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2026.11.3

【京都国立博物館】特別展「源氏物語 王朝のかがやき」原本が失われても1000年読み継がれてきた理由とは?

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およそ1000年にわたって読み継がれてきた、紫式部による『源氏物語』。言わずと知れた、日本を代表する古典文学です。

とても有名な作品ですが……実は紫式部が書いた「原本」は失われていることを、ご存知ですか?

京都会場 能舞台再現展示

これほど広く愛されている物語なのに、現在、誰もその原本を見ることができないのです。いったいどのようにして、物語は現代まで受け継がれてきたのでしょう。そして、私たちが知っている『源氏物語』は、本当に紫式部が書いたものと同じでしょうか?

その謎に迫れるのが、特別展「源氏物語 王朝のかがやき」です。京都国立博物館 平成知新館にて、11月29日(日)まで開催されています。

本展では絵画や工芸品に加え、本文を綴った写本やその注釈類、さらに芸能や大衆文化への広がりを示す作品など、『源氏物語』に関わる名品を幅広く紹介。これらの展示を通して私が抱いたのは、「原本が失われているにも関わらず、後世の文化に与えた影響が大きすぎるのでは?」という疑問でした。

『源氏物語』は、どのようにして現代まで伝えられてきたのか。展覧会を通して、作品の歴史を読み解いていきましょう。

源氏物語にはいくつかのバージョンがある?

【国宝】《源氏物語絵巻 柏木一》平安時代・12世紀 愛知 徳川美術館[10月6日~10月18日展示]特別展「源氏物語 王朝のかがやき」会場写真(京都)

現代のような印刷技術がなかった時代、書物は人の手で書き写されることで複製され、世に広まっていきました。『源氏物語』も同様に、写本によって多くの読者の目に触れ、今まで語り継がれてきた作品です。実際、『紫式部日記』には彼女が書写を依頼し方々に手紙を書いていたことが記されています。

ところが、意図的かどうかは別として、人が写す過程では省略や改変、書き間違いなどが起こります。こうして物語本文には複数の系統が生まれたのですが、これがまず大きな驚き。誰もが知る『源氏物語』に揺らぎがあったとは…!

《源氏物語(定家本)若紫》鎌倉時代・13世紀[通期展示]特別展「源氏物語 王朝のかがやき」会場写真(京都)

展覧会ではさまざまな個性のある写本が紹介され、1つの物語がいくつものバージョンへと広がっていく様子がうかがえます。中でも注目したいのが「定家本」。この写本は鎌倉時代の歌人・藤原定家が校訂したもので、現代の私たちが知る『源氏物語』の重要なルーツとなっています。

「定家本」がどこまでオリジナルを遡れているのかは議論がありますが、これまでの源氏物語研究で特に重要視されてきた資料であることは間違いありません。本作を含むさまざまな写本を見比べていると、失われた『源氏物語』原本はどのようなお話だったのか、ますます知りたくなってしまいます。

時を経ても理解するための「工夫」

京都会場 展示風景

さて、物語が生まれてから時間が経つほど、本文中の語句の理解は難しくなっていきます。そこで鎌倉時代以降は、『源氏物語』の本文が整えられるとともに、「注釈書」も作られるようになりました。

こうして物語を深く理解できるようになると、『源氏物語』は古典化・権威化され、他の王朝物語とは一線を画す存在に。そして天皇を中心とする宮廷社会では、『源氏物語』をもとにした教養あふれる作品が数多く生まれました。

京都会場 展示風景

本展では、土佐派の画帖や俵屋宗達の屛風、金色の輝きが美しい工芸品、「源氏能」にかかわる復原能装束や能面など、『源氏物語』に着想したさまざまな名品を一堂に展示。時代が下っても『源氏物語』は色褪せることなく、むしろ一層の輝きを持って受け継がれていったことがわかります。

ずっと流行っている『源氏物語』の「今」

土佐光起《紫式部像》江戸時代・17世紀 滋賀 石山寺[前期展示]特別展「源氏物語 王朝のかがやき」会場写真(京都)

紫式部の自筆本は失われたものの、こうして広まり、時を超えて人々を魅了してきた『源氏物語』。もはや「1000年ずっと流行っている」といっても過言ではないと思うのですが、令和の現在も、長い長い源氏物語ブームの渦中かもしれません。

《源氏物語(定家本)若紫》鎌倉時代・13世紀 表紙(画像提供:八木書店)[通期展示]

ここであらためて見つめたいのが、本展の冒頭で展示されている《源氏物語(定家本)若紫》です。2019年に新たに見つかった本作は、この記事でも触れた写本「定家本」のひとつ。源氏物語研究において特に重要な資料の一部であることから、「こんなに重要なものが見つかるとは…!」と、研究界隈もザワつく奇跡だったようです。

この発見によってまた源氏物語の研究が進むかもしれませんし、意外な事実が見つかったり新しい解釈が生まれたりもするかもしれません。原本が失われていることは残念ですが、『源氏物語』が今もホットトピックであり続けている理由には、「どこまで掘り進めても原本の再現には至れない」という側面もあるのではないでしょうか?

そんな『源氏物語』の謎に迫るために欠かせない「定家本」は、現存5帖が確認されています。そしてなんと、京都会場では現存する全5帖を“史上初めて”一堂に展示。5帖すべてが揃うのは、11月3日(火)〜15日(日)です。ぜひこの機会に、足を運んでみてはいかがでしょうか。

展覧会情報

京都会場 展示風景

特別展「源氏物語 王朝のかがやき」

会場:京都国立博物館 平成知新館

会期:2026年10月6日(火)~11月29日(日)
▼主な展示替
◎前期:10月6日(火)~11月1日(日)
◎後期:11月3日(火・祝)~11月29日(日)
※会期中、一部の作品は上記以外にも展示替あり

休館日:月曜日、11月24日(火)※ただし、11月23日(月・祝)は開館

開館時間:9:00~17:30(入館は17:00まで)
※金曜日は9:00~20:00(入館は19:30まで)

展覧会サイト:源氏物語 王朝のかがやき

◎巡回情報
東京国立博物館
会期:2027年1月19日(火)〜3月14日(日)

【写真8枚】【京都国立博物館】特別展「源氏物語 王朝のかがやき」原本が失われても1000年読み継がれてきた理由とは? を詳しく見る イロハニアートSTORE 50種類以上のマットプリント入荷! 詳しく見る
明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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