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2026.10.13

取材レポート【嵯峨嵐山文華館】『絵で知る、もっと楽しむ京都』京都に「変わらないもの」はある?

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京都に住んでいると、「海外にいるみたいだな」と思う瞬間があります。

某ドラッグストアでは、英語と中国語が堪能で、日本語はまったくわからないという店員さんに出会いました。日本人が経営する和食のレストランにふらっと入ったとき、スタッフの皆さんの空気が変わったことも……どうやら、日本人の客が珍しかったようです。

街全体が、外国からの観光客に最適化しようとしているように感じる日々。良し悪しは別として、「はて、京都が守り継いできたものとは…?」と疑問を持つことも多いです。

展示風景

そんななか、嵯峨嵐山文華館の『絵で知る、もっと楽しむ京都』を訪れました。会期は2027年2月28日(日)までです。

本展は、清水寺や金閣寺など京都のランドマークを扱った絵画や、舞妓さんや京野菜などを描いた日本画が並ぶ展覧会。「京都ガイドブック」的に楽しめるだけでなく、近世から近代にかけての絵画を通し、「少し前の時代の京都」を覗けるのがポイントです。

変化していく京都において、変わらないものは何だろう? 展覧会を見ながら考えてみました。

「かつての京都」を覗いてみよう!

作者不詳《洛中洛外図屏風》17世紀【前期展示】

前期展示では、江戸時代の京都を題材とした《洛中洛外図屏風》や、嵐山や天橋立などを描いた近代の日本画などが登場。後期展示でも、祇園の夜桜や比叡山など京都のシンボルを描いた作品が会場を彩ります。

冨田渓仙《聖地の華図》20世紀【前期展示】

展示を見ながら「羨ましい!」と口から出そうになったのが、冨田渓仙《聖地の華図》です。大きな桜の木の向こうに、舞台が特徴的な清水寺が見えるでしょうか?

今や清水寺といえば、京都の観光地のなかでも屈指の人気スポット。桜の時期ともなれば観光客でいっぱいになりますが、本作で清水の舞台にいるのはたった2人だけです。こんなふうに清水寺の風景を独り占めできたら……と、つい想像してしまいました。

川村曼舟《稲荷山図》20世紀【前期展示】

千本鳥居が有名な伏見稲荷神社を描いた川村曼舟《稲荷山図》も、随分のどかな雰囲気。現在は多くの観光客が訪れる場所ですが、この作品のように独り占めしてみたい…!

京都の名所の「かつて」に触れられる本展。観光の前に展覧会を見たら、これから訪れる場所へのワクワク感がもっと高まりそうです。

変化のなかで「今も変わらないもの」

展示風景

「昔はこうだったのかな」「今は結構違うかも」と、絵に描かれた風景と現在を比較しながら展覧会を楽しんでいた私。ですが、ある作品の前で、ハッと息を呑みました。私の記憶にある現代の風景が、そのまま絵に映されていたからです。

平井楳仙《鴨川涼風》20世紀【前期展示】

その作品が、平井楳仙《鴨川涼風》です。京都の夏の風物詩「納涼床」を題材にした絵画で、鴨川沿いに隙間なく並ぶお茶屋や料亭が描かれています。暗闇に黄色の灯りが浮かび、人々のシルエットが映し出される画面は、一見すると幻想的。ところが、私には「そう、鴨川ってこんな感じ!」と、とてもリアルに感じられました。

この作品は「幻想的」でありながら、とても「リアル」なんです。夏の夜に鴨川沿いを歩いているとき、目に映る景色と重なるよう。画面手前を流れる鴨川に反射する、ノスタルジックな光もリアル。こんなふうに絵になる景色が、幻想ではなく、京都には残っています。

平井楳仙《鴨川涼風》(部分)20世紀【前期展示】

時代が移ろっても、変わらないものもある。無意識に「今と昔の違い」を見ていた私の視点は、本作をきっかけに、「変わらない京都」を探す視点へと切り替わりました。

今と昔の「舞妓さん」

ここで、中村貞以《春粧》を見てみましょう。舞妓さんの横顔をアップで描いた作品です。大人っぽい装いですが、どこか少女らしいあどけなさもあり、しかし凛としたプロフェッショナルな印象もある…。舞妓さんの絶妙な魅力が描かれていると思います。

中村貞以《春粧》20世紀【前期展示】

なぜ、この作品に惹かれたのか。横顔のドアップという構図が日本画では珍しく感じたと同時に、「ある記憶」が蘇ったからです。

その記憶とは、つい先日のこと。祇園のあたりを歩いていて、初めて舞妓さんとすれ違ったんです。

恥ずかしながら、それまで「舞妓さん」をフィクションでしか見たことがなくて…。その頃の私が《春粧》を見ても、「可愛い絵だなー」としか思わなかったかもしれません。

ですが、今回は作品を見た瞬間に記憶が蘇り、絵の中の彼女が「この前すれ違ったあの人」に見えたんです。その人は緑色の着物を着ていたし、顔立ちも絵画の舞妓さんとは違うのに、ふたりが重なって見えました。

展示風景

「昔の絵画」を見ていたのに、その中に「今」を見出せる。絵画と自分の日常がつながる体験に、「美術って、こんな面白さもあるんだ!」と知りました。

「昔の京都」と「今の京都」、どこが違う?

展示風景

展覧会では「少し前の時代に描かれた京都」を眺めていたつもりが、いつのまにか絵画を通して「現在の京都」を見つめていました。そんな本展を、ただ「絵で名所をめぐる」展覧会とするのは、もったいない気がします。

美術館で絵を見て、街に繰り出して実物を見る。もちろん、違うところもたくさんあります。それでも、絵画と実景が重なってハッとする瞬間がある。「絵を見たから観光も楽しくなる」し、「観光したから絵を見るのも楽しくなる」のです。

展示風景

「かつての京都」を覗きながら、「今の京都」を見つめ直す。そんな楽しみ方を求めて、嵯峨嵐山文華館を訪れてみてはいかがでしょうか?

展覧会情報

絵で知る、もっと楽しむ京都

会場:嵯峨嵐山文華館
会期:2026年10月3日(土)~2027年2月28日(日)
◎前期:2026年10月3日(土)~12月14日(月)
◎後期:2026年12月16日(水)~2027年2月28日(日)
休館日:12月15日(火)、12月30日(水)~1月1日(金)、1月19日(火)、2月9日(火)、2月21日(日)
※2月21日(日)は「ちはやふる小倉山杯(予定)」のため、チケット購入者のみ入館可。展示はご覧いただけません。
開館時間:10:00~17:00(最終入館16:30)
※2月20日(土)は13:30最終入館 14:00で閉館
展覧会サイト:絵で知る、もっと楽しむ京都

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明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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