不動の地位を築き上げました。その生き方そのものが、時代を超えて多くの女性に勇気を与える存在となっています。シャネルのブランドは、単なるファッションを超え、女性の自立やエンパワーメントの象徴として、現在も多くの女性の憧れを集めています。

Los Angeles Times, CC BY 4.0 , via Wikimedia Commons

「2024/25年 メティエダール コレクション」が開催!シャネルが愛したコロマンデル屏風!

2024年12月3日に中国・杭州でシャネルのショー「2024/25年 メティエダール コレクション」が開催されました。今回のショーは、ココ・シャネルが生涯愛し続けた、コロマンデル屏風からインスピレーションを受けています。
ショーに先駆けて、ヴィム・ヴェンダース監督とアンバサダーのティルダ・スウィントンが出演するショートフィルムも公開しました。

約3分間のこの映像は、西湖の絶景や杭州の歴史を背景に、シャネルと中国文化のつながりを描いています。ココ・シャネルは生涯を通じてコロマンデル屏風を愛し、その風景やディテールが1950~60年代のデザインに影響を与えました。ココ・シャネルは中国・杭州を訪れたことはありませんでしたが、中国・杭州は、特に彼女を魅了した地であり、ヴィム・ヴェンダース監督はその屏風からインスピレーションを受けてショートフィルムを制作しています。この作品では、旅や文化交流、そして文化を超えた対話の重要性が讃えられており、コレクションのテーマに深みを与える作品です。

▼「2024/25年 メティエダール コレクション」のショートフィルムについて詳しくはこちらの記事でも読めます!
シャネルから速報!ショーに先駆け、ティルダ・スウィントンとヴィム・ヴェンダース監督がタッグを組んだショートフィルムが公開。|Fashion|madameFIGARO.jp(フィガロジャポン)

▼「2024/25年 メティエダール コレクション」について詳しくはこちら
CHANEL 2024/25年 メティエダール コレクション ショー – 杭州にて開催 | CHANEL シャネル

『プラダを着た悪魔』とシャネル:時代を超えた美のメッセージ

ココ・シャネルは、モダニズムの精神をファッションに取り入れ、女性の社会進出と自己表現を後押ししました。彼女が創り出したシンプルで美しいデザインは、時代を超えて愛され続ける「永遠の定番」となっています。

シャネルのアイテムを身につけることは、単に流行を追いかけるのではなく、ココ・シャネルの哲学、そしてモダニズムの精神を受け継ぐことでもあります。

映画『プラダを着た悪魔』は、ファッションを通じた自己表現の重要性を描いた作品であり、作中でシャネルの衣装を使用することでファッションを通して社会へメッセージを伝えているのではないでしょうか。

アンドレア・サックスの成長は、彼女がシャネルの象徴的なアイテムを身にまとうことで、内面が変化していくことも映し出しています。
ファッションとは、自身を着飾るアイテムでもあり、自己表現の手段でもあり、特にシャネルのアイテムは女性の社会進出や自立などのメッセージ性を持っています。
日々のコーディネートにシャネルのアイテムを取り入れて、自分らしさを表現してみるのも楽しいかもしれません。


【写真8枚】『プラダを着た悪魔』に見るファッションとアートの融合!やさしく読めるシャネルの哲学と歴史 を詳しく見る

むらいさきの個展「Spring has come」南青山イロハニアートスタジオにて開催!2025.2.22(土)-2.24(月・祝)11時〜18時

Lily

Lily

1997年生まれ。観光学部出身の東京都在住のライター。
イロハニアートを通じて、芸術の美しさや楽しさを多くの人に伝えられるように日々精進しています。
猫と漫画が好き!

1997年生まれ。観光学部出身の東京都在住のライター。
イロハニアートを通じて、芸術の美しさや楽しさを多くの人に伝えられるように日々精進しています。
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