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2023.9.6

【永遠の都ローマ展】カピトリーノ美術館から数々の名作が来日!

2023年9月16日(土)から12月10日(日)にかけて東京都美術館で開催される「永遠の都ローマ展」。この展覧会では、明治政府によって派遣された「岩倉使節団」のカピトリーノ美術館訪問150周年の節目にあたる今年、カピトリーノ美術館の豊かなコレクションの一部が来日します。

永遠の都ローマ展

この記事では、ローマの大学院で美術史を専攻する筆者が、展示予定の作品をいくつかピックアップして特徴をわかりやすく解説します。

カピトリーノ美術館とは

カンピドリオ広場のカピトリーノ美術館 ©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali

カピトリーノ美術館は、ローマの中心地にある美術館で、世界最古の美術館のひとつとも言われます。歴史は古く1471年にまでさかのぼり、教皇シクストゥス4世が、当時教皇庁で保管していたローマの美術品をローマ市民に寄贈したことが美術館の始まりです。

教皇シクストゥス4世が寄贈した作品群は、『とげを抜く少年』『カミッルス』『カピトリーノの牝狼』、そして『コンスタンティヌス帝の巨像』であり、ローマの歴史を語るうえで重要なものが多く含まれていました。今回の展示では、『カピトリーノの牝狼』と『コンスタンティヌス帝の巨像』の断片、『カミッルス』のレプリカが展示される予定です。

現在でもカピトリーノ美術館はローマのもっとも重要な美術館の1つであり、連日多くの訪問者でにぎわっています。古代の彫刻・ブロンズ作品だけでなく、中世から近代にかけての絵画作品も充実しており、まさしくローマの長い歴史を感じることのできる場所です。

「永遠の都ローマ展」展示予定作品①:『カピトリーノのヴィーナス』

《カピトリーノのヴィーナス》 2世紀 大理石 カピトリーノ美術館蔵 ©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini

今回の展示の目玉作品の1つである『カピトリーノのヴィーナス』。紀元前4世紀に活躍した古代ギリシャの彫刻家プラクシテレスによる作品を模倣し、2世紀に制作されたものです。

『カピトリーノのヴィーナス』は通常、カピトリーノ美術館のヴィーナスの間と呼ばれる一室に安置されています。美術館におけるもっとも有名な彫刻の1つであり、貴重な大理石で作られた必見の作品です。

ヴィーナスの彫刻表現にはいくつかバラエティがありますが、これは「ヴェヌス・カピトリーナ(Venus Capitolina)」と呼ばれるタイプです。ヴィーナスが入浴後に右手で胸を、左手で股間を覆っている特徴があります。『カピトリーノのヴィーナス』は、この「ヴェヌス・カピトリーナ(Venus Capitolina)」タイプの定義となった作品です。

『カピトリーノのヴィーナス』をよく観察すると、柔らかく肉付きのいい身体で、やや前傾姿勢で恥じらいを表現しています。頭がやや左に傾いている点、右足が少し前かがみになっている点、さらに髪が複雑なお団子からほころんでいる点など、自然な動作の一瞬を切り取ったような精密さが特徴的です。

「永遠の都ローマ展」展示予定作品②:『カピトリーノの牝狼(複製)』

《カピトリーノの牝狼(複製)》ローマ市庁舎蔵 ©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico dei Musei Capitolini

「永遠の都ローマ展」では『カピトリーノの牝狼』のレプリカが展示される予定です。ローマで生活していると、至るところで「牝狼と双子の赤ちゃん」のモチーフを目にします。

双子はロムルスとレムスと呼ばれ、伝説ではテヴェレ川のほとりに捨てられたところを牝狼に育てられたと言われています。真偽は疑わしいとしても(牝狼は養母の隠語だった説もある)、この伝説が歴史を通してローマ人のアイデンティティに深く結びついていたことは疑いようがないでしょう。

カピトリーノ美術館に展示されている『カピトリーノの牝狼』は教皇シクストゥス4世の時代には、古代ローマの時代に制作されたものと信じられてきました。しかし牝狼は中世に制作されたものとする意見もあり、真相は明らかになっていません。

教皇シクストゥス4世が作品を寄贈したときは牝狼のみでしたが、15世紀の芸術家、おそらくアントニオ・ポッライウオロが双子をあとから追加しました。

「永遠の都ローマ展」展示予定作品③:『コンスタンティヌス帝の巨像の頭部(複製)』

《コンスタンティヌス帝の巨像の頭部(複製)》ローマ文明博物館蔵 ©Roma, Sovrintendenza Capitolina ai Beni Culturali / Archivio Fotografico del Museo della Civilità Romana

「永遠の都ローマ展」では『コンスタンティヌス帝の巨像の頭部』のレプリカが展示される予定です。

『コンスタンティヌス帝の頭部』の最大の特徴は、なんといってもその巨大さです。彫刻は頭部のみであるものの、高さ約1.8m!オリジナルの像がどれだけの大きさだったか、想像もつきませんね。今回の「永遠の都ローマ展」では、原寸大のコピーが展示されるため、大きさを間近に感じられます。

コンスタンティヌス帝はローマ帝国でもっとも重要な皇帝の1人でしたが、帝国崩壊後の中世においてもその重要性は失われませんでした。コンスタンティヌス帝はキリスト教を公認し、長く続いた迫害の世紀に終止符を打った皇帝であったためです。

コンスタンティヌス帝が活躍した時代(4世紀初頭)の芸術スタイルにもぜひ注目しましょう。コンスタンティヌス帝の頭部は、『カピトリーノのヴィーナス』に見られたような繊細な写実主義よりも、大きく見開いた力強い両目や重量感のある毛髪など、デフォルメに近い表現が見られます。

まとめ:悠久のローマの息吹を感じる

「永遠の都ローマ展」では、本記事で紹介した作品以外にも幅広い年代の作品が来日します。悠久のローマは、さまざまな要素が複雑に組み合わさり、重なり合って今日の姿になりました。
とくに目玉である『カピトリーノのヴィーナス』は絶対に見逃せません!ローマの歴史の息吹を感じられる展覧会に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

展示会情報

「永遠の都ローマ展」
会期:2023年9月16日(土)~12月10日(日)
休室日:月曜日、9月19日(火)、10月10日(火)
※ただし、9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)は開室
開室時間:9:30~17:30、金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
観覧料:
前売券 一般 2,000円/大学生・専門学校生 1,100円/65歳以上 1,300円
当日券 一般 2,200円/大学生・専門学校生 1,300円/65歳以上 1,500円
・高校生以下無料。
・身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料。
・高校生、大学生・専門学校生、65歳以上の方、各種お手帳をお持ちの方は、いずれも証明できるものをご提示ください。
※土日・祝日のみ日時指定予約制(当日の空きがあれば入場可)
公式サイト永遠の都ローマ展


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はな

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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。

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