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2026.10.27
取材レポート【大阪中之島美術館】『NHK日曜美術館50年展』美術との出会いはテレビから?
あなたが美術に興味を持ったきっかけは、何でしたか?
美術と出会う場所は、美術館だけとは限りません。美術を扱うテレビ番組が入口だった、という方も多いのではないでしょうか?
鴻池朋子《皮緞帳》(部分)2015年 高橋龍太郎コレクション
大阪中之島美術館で12月20日(日)まで開催されている『NHK日曜美術館50年展』は、まさにそんな記憶が蘇る展覧会。本展はNHK「日曜美術館」の放送開始から50年を迎えたことを記念し、これまで番組に登場した“美”をあらためて紹介するものです。
実は本展、一般的な展覧会とはちょっと違うところがあります。本展が「テレビ番組由来の展覧会」であることで、他ではあまり見られない内容になっているんです。
テレビ番組の展覧会って、どういうこと?
会場を歩いていて最初に気がつくのが、展示されている作品の多様さです。ピカソやロダン、ムンクなど西洋の作品があったと思えば、高橋由一など日本の絵画や、工芸品も数多く展示。さらには、縄文土器から現代美術まで時代もさまざまです。
展示作品がこれほど多様なのは、50年にわたるテレビ番組の「日曜美術館」がベースにあるから。一般的な展覧会では、美術史の流れや特定の作家の生涯をテーマとすることが多いのですが、本展はそれとはまったく違う展覧会なんです。
正直に言うと、会場に入ってすぐの私は、「ジャンルごった煮」の会場に圧倒され、「楽しめるかな…?」と不安になりました。ですが見方を変えれば、50年にわたって美術を紹介し続けてきた番組だからこそ、ひとつの物差しでは測れない作品が集まった、とも言えます。
訪れた人が、もともと興味のあった作品だけでなく、今まで関心を持たなかった作品やジャンルにも触れられる展覧会。それは、何気なくつけたテレビに映し出された映像を通して、美術に出会う体験とも似ているように思います。
美術とのさまざまな出会い方
多彩な作品が並ぶなか、ひときわ異彩を放っていたのが石田徹也さんの作品群。本展のキービジュアルにもなっている《飛べなくなった人》には、壊れた飛行機と一体化した人が描かれています。重々しい色彩から絶望感すら漂ってくる作品ですが、彼はそれでも飛び立とうとしているのか否か…。
1996年に制作された本作は、番組で紹介されたときも大きな反響を呼んだそう。描かれているのは非現実的な状況なのに、思わず我が身に照らして考えて胃がキュッとなってしまうくらい、メッセージ性の強い作品です。
それでも、「うん……でも耐えなきゃいけないときって、あるんよ…」と共感の念も湧いてきて、単なる風刺や皮肉にとどまらない作品だと思います。白黒つけられないことって、たくさんあるよね…。
他にも、社長らしき人が持つ遊具にぶら下がり、されるがままに回転するサラリーマンを描いた《社長の傘の下》や、車にガソリンを入れるかのように食事を流し込まれる人々を描いた《燃料補給のような食事》が展示。どの作品もどこか身に覚えがあり、見る側が自分の生活や社会と結びつけてしまう強さがありました。
一方、石内都さんの写真作品は、静けさのなかにそっとメッセージを忍ばせているように感じました。展示されているのは、ボロボロになった衣類の写真の数々。ですが、シリーズのタイトルが「ひろしま」であることを知った瞬間、見え方が変わるのではないでしょうか?
写真に映るのは、いずれも広島で原爆の犠牲となった方々の遺品です。衣服ではなくその人自身が生きることができたら、どんなに良かったか……と、悲しみも込み上げてきました。
鴻池朋子《皮緞帳》(部分)2015年 高橋龍太郎コレクション
そして、鴻池朋子さんの展示は広い空間を使った大規模なインスタレーション。大きな作品は飲み込まれるほどの迫力があり、実物を見る機会の大切さをあらためて実感しました。
テレビをきっかけに美術と出会い、実物を見に行く。そんな楽しみ方もありますよね。
あなたが美術と出会ったきっかけは?
《縄文土器 深鉢 火焔型土器》縄文時代(中期) 新潟県長岡市深沢町岩野原遺跡出土 國學院大學博物館
大阪中之島美術館の館長、植木啓子さんは、幼い頃から「日曜美術館」を見てきたとのこと。身近に美術館がなかった植木さんにとって、番組は多様な作品やアーティストに触れる貴重な機会となり、美術に関わる道を志すきっかけのひとつになったそうです。
美術史に沿った展覧会とはひと味違う本展。ジャンルを横断する作品の数々を通して、美術との出会いにはいろいろな入口があることを教えてくれます。
そして展覧会を見終わったら、もう一度考えてみるのはどうでしょうか。
あなたが美術に興味を持ったきっかけは、何でしたか?
展覧会情報
NHK日曜美術館50年展
会場:大阪中之島美術館 5階展示室
会期:2026年10月10日(土)~12月20日(日)
*会期中、一部作品の展示替えあり
休館日:月曜日、11月24日(火)
*11月23日(月・祝)は開館
開場時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
展覧会公式サイト:NHK日曜美術館50年展
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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。
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