EVENT
2024.12.26
【ポーラ美術館】色の秘密を解き明かす「カラーズ展」モネやマティス、草間彌生まで時代を超える色彩表現を体感
私たちの生活に溢れる豊かな色彩。私たちの身の周りにある色は、は空の色、自然の色、街並みの色、生活用品の色などに加えて、ゲームやスマホなど画面を通してみる「仮想の色」など多岐にわたります。そんな「色」の魅力について、印象派から現代アートまで約150年にわたる芸術の歴史を通じて紐解く特別展「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」が、箱根のポーラ美術館で開催中です。本展では、モネやマティスといった巨匠から、草間彌生など現代アートを代表する作家まで、様々な美術家がどのように「色彩」を探求・表現してきたか、その軌跡を時代を超えて辿ります。
目次
なぜ今、「色」なのか?
現代社会は、かつてないほど色彩に満ち溢れています。スマートフォンやPCの画面には10億色を超える色彩の再現力があると言われています。私たちは、自然や都市など現実の色より、画面を通して経験される「仮想の色」に慣れつつあります。そんな時代だからこそ、本展覧会では、美術家たちが長年追求してきた「本当の色」に焦点を当て、その表現の歴史を紐解きます。
展覧会の見どころ
見どころ1:印象派から現代アートまで、色彩の変遷をダイナミックに紹介
ポーラ美術館が誇るコレクションを中心に、印象派の巨匠モネやルノワール、新印象派のスーラやシニャック、フォーヴィスムのマティスなど、西洋美術史を彩る画家たちの作品が一堂に会します。さらに、近年新たに収蔵された10点の初公開作品も加わり、色彩の進化をダイナミックに体感できます。
見どころ2:絵具の革新と色彩論の発達
19世紀初頭に始まった色彩論の研究は、色を色相、明度、彩度の3つの軸で分析することを可能にし、補色関係などの色の組み合わせが発見されました。また、チューブ入り油絵具の登場は、画家たちの表現を大きく変えました。展覧会では、これらの革新が美術史に与えた影響を、作品を通して深く理解することができます。
見どころ3:画家たちの新たな表現方法への挑戦
20世紀に入ると、絵具の進化はさらに加速し、アクリル絵具やポーリング(流し込み)、ドリッピング(たらし)、ステイニング(染み込み)といった新しい技法が生まれました。戦後の抽象表現主義の画家たちは、これらの技法を用いて、従来の絵画の枠組みを打ち破るような自由な表現を追求しました。本展覧会では、これらの革新的な表現に焦点を当て、現代アートのルーツを探ります。
見どころ4:現代作家たちの挑戦 - 色彩の新たな可能性
本展覧会では、草間彌生やヴォルフガング・ティルマンス、丸山直文など現代作家たちの作品も数多く展示されています。彼らは、近代美術家たちの成果を反芻しながら、独自の表現方法を探求しています。
展覧会構成
本展は、プロローグ・第1部・第2部の3構成に分けて展示を行っています。
プロローグ 光の色「Opticks」光が織りなす色彩の世界
展覧会は写真家・杉本博司の「Opticks」シリーズで幕を開けます。プリズムを通過した光のスペクトルをポラロイドカメラで撮影した本シリーズは、まさに「色」の本質に迫る作品群です。虹色に輝く光のグラデーションは、私たちが日常で目にする色彩の源泉を視覚的に表現しています。プロローグでは、杉本自身が「光を絵の具として使った新しい絵(ペインティング)」と評した写真作品をご紹介します。
杉本博司《Opticks 026》2018年 ポーラ美術館 © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
杉本博司《Opticks 029》2018年 ポーラ美術館 © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
杉本博司《Opticks 082》2018年 ポーラ美術館 © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
杉本博司《Opticks 048》2018年 ポーラ美術館 © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
第1部「光と色の実験」印象派が革新した色彩表現
19世紀後半、クロード・モネをはじめとする印象派の画家たちは、それまでの常識を覆す色彩表現を確立しました。物体の「固有色」にとらわれず、光の変化によって刻々と変わる色彩を追求した彼らの作品からは、近代絵画における色彩革命の軌跡を読み取ることができます。
おもな出品作家(順不同): / ウジェーヌ・ドラクロワ / クロード・モネ / ジョルジュ・スーラ / ロベール・ドローネー / ワシリー・カンディンスキー / アンリ・マティス / モーリス・ルイス / ヘレン・フランケンサーラ― / ケネス・ノーランド / アド・ラインハート / ダン・フレイヴィン / ドナルド・ジャッド / ゲルハルト・リヒター / ベルナール・フリズ / 白髪一雄 / 田中敦子 / 桑山忠明 / 前田信明
ゲルハルト・リヒター《ストリップ(926-3)》2012年 ポーラ美術館 © Gerhard Richter 2024 (18062024)
第2部「色彩の現在」現代における色彩の挑戦
「カラーズ」展の第2部では、現代の美術シーンを牽引する作家たちが、色彩という普遍的なテーマにどのように向き合い、独自の表現へと昇華させているのかを深く掘り下げます。彼らは、近代美術家たちが切り拓いた色彩の地平を受け継ぎながらも、既成概念にとらわれない自由な発想で、この時代ならではの色彩表現を追求しています。
おもな出品作家(順不同): / 草間彌生 / ヴォルフガング・ティルマンス / 丸山直文 / グオリャン・タン / 山口歴 / 流麻二果 / 門田光雅 / 坂本夏子 / 山田航平 / 川人綾 / 伊藤秀人 / 中田真裕 / 小泉智貴 / 山本太郎
草間彌生《無限の鏡の間 ―求道の輝く宇宙の永遠の無限の光》 2020年 作家蔵 ©YAYOI KUSAMA Courtesy of Ota Fine Arts
ヴォルフガング・ティルマンス《フライシュヴィマー 74》2004年 ポーラ美術館 © Wolfgang Tillmans, Courtesy Wako Works of Art
グオリャン・タン《It Moves it》2023年 作家蔵 ©Guo-Liang Tan, Courtesy of Ota Fine Arts Singapore/ Tokyo/ Shanghai
山口歴《MÖBIUS NO. 18》2021年 夢工房蔵 ©︎ 2021 MEGURU YAMAGUCHI ©︎ 2021 GOLD WOOD ART WORKS Photo 浦野航気
小泉智貴《Multicolored Ruffle Cape》2020年 作家蔵
arfex(アルフレックス)のソファMARENCO(マレンコ) Photo by Ken Kato
arfex(アルフレックス)のソファを使用しているポーラ美術館 B2F ラウンジスペース / Photo by Ken Kato
さいごに
色彩の旅は、きっとあなたを豊かにする
ポーラ美術館で開催中の「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」展は、美術史における色彩の変遷をたどりながら、現代アートの新たな可能性を探る、非常に見ごたえのある展覧会です。
この展覧会を通じて、色彩の奥深さや、美術家たちの飽くなき探求心に触れることで、きっとあなた自身の感性が磨かれるはずです。日常に溢れる色を見つめ直し、新たな視点を発見する旅に、ぜひ出かけてみてください
展覧会概要
「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」
【会期】 2024 年12月14日(土)― 2025 年5月18日(日)
【会場】ポーラ美術館 展示室1、2、3、アトリウム ギャラリー
【所在地】神奈川県⾜柄下郡箱根町仙⽯原⼩塚山 1285
【開館時間】午前 9 時~午後 5 時(入館は午後 4 時 30 分まで)
【入館料】大人¥2,200/大学・高校生¥1,700/中学生以下無料/障害者手帳をお持ちのご本人および付添者(1 名まで)¥1,100 ※すべて税込 団体割引あり
【主催】公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
【後援】公益社団法人 色彩検定協会
【TEL】0460-84-2111
ポーラ美術館
引用元:展覧会特設ページ
ポーラ美術館について
2002 年に「箱根の自然と美術の共生」をコンセプトに神奈川県箱根町に開館。印象派から 20 世紀にかけての西洋絵画を中心としたコレクションを核とする展覧会を開催する一方で、現代美 術の第一線で活躍する作家たちの作品も収集・展示し、同時代の表現へと展望を拡げている。富士箱根伊豆国立公園という立地を生かした森の遊歩道では四季折々の豊かな自然を楽しめる美術館です。
ポーラ美術館
引用元:公式ウェブサイト
画像ギャラリー
このライターの書いた記事
-
EVENT
2025.01.23
葛飾北斎が描いた浮世絵の世界に“超没入”「映像×サウンド×触覚」の次世代イマーシブ体験『HOKUSAI:ANOTHER STORY in TOKYO』
イロハニアート編集部
-
EVENT
2025.01.22
【横浜そごう美術館】『ブラック・ジャック』史上最大の展覧会が開催―生原稿500点超!手術シーンは”現代アート”として鑑賞
イロハニアート編集部
-
EVENT
2025.01.19
【六本木】東京で実物大ピラミッドが出現?!「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」開催直近!続報
イロハニアート編集部
-
EVENT
2025.01.19
古都奈良の絵画史を巡る旅!特別展「大和の美」で古代から現代までの美の系譜に触れる
イロハニアート編集部
-
EVENT
2025.01.18
自然をモチーフに命と誠実に向き合う、むらいさきの個展「Spring has come」が南青山イロハニアートスタジオにて開催!
イロハニアート編集部
-
EVENT
2025.01.17
日本のアートシーン最前線を体感! 47名のアーティストが魅せる「WAVE 2025」、代官山LURFギャラリーで開催決定
イロハニアート編集部
アートをもっと自由に、もっとたくさんの人に楽しんでもらいたいという想いから生まれたメディア。日々、アートのイロハが分かるコンテンツを配信しています。アイコンは「イロハニくん」。アートのそばに、ひっそりと棲んでいます。
アートをもっと自由に、もっとたくさんの人に楽しんでもらいたいという想いから生まれたメディア。日々、アートのイロハが分かるコンテンツを配信しています。アイコンは「イロハニくん」。アートのそばに、ひっそりと棲んでいます。
イロハニアート編集部さんの記事一覧はこちら