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2026.9.29

【細見美術館】書の展覧会はどう楽しむ?『特別展 良寛さん―その人と禅―』

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「書って、どうやって鑑賞すればいいんだろう?」

子どもの頃、学校では週に1回ほど書道の時間がありました。その意味で、「書」は多くの人にとって馴染みのあるジャンルのはず。

ところが、美術館で「書」を鑑賞するとなると話が変わってきます。どこを見れば良いのかわからないし、書いてあることの意味もわからない…。いったいどうすれば、楽しく鑑賞できるのでしょうか?

展示風景

そんな疑問を抱えながら訪れたのが、細見美術館で開催中の『特別展 良寛さんーその人と禅ー』。会期は11月8日(日)までです。

良寛の作品と人となりにフォーカスした本展では、自筆の書を中心に、さまざまな作品が並びます。

書の見方はよくわからないし、良寛についての知識もほとんどない私。ですが、実際に展覧会を歩いてみることで、私の「書の受け止め方」は少しずつ変わっていきました。今回は、その過程を包み隠さずレポートします。

書を「難しい」と感じる理由とは?

展示風景

そもそもなぜ、書に対して「難しい」と感じるのでしょう? 私の場合、「書かれている文字を読み、意味を理解しなければいけない」と思っていることが大きいです。

昔の作品であれば、言葉づかいや表現が現代とは異なります。また、個性的なくずし字も、不慣れな私には読みにくく感じられます。

そのため、作品を前にしても、

「文字が読めない…」
「文章の意味がわからない…」
「書って、よくわからないなあ…」

という感想を抱きがち。実際、本展で良寛の書を初めて見たときの私も、そのような状態でした。

展示風景

ところが、会場である作品に出会ったことをきっかけに、私の感覚にも変化が。「読まなければ」という意識が引っ込み、純粋に「おもしろい!」と感じる作品があったのです。

「書」を「絵」として見てみる

その作品とは、《漢詩 六曲屏風半双 日々日々》です。良寛が日々の暮らしや禅僧としての境涯を詩として表現した作品ですが、何が書いてあるかが気になるよりも先に、頭の中に音が流れてきました。

《漢詩 六曲屏風半双 日々日々》個人蔵

「目」で書を見たのに、「耳」から音が入ってきたみたい。そんな不思議な感覚を得た理由は、良寛の筆づかいにありそうです。

文字を構成する線はまるで小川の流れのように心地よく、要所要所に打たれた点は楽しげに跳ねる水のよう。水琴窟のように「ぽつん」「きらっ」と音が響いてくる感覚もあり、「なんだこの作品は!?」と思ってしまいました。

もちろん、実際に音が聞こえるわけではありません。ですが、目で見る書からこんなにも音楽的なイメージが浮かぶとは。そうして面白く見ているうちに、内容を読めるか読めないかなど、気にならなくなってきました。

本作を見ながら思い出したのが、カンディンスキーの抽象画です。抽象画の父とも呼ばれる彼は、線や点、色や形を組み合わせ、音楽のような絵画を創造しました。

展示風景

考えてみれば、絵画を前にしたときだって「何が描いてあるか?」ばかりを見ているわけではありません。色の鮮やかさ、線の気持ちよさ、形の面白さなど、色や線、形そのものに魅了されることが多々あります。

それなら、書も同じように見ることができるのではないでしょうか?

「何と書いてあるか」はもちろん大切。しかし、線の流れや強弱、点の置かれ方、余白などを眺めて、その美しさに心が動いたって良い。書は「読むもの」であると同時に、絵画のように「見るもの」でもある、と言っても良いのでは?

良寛とはどんな人物だったのか?

平櫛田中《良寛上人像》個人蔵

私が音やリズムを感じ取った書の数々。それらを残したのが、本展で特集される良寛(1758 ~1831)という禅僧です。

越後出雲崎(現・新潟県三島郡出雲崎町)の名主の長男として生まれた良寛は、18歳で出家し禅の修行に励みました。お寺の住職にはならず、あえて草庵(質素な仮住まい)でひとり暮らし、清貧を貫いた人物です。

展示風景

子どもたちと遊んだり、人から贈り物をもらえば丁寧に礼状を書いたりと、親しみやすく細やかな一面がある一方、厳しい修行に身を置く求道者でもありました。

こうして人となりを知ると、《漢詩 六曲屏風半双 日々日々》を見て小川や水琴の音を連想したのも、筋が通っている気がします。書を通して、権威や出世と距離を置いた良寛の生き方にも触れられたように思います。

良寛の書を自由に鑑賞してみよう

書を「絵」のように見ることで、面白く鑑賞できることに気づいた私。そうなると、ほかの作品も「読まなければ」という気持ちをいったん横に置いて、自由に眺めてみたくなります。

《凧文字 天上大風》 個人蔵

そこで目に留まったのが、《凧文字 天上大風》でした。楷書で書かれた本作は文字を読み取りやすく、「天上大風」という4文字の意味も比較的わかりやすい作品です。

ですが、あえて「漢字の意味」にとらわれないようにしつつ、本作を見ていきます。それぞれの文字は画数が少ないのですが、右肩上がりの文字にのびやかな印象を持ちました。おおらかな風に乗って天高く舞い上がるような、そんなイメージも湧いてきます。

展示風景

本作は、凧揚げをする子どもたちに字を書いて欲しいと頼まれ、良寛が凧に書いた作品。そう知ってからもう一度見ると、良寛がこの4文字を選んだことや、なぜ右肩上がりの形で書いたのかが、わかるような気がします。

書の展覧会を楽しむには?

「書の展覧会って、どんなふうに楽しめばいいんだろう?」

そんな疑問を持っていた私ですが、今回の展覧会で少しだけ書の見方が変わりました。

「何と書かれているか」を知ることも大切ですが、それだけが書の楽しみ方ではありません。言い換えると、「内容が理解できない」という理由で、楽しい鑑賞を諦める必要はないのです。

線の流れや強弱、そして点の置かれ方。それらを絵のように見て、音や風景が思い浮かぶ……これって、すごく面白いことなのでは?

展示風景

書かれていない音楽を聴き、描かれていない風景を見る。そうした体験ができるのは、書だからこそではないでしょうか?

最初は「よくわからない」と感じていた書が、思いのほか面白く見えてきた本展。次に書の展覧会を訪れるのも楽しみになる内容でした。

展覧会情報

特別展 良寛さんーその人と禅ー

会場:細見美術館
会期:2026年9月12日(土) - 11月8日(日)
※一部展示替えあり
開館時間:午前10時 - 午後5時
休館日: 月曜日、9月24日(木)、10月13日(火)
※ ただし、9月21日(月・祝)、10月12日(月・祝)は開館
展覧会ウェブサイト:良寛さんーその人と禅ー

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明菜

明菜

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美術ブロガー/ライター。美術ブログ「アートの定理」をはじめ、各種メディアで美術館巡りの楽しさを発信している。西洋美術、日本美術、現代アート、建築や装飾など、多岐にわたるジャンルを紹介。人よりも猫やスズメなど動物に好かれる体質のため、可愛い動物の写真や動画もSNSで発信している。

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